ノルウェー外務大臣として
SDGs条約の締結に奔走、国際交渉の
難しさと可能性を実感したGSG。

クロス ジェイミー 俊也 さん
国際関係学部 2回生

宗教や民族による紛争がなぜ起こるのかに関心を持ち、イスラム教徒の心に迫ろうとアラビア語を学んでいたクロスさんが国際関係学部に入学したのは、もっと広い視野で国際政治を学びたいと思ったからでした。ノルウェーの外務大臣を演じた GSG(グローバル・シミュレーション・ゲーミング)での経験などを話してもらいました。

当事国を演じ、理解することによって
複雑に絡み合う国際問題に向き合える

立命館大学国際関係学部を志望した理由を教えてください。

クロス国際関係に興味を持つ最初のきっかけはボスニア・ヘルツェゴビナの内戦について知ったことでした。宗教や民族の対立が原因で、昨日まで仲良く暮らしていた隣人を殺すような激しい紛争が起こるのはなぜだろうと、その心理的な面に興味を持ったんです。特に自爆テロまで実行するイスラム教徒の心に迫りたいと思って、他大学でアラビア語を学んでいたのですが、もっと広い視野で国際政治を学びたいと思うようになって中退し、立命館大学国際関係学部に入学しました。西洋や米国のようなメジャーな地域だけではなく、中東、南米、アフリカなど多様な地域の専門家も多くおられるということが立命館大学を志望した理由です。

入学して、国際関係学部のイメージは変わりましたか?

クロス教授陣だけではなく、学生の出身国、バックグラウンド、考え方も多様で、毎日あきることがありません。自分のあり方、考え方は当たり前じゃない、そもそも当たり前なんてないということを実感させられる環境です。

学部の学びで一番印象に残っている取り組みは何ですか?

クロスGSG(グローバル・シミュレーション・ゲーミング)です。国際社会における特定の国や機関を客観的に見るのではなく、自らアクターとしてなりきって演じることで、他国との関係性や自国の利益など、リアルな国際関係を主観的に体験することができました。

GSGの具体的な内容を教えてください。アクターとしてどのような役割を務めたのですか?

クロス私はノルウェーを担当するグループに入りました。テーマがSDGsだったので、軍事力や経済力ではなくSDGs先進国としての強みを国際社会にアピールしながら他国と交渉できそうな国だと考えたからです。私は英語が話せるので、国の中では他国との交渉役を担当する外務大臣役を務めることになりました。

ノルウェーとして、どのような目標を掲げましたか?

クロスSDGs先進国として、SDGsに取り組む余裕がない国への資金・技術面での支援や提供、取り組みが進んでいない大国に圧力をかける条約の締結を大きな目標にしました。

本番までの期間、グループ内外でどのような取り組みを行いましたか?

クロス授業の中で、担当国のSDGsに関する歴史を調べて発表したり、週末に時間を合わせて準備のための話し合いをしたり。各大臣は、自分の分野に関する知識を深めておく必要もあります。私は外務大臣として、他国との事前交渉も行いました。交渉の過程で条件を提示された場合は、一旦国に持ち帰り、検討の上本番を迎えることもあります。

本番ではどのようなことをしましたか?

クロス電気自動車の普及率世界一の国として、ヨーロッパの国々と、ディーゼル車やガソリン車を段階的になくしていくための条約を締結する交渉を行い、最終的に締結まで至ることができました。海洋資源を守る活動も進めました。ノルウェーには世界最大の政府系ファンドがあります。そのファンドから投資を受ける企業に海洋資源を守る活動を条件として課したり、その動きを他国と連携して世界に広めたりといった行動を起こしました。

手ごたえはいかがでしたか?

クロス本番当日は、現実社会の1年を1セッションとして、3年間のシミュレーションが行われます。2年目の後半に、ノルウェーが国連安全保障委員会の新たな常任理事国に参加することになりました。私は外務大臣として最初から各国に技術提供の面で貢献してきたので、それが認められたのは嬉しかったですね。おそらく、1年目の安全保障理事会で新しい常任理事国の枠を設けようという話があったんだと思います。国際社会への貢献をアピールする努力を続けてきて良かったと思いました。

GSGを通して改めて気づいたこと、学んだことはありますか?

クロスノルウェーは軍事力をほとんど持たないので、安全保障上からも、技術提供や資金援助を通した他国への貢献によって国際社会で存在感を示すことが重要です。しかし、それを実行するための資金源は石油の輸出。SDGs先進国でありながら、その先進的な行動を支えているのは石油という矛盾を抱えているのです。その点を他国から指摘されながらも、決して石油というリソースを手放すわけにはいかないという現実があります。日本も軍事力が持てないので、途上国へ多額の資金や技術の提供を行い、それを国際社会にアピールすることによって交渉力を裏打ちしている点でノルウェーと似た立場にあると思います。外から客観的に見るだけでは現在の国際関係の問題を捉えきることはできず、それぞれの国の強みや弱み、利害や歴史を理解することによって初めて複雑に絡み合う国際問題に向き合うことができるということを学びました。

学外のプログラムでの取り組みが縁で
イスラエルの現地企業でインターンシップが決定

学部の学び以外で取り組んでいることはありますか?

クロス学外の「TOPPA4U」というリーダーシップ・プログラムに参加しました。リーダーシップについての授業とグループワークを通して、リーダーシップにもさまざまな形があることを学びました。私は人を引っ張っていくことが得意で、それがリーダーシップだと思っていたのですが、自分ひとりでやりすぎてしまう点に課題を感じていました。しかし、プログラムの中で実際にグループワークを行った時、日程調整やプロジェクト管理が得意で、期限が迫るとメンバーにリマインドしてくれる人や、私や他のメンバーの意見に対して積極的に矛盾的や改善点を指摘してくれる人がいました。これらもリーダーとしての能力の一つであり、自分に足りない点だということに気づくことができました。

このプログラムで取り組んだリアルな企業課題のプレゼンテーションで優勝したことにより、イスラエルの企業でインターンシップをすることも決まり、挑戦的で刺激的な経験をしています。

課外活動は行っていますか?

クロス非公認サークルの「LGBTQ +コミュニティ」で活動しています。立命館には以前、LGBTのサークルがあったそうなのですが、今はなくなっていました。再び立ち上げたいという友人に誘われて2021年の2月に結成、徐々にメンバーを増やしていっています。啓蒙活動ではなく、当事者が同じような経験をしている人と話せる、安心して自分のことを話せる、そんなコミュニティづくりです。

将来の目標を教えてください。

クロスさまざまな国を転々とするような職につきたいと思っています。その国を深く知るには、そこに暮らし、仕事を通じた人間関係のあり方も理解する必要があると思うので、それが叶う仕事ができれば最高です。私は今、大学で国際政治を本当に楽しんで勉強しているので、それを活かせる仕事につけたらいいなと思います。そのためにビジネスとしての英語力を向上させることに加えてスペイン語も勉強しようと考えています。

2022年3月更新

MORE INTERVIEWS