オープンゼミナール2023「クレヨンしんちゃんから見る日本社会におけるジェンダー意識の変容」
中本ゼミ(チーム名:おらのなかまたちだゾ!)
宮尾千野さん、横山結香さん、辻花裕子さん、玉城里紗さん、片山遥さん、キム ユンジさん、大友莉耶さん
2023年度国際関係学部オープンゼミナールで「クレヨンしんちゃんから見る日本社会におけるジェンダー意識の変容」と題して発表を行った中本ゼミ(担当教員 中本 真生子先生)のみなさんにお話を伺いました。
中本ゼミについて教えてください。
中本ゼミは比較文化論を中心に研究をしています。複数の文化・社会を比較することで社会現象などを分析し、問題の解決・案・改善策を考え出す能力を身に着けることを目標としています。
また、個人の研究テーマが多岐に渡るのもこのゼミの特徴だと思います。アニメなどのポピュラー文化から国内外の人種問題まで自分が興味を持ったテーマならどこまでも追求することができます。
中本先生は普段はおっとりした雰囲気で、相談事にも乗ってくださる優しい先生です。博識な方で幅広いジャンルをテーマにするゼミ生の発表一つ一つに的確なアドバイスをくださります。
クラスの雰囲気は、女子が多くて全体的に落ち着いています。違う分野に関心を持つゼミ生が集まっているため、自分では思いつかなかった視点からの発想を他のゼミ生から貰えることもあります。
オープンゼミナールの発表内容について教えてください。
日本人ならおそらく誰もが目にしたことのあるクレヨンしんちゃんシリーズ。多くの人から親しまれ愛されてきた作品であると同時に、その過激表現の多さから物議を醸してきた作品でもあります。今回の発表では作品中に見受けられるジェンダー表象に着目しました。
まずは過去と現在の映画版クレヨンしんちゃんを比較することで時代と共にどのような変化が起きたのかを分析。そして、ジェンダー表象変化の背景を知るべく、ジェンダーに対する日本社会の意識変化や、映画監督のインタビューから見る作品制作背景、現実世界とフィクションの関係性に関する理論といった3つの観点から分析し、クレヨンしんちゃんというメディアが大衆の価値観にどのように影響したかを読み取り、メディアと大衆の関係性について考察しました。
なぜこの発表テーマを選びましたか?
私たちの身近にあるアニメにみるジェンダー表象を研究することで、日本社会のジェンダー意識変容、そして近年重要視されているPolitical correctness(政治的な正しさ)にまつわる変化を発見することができるのではないかと考えたからです。
アニメはフィクション作品であると同時に、現実社会における時代の変化や社会の潮流を反映させるメディアにもなり得ます。多様化する社会と向き合うにあたって、年代を問わず身近な存在であるアニメは、現実の日本社会に対する理解を深め、見つめ直すきっかけの一つになると思います。そんななか今回は海外でも放送されている、かつ日本の長寿作品である『クレヨンしんちゃん』を参考に、登場キャラクターの発展やジェンダーステレオタイプに基づく描写に着目して、シリーズの中に見られるジェンダー表象の変化と日本社会との関係について分析しました。
オープンゼミナール当日に寄せられた意見や印象に残ったことはどのようなことですか?
「馴染みのあるアニメをテーマとしていたため、イメージしやすく関心も持ちやすかった」、「時代と共に変化する身近なアニメ作品の表象に、ジェンダー意識の変遷が読み取れると思っていなかったため、意外性があり面白かった」、「実際に馴染みのあるアニメ作品の映像を見せたり、細かく作中のセリフが書き出してあったりと、大変具体性があり良かった」といった声をいただきました。大衆性のあるテーマ選びにこだわっていたので、こういった意見が頂けたことはとても光栄です。
頂いた意見の中でも特に、「現実世界とフィクションの関係はそれぞれ影響を与えると共にフィクションから誘導するツールとして、アニメ等子供世代から意識変革を進めるのに役立つと感じた」といった意見や、「幼い頃からしんちゃんを見てきたが、確かに当時の視聴体験が、現在の私の女性像、男性像に繋がっていることに気づいた。幼い子が見る身近なテレビ番組がLGBTQなどの理解を示すことは、未来の子供達の偏見を無くすことに繋がると感じた」といった、ツールとしてのアニメ作品に関する意見が印象的でした。この先「クレヨンしんちゃん」が社会に与える影響にも目を離せないと感じます。
また、私たちの調査前提や分析内容に対する鋭い指摘と意見をいただいたことも大変印象に残りました。今後の研究活動の参考にさせていただきます。
オープンゼミナールの準備期間中、大変だったこと、工夫したことはどんなことですか?
オープンゼミの準備中、クレヨンしんちゃんの劇場版から適切な作品を選ぶのが難しかったです。作品の設定自体はずっと変わらず1990年代の家庭モデルをベースにしており、時代によるジェンダー観の変化を発表内容にどのように反映するか悩みました。チームは膨大な作品の分量と限られた時間の間、クレヨンしんちゃんの過去と現在、そしてジェンダー観の変化をどのように伝えるのか見当がつきませんでした。
この困難から抜け出すために、チームは継続的なコミュニケーションと意見交換を通じて解決策を模索しましたし、先輩方と先生からのアドバイスは作品の核心を強調し、発表内容を効果的に構成するのに役立ちました。
オープンゼミナールを通じて学んだこと、今後に活かせることはどんなことですか?
日本のジェンダー意識が具体的にどのように変化していったのかを学ぶことができました。より新しい作品になるにつれて、固定的なジェンダー観に当てはまらない多様な人々の姿が描かれていたという点から、『クレヨンしんちゃん』というフィクション作品が現実世界と切り離されている訳ではないということを改めて理解することができたと感じています。
今回のオープンゼミナールを通して、同じゼミ生や先輩、先生方を始めとするさまざまな人々の意見に触れ、多様な視点から分析し、より深く研究を進めることができたという経験を、今後のゼミ活動でも活かしていきたいと考えております。
次年度の参加チームへメッセージをお願いします!
他の授業と兼ねながらのオープンゼミナール大会への参加は忙しく大変ではありますが、それと同時にここでしか得られない貴重な経験になります。私たち自身、締切に追われながらもなんとか形にし、有難いことに賞を頂くことか出来ました。また、ゼミのメンバーとの仲を深める良い機会にもなりますので、ぜひチャレンジしてみてください!
2023年12月更新
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