グループワークの成果を
オンラインで
プレゼンテーション
オープンゼミナール2020

西岡 聖奈さん、長嶋 冴映さん、
原田 晴菜さん、高橋 ひとみさん
国際関係学部 3回生

学部の学びを学内外に発信する国際関係学部恒例の「オープンゼミナール」。参加した14ゼミ20チームの中から4チームの代表者に、テーマ選定から準備や当日の発表のこと、参加を通して学んだことなどについてオンラインでお話をうかがいました。

サウジアラビアでのK-POPブーム、その背景に政府による音楽産業への関与を発見しました

所属しているゼミについて教えてください。

西岡比較文化論を学ぶ中本ゼミでは、それぞれが興味あるテーマを設定して、文化の国際比較や国内比較をしています。普段は2~3人のグループで卒論のテーマについてプレゼンをして、それに対して聞き手からコメントや質問をして、新しい視点やヒントを得てブラッシュアップしていく形を取っています。ゼミで扱うテーマが幅広いので、自分のテーマ以外についても知ることができるのが特徴です。例えば私は日本文化のことについて調べていますが、ドイツについて調べている方からの視点も得ることができるので、意外なところから発見があります。

長嶋松田ゼミでは地域開発論を学んでいます。国際的な開発援助だけではなくて、中央政府や自治体の取り組み、民間企業の活動などを含めて、その地域のためにどういった活動をしていくかというのをゼミ全体のテーマとして活動しています。先生がレクチャーするというのは殆どなくて、個人の研究に対して学生でディスカッションしてフィードバックをし、それぞれの研究を高めていく形をとっているのが他のゼミと違うところだと思います。

原田足立ゼミでは、国際政治学や国際政治理論について勉強しています。国際政治や国家に関する様々な考え方を学び、それを具体的に今起きている事象、例えば戦争や貿易・貧困問題に当てはめて、なぜそのような問題が起こったのか、なぜその時国家はそのような解決策を提示して問題を解決しようとしたのかなどを学ぶゼミです。みんな幅広い興味や関心を持っているので、国際政治学、国際政治理論のゼミといいつつ、研究テーマは様々です。前期は国際政治理論について学び、後期は国際問題に対する政策提言を行いました。自分が興味を持った問題とその現状を説明した上で、それを解決する為の政策を3つ提示して、ゼミの仲間でディスカッションしました。

高橋私たち末近ゼミは、中東・イスラームを学ぶゼミです。中東・イスラームという限られた分野に興味関心を抱くゼミ生が主体となり、個人の研究を軸に政治、文化、宗教などあらゆる面から中東・イスラームを学んでいます。この1年を振り返ると、前期のゼミのテーマは後の議論を円滑に進めるために中東の概要を掴むことで、末近教授が9月に出された『中東政治入門』という本の草稿を読んで、それぞれのテーマに対する疑問点や事実と異なっていると思うところ、理由などを文章で提出して、それをZoom内で議論しました。後期は、3回生はオープンゼミの準備と個人で設定したより狭い分野の研究を進めるという内容で、ゼミの中で数回発表を行いました。1年を通じて、中東・イスラームを学ぶ身として必要不可欠な中東の概要を学ぶと共に、物事を批判的に捉える方法を学べたと思います。

オープンゼミナールでの発表テーマと、そのテーマを選んだ理由について教えてください。

西岡中本ゼミの私のグループは「セレブリティを脅かす言葉の武器~SNS社会における課題~」をテーマに発表しました。特に今年に入り芸能人の方が誹謗中傷によって命を絶つ事例があったので、この問題を国際関係の視点から考える意義があるのではないかと考えました。私たちは国際関係学部の学生として、法的な解決だけではなく、ネットの使い方や、「国際社会を共に創っていく」という意識がなければ、最終的にこの問題は解決できないと考え、その部分を強く主張したいと研究を進めました。

長嶋松田ゼミの私のグループは「サテライトオフィスによる地方活性化~誘致支援を行う企業の視点から~」をテーマに発表しました。テーマを決めるためにメンバー全員で興味があるキーワードを出し合い「地域活性化」「IT」「コロナ」「リモートワーク」に絞った段階で担当の教授にアドバイスを求めたところ、「サテライトオフィス」に辿り着きました。地域活性化の一つの手段として、サテライトオフィスの誘致が増えている現状を知り、誘致の支援事業を行う企業の方にヒアリングもした結果、誘致したい自治体と、誘致支援をする企業のマッチングがうまくいっていない面があることがわかり、官民の連携を調整する役割を担うコミュニティーマネージャーが存在すれば地域活性化が上手く進むという結論を前提に研究を進めました。

原田私たちの発表テーマは「AIIBの問題点と中国の国際協調モデルのリベラル性」でした。テーマを選ぶ際にメンバー全員の頭の中に「コロナ」、経済的・軍事的に台頭している「中国」があり、「中国」に関連する問題について考え担当の教授に相談した結果、「AIIB」に決めました。これから国際影響力を増していくであろう中国が主導して設立された国際開発銀行AIIBが、現時点でどのような影響を国際社会に及ぼしているのか、今後どのような影響を及ぼしていくのかについて、IMFや、同じ国際開発銀行であるADBと比較しながら研究を進めました。

高橋私たちのテーマは「サウジアラビア政府はどのように音楽の多様性を生み出したのか~近年のK-POPブームとその背景を探る~」です。コロナ禍での暗いニュースが多い中、聞いてくださる方に興味を持ってもらえるテーマにしようと思い、娯楽の一つである音楽に着目しました。サウジアラビアは厳格なイスラーム重視のため、文化や娯楽に対して保守的・非寛容的です。それにも関わらずApple MusicのチャートにはK-POPの曲が多数ランクインしており、これは他の中東地域には見られない現象であったため、何か特異性があるのではないかと調べたところ、政府による音楽産業への関与を発見しました。そこで、サウジアラビアの音楽産業の過去と現在に着目して、サウジアラビア政府はどのように音楽の多様性を生み出したのかについて分析研究を行いました。

企業にヒアリングを行ったことが突破口になり結論まで導くことができました。

オープンゼミナールに向けての準備のお話を聞かせてください。

西岡準備は9月下旬頃から始めました。大きな課題になったのは、SNSでの誹謗中傷の問題に国際関係の視点を取り入れるというグループとしてのテーマが、パートに分かれて進めていくうちにバラバラになりかけたことでした。そこで、人権問題やネットとの向き合い方という、法的措置では乗り越えられない側面をグループ全体の一貫したテーマとして常に意識するようにしたところ、バラバラになっていた問題が少しずつつながり、最終的な結論にたどりつくことができました。直接会って準備できるのはゼミの時間だけなので、残りの部分はオンラインでそれぞれが作業を進めるなど、オンラインと対面の両方を上手く使いながら準備ができたと思います。

長嶋テーマを決めた後、情報はたくさん集められたのですが、研究の方向性と、結論をどうするかということがなかなか決まりませんでした。そこで、サテライトオフィス支援事業を行う企業へのヒアリングをしてみたところ、とても良いお話をたくさん聞くことができたんです。それが突破口になってスムーズに結論まで持っていくことができました。

原田夏休みにAIIBというテーマが決まったので、まずそれぞれで文献を読み、調べたことを発表しました。その後は担当分けをして各自調査を進めました。ゼミの時間しか会う機会がなかったので、行きづまった時にはZOOM も活用して進めました。大変だったのは、AIIBは最近設立された組織なので、本や情報がすごく少なく、着地点がなかなか見つけられなかったことです。世の中にある限りの文献はすべてチェックしたと思います。AIIBとADBの公式ホームページに細かい情報が公開されていたので活用しました。

高橋発表の核となるリサーチクエスチョンテーマを決めるのにすごく時間がかかりました。中東にはいろんな問題やトピックがあり、どこに焦点を当てるかの選択肢が多かったので、資料の有無、客観的意義を検討し、メンバーの興味や関心を探りながら少しずつ決めていったという感じですね。中東になじみがない方でも面白いと思える発表を作りたかったので、担当の教授 や4回生の方、さらには大学院生の方にコメントをいただきながら何度も議論しました。

発表の構成や資料の見やすさについてギリギリまでメンバーと話し合って修正しました。

オープンゼミナール当日、どんなことを意識して発表しましたか? 発表を通して学んだことなどについてもお話しください。

西岡当日も、SNSにおけるセレブリティへの誹謗中傷問題に対して私たちの視点を伝えることをまず重視しました。法的な解決だけでは乗り越えられないところもあるということを一番伝えたかったので、この発表をきっかけに興味を持ってもらえるような話し方、伝え方を工夫しました。ただ、大きなテーマだけに、さまざまな側面に触れながらの説明が必要で、詳しい説明ができなかったことは課題だと感じました。詳しく説明する部分と、全体の概要として触れるべきところのバランスをもう少し工夫できたら良かったかなと思います。

長嶋研究のテーマに対して出した答え、結論、考察を、聞き手に伝わるように強調して話すことを意識しました。でも当日のことよりは、大変だった準備の時間の方が今でも強く印象に残っていて、発表に向けてしっかり準備をすることが大切だということを学びました。ゲストの企業の方がZOOMに残って質問をしてくださった中に「国際関係学部ってどんなことを学んでいるんですか?」というものがあり、この学部への関心を感じました。「基本的な国際問題を学びつつ、個人の興味関心に沿った幅広いことが学べます」と説明すると理解していただくことができました。

原田私たちの最初の疑問から結論に至るまでの流れをしっかり理解してもらえるようにプレゼンすることを心がけました。タイトルを真面目な感じにしてしまったので、その分よりわかりやすく伝えたかったんです。当日はギリギリまで発表の構成や資料の見やすさについてメンバーと話し合って修正していました。1回目の発表の後にも分かりにくそうな部分を変えるなど、最後までこだわりました。課題として残ったのは、具体的なデータを求める厳しい質問に回答できなかったことです。準備段階でもっとしっかり詰めて、予想される質問への回答まで用意できたらベストだったと思います。また今回参加して、ゲストの方々からフィードバックをいただく中で、偏った見方で研究を進めていたことに気付き、柔軟に様々な視点で捉えることが大切だと改めて感じました。

高橋サウジアラビアというあまりなじみがない国に関する発表に興味を持ってもらうため、とにかく分かりやすく簡潔にすることを意識しました。ポスターを担当してくれたサブリーダーが、ポスターの色や細部までこだわって、締切りの直前まで担当の教授とメールでやり取りしながら、サウジアラビア政府がどう変革していったのかについて、時系列に沿って分かりやすく表現してくれました。そのおかげもあって、当日はスムーズに発表が進み、ポスター賞も頂くことができました。今回はコロナの影響でZoomで参加される方もいたので、直前にZoomの方向けのプレゼン資料も準備したのですが、ポスターと従来のプレゼンテーションでは議論の進め方が違うこと、良い発表の終え方についてなど、今後に繋がる学びがありました。

研究発表の面白さに気づいたのが私にとって一番の財産になりました。

参加して良かったですか? 得られたものはありましたか?

西岡参加してとても良かったと思います。現時点での研究内容を言葉にして伝えることによって、また新しい視点が得られるということを学びました。人に分かりやすく伝える手段、特に昨年はオンラインで伝えるための工夫についても学ぶ良い機会になりました。グループ内で意見をまとめなければならない時、誰か一人の意向に偏ることなくまとめるということについても経験を通して学ぶことができました。

長嶋参加して本当に良かったと思います。研究テーマに関する学びが深まったこともありますし、研究の手法についても、2次データだけではなく、ヒアリングなどを通して得られる1次データがあると研究に深みが増すということも学びました。苦手だったリーダーを務めることになり、悩んだこともあったのですが、経験を重ねればうまくできるようになるかなと思ったので、機会があればまたチャレンジしたいです。そして、私は地域活性化が必要と思われる地域の出身ということもあり、将来のキャリアとして地域活性化に関わる仕事もすごく魅力的だなと感じました。

原田ゼミではグループワークの機会がほとんどなかったので、オープンゼミナールを通してグループみんなで取り組む機会を与えていただけたのは意義深かったと思います。私はテーマのAIIBについて実はあまり興味を持っていなかったのですが、グループのメンバーと研究を進めていくうちに興味がわき、知識が深められたのも良かったと思っています。何回か壁にぶち当たりましたが、限られた時間の中でそこから突破していく術も学んだような気がします。

高橋私も参加して良かったと感じています。前期はゼミとして対面で集まる機会がなく、後期に「はじめまして」と言いながらオープンゼミナールの準備を始めたのですが、グループワークを行うことによって、話し合ったり、メッセージをやり取りしたり、単純に前期よりも仲が深まったと感じました。仲が深まると、個人の研究に関して話したり意見を出しやすくなったりするので、ゼミ全体にすごく良い影響を及ぼしてくれたと思っています。個人的には、テーマを一から自分たちで決めることや、そのテーマに興味を持ってくれる方がいることの喜びを肌で感じ、研究発表の面白さに気づくことができました。それが私にとって一番の財産になったと感じています。

ゼミ活動にして下級生へのアドバイスはありますか? オープンゼミナールへの参加を勧めたいですか?

西岡準備の中では実際のプレゼンで使わない資料やデータなどにも数多く当たることができました。これは今後、レポート試験に追われた時、卒論のテーマで行きづまった時のヒントになるかもしれないと思っています。オープンゼミナールへの参加はすごく大変なことですが、参加を通してさまざまなテーマに触れ、学びの視点を増やしてほしいと思います。

長嶋一人で研究を進めると独りよがりになる場合もあると思います。ゼミで色々な人の価値観を取り入れながら、学びを高め、深めていけるのがゼミの良さだと思います。オープンゼミナールは、得られるものが多いので本当にお勧めしたいですね。たとえ行き詰まり、着地点が見えなくても、チームで協力する大切さを忘れず、できることをやっていれば、どこかに突破口は見つかります。あきらめずに進めていってほしいと思います。

原田ゼミは、同じ分野に関心のある人が集まる場所です。その分野に関して深い議論することで自分が成長できるという面もありますし、同じ分野でも違う研究をしている人との交流を通して自分の研究テーマが変わったり、考え方が変わったりということがあるのもゼミの面白さだと思います。成長の機会としてオープンゼミナールにも参加してほしいと思います。

高橋先生の講義をただ聴く授業と違い、雰囲気を一から作ることができるのがゼミの面白さだと思います。興味のある分野の専門家が身近にいてくださって、気軽に意見をうかがえたり、適切な文献を教えてもらえたりするのも、それまでの学びから一歩踏み込んだ面白さにつながります。オープンゼミナールは、大学での一つの区切りとして、卒業に向けての学びを考える機会としてもとても良かったと思います。

オープンゼミナールに参加した経験を、今後どのように活かしたいと思いますか?

西岡研究内容を人に伝えることを学んだので、今後は私自身のテーマを深めていきたいと思います。ゼミでプレゼンをする時も、オープンゼミナールで学んだ、聞き手に分かりやすく伝える話し方や見せ方を活かしていきたいと思います。

長嶋共同研究を通して研究の手法を学ぶことができたので、これから卒論など個人の研究にも活かしたいと思います。この手法は、研究職につかなくても今後の人生で有用だと思います。小グループで活動したり、リーダーを務めたりという経験も、社会で仕事をする上で活かすことができると思います。

原田私も、どうやって他の人と協力して物事を進めていくかを学べたと思います。それは社会人になってからも活かせることだと思います。また、自分一人で進めていたのとはまた違った研究方法も学べたので、卒業論文を進めていく上でも活かせるのではないかなと思います。

高橋オープンゼミナールの経験は、私の今後にすごく大きく影響するのではないかと思っています。私は大学院進学を視野に入れているので、分析の方法や1次資料の探し方、説得力のあるプレゼンの仕方など、今回学んだ研究を行う上での根本を今後の研究に活かしていきたいと考えています。

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