憎しみや対立ではなく、人が喜びをもって
生きられる社会をつくりたい。

白井 莉奈子 さん
独立行政法人 国際交流基金(2020年度卒業)

国際関係学部に在学中、アメリカのニューメキシコ大学への交換留学に参加。卒業後、2021年4月に独立行政法人 国際交流基金へ入職し、現在は日本の美術や文化を海外へ紹介していく事業を担当。

卒業後の進路を決めた理由や現在のお仕事について教えてください。

白井私は高校時代から紛争や平和といった事柄に関心があり、制度を整えることで現状をよりよくできるのではないかと考え、法律が学べる大学を目指していました。しかし、国際関係学部で大学生活を過ごすうちに、もちろん法や経済は国際関係にとって重要なことですが、その視点だけではどうにもならないことがあるのではないか。そして、もしかしたら、人の認識が変われば世界は少しだけ変わるかもしれない。また、文化芸術であれば、それが可能かもしれないと思い、文化・言語・対話を通じて、人々の間に共感や信頼、好意をはぐくむことをミッションとする国際交流基金に就職したいと思うようになりました。

入職後約1年半は、日本語教育の専門員と共に、海外で日本語を教えている先生方を対象とした研修や、アジアの中学・高校などで日本語の授業のアシスタントや日本文化紹介を行う「日本語パートナーズ」の派遣前研修を運営していました。現在は美術チームにて、日本の美術や文化を海外へ紹介することを目的とした海外巡回展の制作・運営や、海外での展覧会等への助成事業を担当しています。

仕事のやりがい・おもしろさを教えてください。

白井日本語教育の研修事業では、日本語専門員とともに現地のニーズを踏まえた上で、実際に海外の現場で日本語教育に携わる人に対してどのような研修を実施するのがよいのかという打ち合わせを重ねました。対象とする国や地域によって研修内容を見直す必要があるところが難しいながらもおもしろいところだと感じます。また、普段使われている言葉を外国人にも分かるように配慮した「やさしい日本語」に関するオンラインセミナーを実施した際は、私自身も勉強になったと同時に、地方公共団体の方をはじめ多くの方にご参加いただいたことが励みとなりました。

現在美術チームで担当している海外巡回展は、大国だけでなく、普段なかなか耳にすることのない国や地域へも巡回を行います。そのため、なかなか思うように進まないこともありますが、民間や他事業ではあまりカバーできない国や地域の人に日本の美術や文化に関心を持っていただく機会を提供できることにやりがいを感じます。

大学での学びが仕事で役立っていると感じられる場面はありますか?

白井学生生活を通して、さまざまな国や地域を訪れ、多様な人と出会えたことが今の私につながっていると思います。大学1年生の時は、紛争や貧困、平和に関心があり、それならばまず「アフリカ」に行こう!と思い、NPO団体のプログラムを利用し、タンザニアへ訪れました。 現地NPO職員の方が、オリエンテーションの際にプログラム参加者に対し、“Africa is not a country.”と仰っていたことや、その後タンザニアで見る景色が私の想像していたものとは大いに異なっていたことに衝撃を受けました。たった20日ほどの滞在ではありましたが、私自身が先入観で物事を判断していたことに気づかされました。

大学2年生時にアメリカのニューメキシコ大学に交換留学に行ったことも思い出深いです。ニューメキシコ州は、ナバホやプエブロといった先住民族やヒスパニックの人口比率が多い地域で、かつ同大学では韓国や中国をはじめアジアからの留学生を多く受け入れていました。そのため、現地では人種や国籍に関わらず、さまざまな人と触れ合うことができました。韓国人のルームメイトと日韓関係について話したことや、ベネズエラ出身のクラスメートに第二次世界大戦中の日本の行いについて非難されたこと、トランスジェンダーの友人に恋愛相談をした際に彼の視点に驚かされたこともありました。

留学中は、人や国、地域等に対して私自身が持っていた固定観念に気付かされることが多かったです。「偏見を持っているかもしれない」という前提で、それならばどのように相手とコミュニケーションをとれば良いかということを考えながら過ごした9か月間でした。

国際交流基金の仕事は、海外の方を対象としている事業が多く、実際に海外の方とやりとりさせていただく機会も多くあります。その際、国名のみを聞いてラベリングすることや苦手意識を持つことはしないよう気を付けています。また、日本語や日本文化に関心をもって訪日くださった方に対しては、不信感を与えることなくコミュニケーションをとろうと肝に銘じています。私自身のもつ偏見を完全になくすことはできないかもしれませんが、ふとした瞬間に「気をつけよう」と思うのは、国際関係学部での学生生活を通してさまざまな人と出会って、その時々に目の前の人や物事と向き合える機会を得られたからだと思います。

卒業して感じられる国際関係学部の魅力とは何でしょうか

白井法や政治、経済のみならず、地域研究やジェンダー学をはじめ、あらゆる切り口から国際関係学を学ぶことができる点が魅力だと思います。国際関係学部に入学し、分野に縛られることなく常にその時々の自分自身の興味関心に合わせて授業を履修し、学習を進めることができた点がなによりもよかったことです。

また、留学プログラムをはじめ、各種プログラムや学習サポートが豊富な点も国際関係学部に入ってよかったと思うことのひとつです。私自身も交換留学だけでなく、言語交換プログラムや留学に必要な英語検定のIELTS対策講座を受講する等、さまざまなプログラムに参加し、充実した学生生活を送ることができました。

他にも2018年にノーベル平和賞を受賞されたデニ・ムクウェゲ医師が来学し、お話を伺えたことは大変勉強になりましたし、国際交流基金が招へいする各国の外交官と交流する機会は私自身の進路にも大きく影響するものでした。卒業生が多いことはもちろんのことながら、国際機関や団体とネットワークがある点も国際関係学部の魅力のひとつだと思います。

国際関係学部には、自分の好きなことを好きなだけ勉強できる環境があり、自分のことや社会のことについて話し合える友達に出会え、やりたいことや夢を応援してくださる先生方がいらっしゃいます。

受験勉強では落ち込む時も苦しい時もあるかもしれませんが、みなさんが充実した大学生活を送れることを祈っています!

2023年8月更新

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