専門演習での研究を通し
国際紛争を回避するための
「人類共通の目標」は何かを探りたい。
青葉 あずさ さん
国際関係学部 4回生
3回生から始まる少人数制のゼミ「専門演習」。他国へのステレオタイプな印象と実態とのギャップに直面したことがきっかけで国際関係学部に入学した青葉さんは「地球社会を平和学する」をテーマとするゼミで、紛争の回避について研究しています。研究の内容はどのようなものか、研究を通してどのように物の見方が変わったかなどについて話してもらいました。
「構造的暴力」という考え方に出会い
物事の原因や背景を構造的に見るようになった
立命館大学国際関係学部を志望した理由を教えてください。
青葉高校時代に中国で現地の学生と交流した際、互いの国への理解の違いにショックを受けました。ステレオタイプな印象に覆われて実態が見えていなかったことを恥ずかしく思い、国際社会で何が起こっているかに興味を持つようになりました。IR開講とGS開講があり、多様な先生がいて視野が広げられそうな点にも魅力を感じました。
入学すると、想像以上に多様な地域や分野の先生がいて世界の広さを実感。一つの正解に縛られない自由な思考を歓迎してくれる柔軟さに居心地の良さを感じました。節度を持ちつつも固定概念を壊していく、そんな先生が多いと感じました。
専門演習で取り組んでいる研究テーマについて教えてください。
青葉私の所属する君島ゼミは「地球社会を平和学する」というテーマのもと、法・政治・歴史・ジェンダーなどあらゆる視点から平和について考えています。
私が興味を持っているのは「紛争回避論」。アメリカとソ連の緊張が高まり、核戦争目前にまで至りながら最終的には回避できた「キューバ・ミサイル危機」を事例として、外交における紛争回避の可能性を調べています。キューバ・ミサイル危機が起きた当時のアメリカ大統領ジョン・F・ケネディの弟ロバート・ケネディによる『13日間—キューバ危機回顧録』をはじめとする文献を読み込み、ケネディ大統領とソ連のフルシチョフ首相の書簡のやりとりから、当時の双方の立場と妥協点を調べました。現段階では「全面核戦争の回避」という最大の目標が共通していたために対立を収めることができたのではないかと私は考えています。
今後はどのような研究をしたいと考えていますか?
青葉今後は、現在の国際社会に存在する対立を妥協、あるいは超越させるような人類共通の目標は何かについて探っていきたいと思います。特に今後起こりうる「台湾有事」において、武力紛争を回避させるのはどのような状態か、またそうするためには何が必要かということを研究したいと考えています。さらには、台湾有事の際に日本がどうすれば武力行使を防ぐことができるのか、事態が起きてから対応するのではなく、どうすれば予防することができるのかを研究する予定です。
専門演習を通して物の見方や考え方が変わった点はありますか?
青葉ノルウェーの平和研究者、ヨハン・ガルトゥングの提唱する「構造的暴力」という考え方に出会ってから、物事を構造的に把握するという視点を大切にするようになりました。武力などを用いる直接的暴力が目に見えやすいのに対して、貧困や飢餓など社会構造によってふりかかる暴力は見えにくく、背景にある歴史や広範囲の情勢と照らし合わせて初めて見えてくることがあります。たとえ感情が揺さぶられるような物事が起こっても、どうしてそれが起こったのか、原因や背景を構造的に見ることを心がけるようになりました。
専門演習の中で特に面白かった取り組みについて教えてください。
青葉上智大学総合グローバル学部、同志社大学グローバル地域文化学部との合同ゼミです。用意したプレゼンテーションを発表し合い、それをもとにディスカッションをしました。ゼミのメンバーと検討を重ねてプレゼンテーションを作り上げることにもとても価値がありましたし、他大学の国際系学部の学生と意見交換をすることを通して様々な意見に触れられたのもとても面白く有意義だったと思います。
後輩へ、専門演習の魅力やお勧めのポイントを教えてください。
青葉君島ゼミは他大学との交流も多いので、より“Beyond Borders”を実践しながら学ぶことができます。コロナが落ち着けば、中国の復旦大学、韓国のキョンヒ大学の学生との交流(China-Japan-Korea Student Peace Dialogue)も再開するでしょう。多くの人と意見交換をし、無限に自分の視野を広げ、様々な角度から平和について考えたい人にはとてもお勧めです!
強く望み、能動的に扉を叩けば
より広い世界にアクセスできる
ドイツ留学中の印象的なできごとを教えてください。
青葉コロナ禍の直前だったので現地の生活環境に身を置きながらドイツ語を学ぶことができ、帰国後のドイツ語学習のモチベーションになりました。
印象的なできごとはアジアンヘイトとの遭遇です。中央駅の近くを歩いている時、指をさされながら「Corona!」と叫ばれ、野次を飛ばされる経験をしました。新型コロナウイルスが中国の武漢あるいは日本のクルーズ船で流行し始め、ヨーロッパに蔓延する前というタイミングであったため、新型コロナウイルスと絡めてアジア人をヘイトの対象としたのでしょう。この経験を通して自分がアジア人であるという自覚を持つとともに、世界中で起きている差別の現状を、身をもって認識することとなり、その後国際関係学部で学ぶ上での強烈な問題意識になりました。
京都での大学生活の魅力を教えてください。
青葉休日であれば混雑する名所に、平日の空き時間を使って比較的空いている時に行くことができる点です。これは京都の大学生ならではではないでしょうか。
また、町の規模もちょうど良いと思います。娯楽含め生活で不自由することもないですが、都会すぎず落ち着いた雰囲気があります。特に衣笠キャンパス周辺は静かで落ち着いた空気が流れているので学びに集中することができます。
長期休暇はどのように過ごしていますか?
青葉コロナ禍での長期休暇に、第二外国語とは別に中国語の学習を始めました。夏季休暇に入るタイミングで基礎から始め、短期集中で学び、夏季休暇の終わりごろにHSK3級を受け合格しました。大学生ならではの約2ヵ月という長期の休暇は、新しいことを始めるチャンスだと思います。短期集中で結果が出ると達成感も感じられるので語学学習もお勧めです。今年の夏季休暇では第二外国語のドイツ語の検定に向けて勉強する予定です。
国際関係学部を志望する受験生に対して応援のメッセージをお願いします。
青葉「常に目に見えていない世界に想いを馳せること」これは私が大切にしている言葉です。立命館大学国際関係学部には未知なる世界が無限に広がっていて、能動的に扉を叩けば叩くほど、望めば望むだけ、広い世界にアクセスすることができます。皆さんの瑞々しい好奇心と可能性の蕾がここで美しく咲くことを願っています。共に世界への扉を叩いていきましょう!
2022年10月更新
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