オープンゼミナール2025「【もうええでしょう】「食い尽くし系夫」は何故食い尽くしをやめられないのか?」
鳥山ゼミ(チーム名:純子先生、それ食べたかったんじゃないですか?)
田﨑すみれさん、景山寧々さん、杉本知優さん、寺嶋菜々子さん、永金愛海さん、福田凛さん、小園菜月さん
2025年度国際関係学部オープンゼミナールで「【もうええでしょう】「食い尽くし系夫」は何故食い尽くしをやめられないのか?」というテーマで発表を行った鳥山ゼミ(担当教員 鳥山 純子先生)のみなさんにお話を伺いました。
鳥山ゼミについて教えてください。
鳥山ゼミは、「ジェンダー」という視点から現代社会のさまざまな問題を批判的に考えるゼミです。
性別に関わる構造的な格差だけでなく、社会に埋め込まれた“当たり前”を見直すことを大切にしており、各自が関心のあるテーマを自由に探究できるのが特徴です。ゼミ生のテーマは、LGBTQ+、性役割、ルッキズム、職場のジェンダーギャップ、性教育など幅広く、自分の経験や興味に基づいてそれらを深めていきます。
授業は、文献の読み込みやプレゼンテーション、意見交換を中心に進みます。議論の雰囲気はとても穏やかで、互いの考えを尊重しながら率直に話し合える環境です。秋学期には各自が取り組む卒論テーマを共有し、研究内容へのフィードバックを通して理解を深め合います。
鳥山先生は、学生の興味を引き出しながら自由に探究させてくださる方で、自分の問題意識を大切に学べるゼミだと感じています。

オープンゼミナールの発表内容について教えてください。
私たちのグループは「『食い尽くし系夫』はなぜ食い尽くしをやめられないのか?」というテーマで発表を行いました。近年SNSでも話題となっている「食い尽くし」とは、家族の分を考えずに料理やお菓子をすべて食べてしまう行動を指します。この身近な現象を切り口に、家庭内のジェンダー構造や社会的背景を読み解くことを目的としました。
まず、食い尽くしの経験や行動の実態を把握するため、アンケート調査とSNS分析を行いました。その結果、食い尽くしを行った人物として最も多かったのは「父親」であり、行動後には「謝る」「言い訳をする」などの反応が多いことが分かりました。また、「何度も繰り返された」という回答も一定数存在し、家庭内で習慣化しているケースがあることが確認できました。また、兄弟姉妹に食い尽くされたという割合も多かったり、食卓に立つ割合が母親の方が多かったりしたことから、男性だけが食い尽くしをしているというより、料理をしない側が食い尽くすということが見えてきました。

加えて、アンケートからは食い尽くし行動の背景には
1. 育った家庭環境や「食べても許される」という感覚
2. ジェンダー役割意識の固定化(料理を作らない側の人に行動が多い)
3. 「家族だから許される」という甘えの構造
といった要因があることがわかりました。食い尽くしは個人の問題に見えて、実は家庭内の力関係や社会的なジェンダー観が影響していることを明らかにした点が、今回の発表の意義です。
オープンゼミナール当日に寄せられた意見や印象に残ったことはどのようなことですか?
SNSで話題になっていた議論や日常的な家庭内の問題から設定されたテーマということで、興味を持って発表を聞きにきてくれた方が多く、食い尽くし傾向を診断できる「食い尽くし診断チャート」を配布したことにも好評をいただきました。
また、食い尽くしという行動が単にマナーや性格によるものではなく、家庭内の権力構造やジェンダー問題とも関連していたという点が意外だったという意見や、「男女というより、料理をしない側が食い尽くす」という分析結果を興味深く感じてくれた方も多かったです。加えて、自分も無意識に当てはまっているかもと気づくきっかけになったという意見や、家庭内で食い尽くしが多い理由についてハッとさせられたという意見などから、オーディエンスが自分ごととして捉えるきっかけを作ることができたということが印象的でした。
「被害者側に責任が押し付けられる風潮に疑問を投げかけ、加害者側が自分と向き合い考えることが必要だ」という、私たちが最も伝えたかったメッセージに多くの方が共感してくれたのにはとてもうれしく感じました。
オープンゼミナールを通じて学んだことを教えてください。
インターネット上では、妻から「食い尽くし夫」への愚痴が多く投稿されていることから、夫側に問題があるのではないかという視点からリサーチを始めました。しかし、実際にアンケートをとってみると、食い尽くし行動をしているのは夫だけでなく、子どもにも見られることが分かりました。このことから、ネット上の意見に左右されず、批判的思考を持って物事を見る重要性を改めて学び直すきっかけとなりました。
また、家庭内の問題をどのように社会と結びつけるかという点に苦労しました。チームでオーディエンスに伝えたいことを何度も議論した経験を通じて、問題の構造を整理し、筋道を立ててまとめる力が身につきました。
発表本番では、限られたポスターの情報だけでオーディエンスに興味を持ってもらえるか不安がありましたが、問いかけを交えたり、「食い尽くし診断チャート」を作って実際に答えてもらえたり、オーディエンスを巻き込む工夫をしたことで楽しんでもらえる発表にすることができました。オープンゼミを通して場の盛り上げ方やプレゼン能力が向上したと感じています。
次年度の参加チームへメッセージをお願いします。
発表を始める前は緊張するかもしれませんが、大勢のオーディエンスが研究に興味を持ってくれているのを目の当たりにすると、段々と自分に自信がついてきます。また、後輩がゼミに興味を持ってくれたり他の発表者からポジティブなコメントをもらったりした時には、大きなやりがいを感じることができます。大変なことも多いですが、得られることの方がはるかに大きいので、ぜひ終わった後の達成感を楽しみにしながら頑張ってください!

2025年12月更新
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