SPECIAL CONTENTS #1 岡本先生を語る

学生と知的に響き合うのが楽しいといつも仰っていた岡本先生

薬師寺岡本先生は、立命館大学に赴任後、非常に熱心に学生を指導してくださいました。

長田岡本先生がこれほど長い間、立命館大学に客員教授として留まり続けてくださった最大の理由は、何といっても学生の存在ではないかと思います。

宮家仰る通りです。岡本さんの学生に傾ける情熱は、半端ではありませんでした。学生を心から愛し、ご多忙ながらも、毎回東京から京都まで学生達を直接教えに来られ、濃密な時間と労力を学生に捧げ、知的刺激を与えて続けておられました。

薬師寺思い出すのは、「国際社会で活躍する人材養成特別プログラム(オナーズ・プログラム)」を開講する際に、全学の学生にプログラムを開放するという趣旨で単位認定科目外の特別プログラムにさせて頂きました。

宮家実は、一度だけ、岡本さんが「単位認定しようかと思う」と仰られたことがありました。「学生があれだけ頑張って出席しているのに、単位なしではあまりにかわいそうだと思うようになってきた」と。ところがその数ヵ月後、「学生に確認したところ、彼らは『単位はいりません』と言うんだよ」と驚いておられました。「私たち学生は単位のために岡本先生の講義を受けているのではありません。先生に学びたい一心で受講しているんです」と学生に言われたそうです。それを聞いて、立命館の学生の心意気に私も胸を打たれました。

長田単位をもらえないのに、今年であれば80名近い学生が全キャンパスから集まり、こぞって受講する人気プログラムにまで成長したのですから、岡本先生がどれほど学生から慕われておられたのかがよくわかります。岡本先生も優秀な学生と知的に響き合うのが、面白かったのでしょう。いつも私に「学生に教えるのが楽しい」と仰っていたお顔が目に焼き付いています。

長田 豊臣
学校法人立命館 名誉顧問

1938年生まれ。大分県出身。
立命館大学大学院文学研究科修士課程修了。1993年、立命館大学文学博士。
1965年に立命館大学文学部に着任。プリンストン大学客員研究員を経験し、立命館大学文学部教授に就任。1993年、立命館大学文学部長に。
1999年に学校法人立命館総長に就任、2007年には理事長に就任、2017年7月退任。
アメリカ学会会長、大学基準協会会長などを歴任。

宮家岡本さんにご紹介いただき立命館大学に招かれた私も同じことを実感しました。岡本さんの教え子たちは皆優秀で、教える私にとっても授業は毎回知的興奮に湧き立つような時間でした。最初は引っ込み思案だった学生が積極的に発言するようになり、回を重ねるごとに成長する学生を見ると嬉しかったです。学生とそうした関係を築けることが新鮮でした。

薬師寺岡本先生は、授業時間外でも学生と話す機会を積極的につくっておられましたね。一度、「大学の近くで学生と話ができる場所を設定してください」と依頼を受けたことがあります。講義を終えて東京に帰る前、時間がない中で学生たちとの交流会を開催しました。東京行の最終の新幹線が出るギリギリまで楽しそうにお話しされていました。その後、先生を京都駅のホームまでお見送りしたことが忘れられません。

長田岡本先生は大変ご多忙でいらっしゃいましたが、毎回時間を見つけて学生を教えに京都にお越しいただきました。せっかく京都にいらっしゃるんだから、御礼に美味しいお店にご招待したいと思っていましたが、結局、そのような機会を持つことが叶いませんでした。岡本先生は、我々教職員にもてなされるよりも、学生と一緒に語らうことの方がお好きでした。

宮家岡本先生は、東京のご自宅に40~50人もの学生を招くのも毎年の恒例でした。

薬師寺昼のカリキュラムだけでなく、夜はゼミ生を自宅に招いて頂き、学生とテーブルを囲んで食事を楽しみながら、各界の有名なゲストの方々も加わってさまざまなお話をされ、さながら「夜のセミナー第2ラウンド」という感じでした。当日は朝から夕方まで立命館東京キャンパスなどでゼミを開催し、岡本先生自らが外務省の方や国際的に活躍されている方や著名な実業家の方々に声をかけられ、貴重なお話を聴く機会をつくってくださいました。

宮家国際的な経験を積ませるために学生の学びのためには労を惜しまない人でした。私も実感していますが、教員はいつまでも20歳前後の息子や娘を指導できる。これは大学教員にしか味わえない醍醐味ですね。

長田岡本先生は、学生達のことをまるで自分の子どものように思っていらっしゃったのだと思います。毎年、学生達のために奨学金を出され、海外に研修に送り出す取り組みをされていたことからもそのことが良く分かります。また、岡本先生は豊富なネットワークをお持ちでした。岡本先生のご紹介により、学生達が著名なゲストスピーカーの方々の貴重なお話をお伺いできたことは、他の授業やプログラムではなかなか得難い貴重な経験を学生達に与えてくださいました。

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