
オープンゼミナール2023「メディアが生み出した地下アイドルとイメージ消費」
大山ゼミ(チーム名:TEAMシュレーディンガー)
今泉穂香さん、大池遼さん、東田彩音さん、笹井理莉子さん、武井由里亜さん、坂東果林さん、吉田義啓さん、伊藤魁朱さん、五十嵐観月さん、三浦大輝さん
2023年度国際関係学部オープンゼミナールで「メディアが生み出した地下アイドルとイメージ消費」と題して発表を行った大山ゼミ(担当教員 大山 真司先生)のみなさんにお話を伺いました。
大山ゼミについて教えてください。
カルチュラル・スタディーズの視点から、文化産業・クリエイティブ産業の研究をしています。グローバルな視点で、メディアと文化の問題や、文化経済の領域などを最新の文化、メディア理論動向と組み合わせて学んでいます。必要であればフィールドワークを行いながら、自分たちの好きな事を追求しています。
オープンゼミナールの発表内容について教えてください。
オープンゼミナールでは、地下アイドルとイメージ消費について発表しました。
地下アイドルはテレビやSNSで見るメジャーなアイドルより悪い印象が先行していますが、そのイメージがどこからやってきたのか分からないことに興味を持ちました。加えて、メジャーアイドルと活動内容自体はほぼ似通っていることもこの疑問を強化させました。
地下アイドルに関する研究は春セメスターから取り組んでいましたが、その時点で、①「地上」、「地下」の判断は主観的かつ恣意性が存在するため、客観的な指標やデータを収集できない、②明確な基準や境界線は明らかできない、という限界点に達しました。そこで、この部分から再度アプローチしたいと思い、メディア・文化研究の理論と方法論を使って批判的に分析を進めようと決めました。既に定義されているものに疑問を抱き、最終的に自分達なりの結論を出せることを目標としていました。
地下アイドル、ひいてはアイドル産業は体系的な学問としてあまり研究されておらず、世界の音楽シーンの中でも他の例に当てはめることが難しいジャンルとして存在していました。そこで、私たちはファンのニーズの違いやメジャーアイドルのあり方を追求し境界線を引くことで「地下アイドル」という存在をより明確化することを試みました。
そこで鍵となるのがイメージ消費です。イメージ消費とは、実態そのものではなく誰かにより作り上げられたイメージが消費されているという構造のことです。メディア産業や芸能界においてはイメージが大きな影響を持つため、アイドルを研究するにあたりイメージ消費の観点はとても重要だと考えました。
AKB48の系譜が今はメジャーアイドルであるということはチーム内での共通認識でした。同じ劇場から活動を開始したにもかかわらず、地下アイドルと認知度の違いや、人々の間に「メジャー」と「アングラ」という対比構造が出来上がっていることに疑問を抱き、両者の比較を行うことで地下アイドルという存在をより追求することとなりました。結果として、地下アイドルはメジャーアイドルの対義語ではなく、独自のアーティスト性を持つ別のジャンルとして存在しているという結論に至りました。
オープンゼミナール当日に寄せられた意見や印象に残ったことはどのようなことですか?
いただいたコメントの多くは、ポスターの見やすさや、実際に取材をしに行き地下アイドルやファンを分析していた点を評価していただきました。また、AKBと比較したことで伝わりやすく、テーマに興味を持ってくれた人が多くいました。
印象に残ったコメントは、地下アイドルは地上アイドルの対義語ではない、という結論に対して、「決して全ての地下アイドルが地上アイドルを意識していない訳ではなく、ファン獲得のためにアイドルとの差別化を図る必要があり、地下には独自のアーティスト性を強調したグループが多いのではないか」といった内容でした。これに関して、実際に地下アイドルにインタビューできれば、より深い洞察を得ることができると思っています。
オープンゼミナールを通じて学んだことを教えてください。
準備中大変だったことは、定義のないものを定義づけしないといけない難しさと、結論として答えを出さなければいけなかったことです。
地下アイドルと地上アイドルの違いなど明確な基準がないため、何をもって地下アイドルとするのかという線引きに苦労しました。インスタグラムでアイドルについてのアンケートを取ったり、自分たちで調べていく中でだんだんとアイドルの枠組みを発見することができました。
結論に至ってはグループのメンバーと話し合い、やはり地下と地上アイドルは別々のジャンルのアイドル形態だ、という1つの意見にまとめることができました。
オープンゼミナールでの経験は、単なるプレゼン大会の機会以上のものがありました。スキルだけでなく、自分自身の内面的な成長にも繋がるものでした。自己表現、リーダーシップ、挑戦への対処、そして努力による成果の喜び。これらの要素が組み合わさり、より自信を持ち、将来に向けて前向きなステップに繋げることができると感じています。
グループワークはチームメンバーとの良好なコミュニケーション、異なる視点の尊重、共通の目標設定、柔軟性と適応力の向上など、多くのスキルを養う機会となりました。これらの経験を通じて、個々の成長だけでなく、協力して目標を達成する喜びも味わえたことは非常に価値のあるものでした。
チームでのプレゼンテーションでは、メンバーと協力し、効果的な役割分担を行うことが求められました。本番では予期せぬトラブルに見舞われましたが、それが今後の成功に繋がる糧となると信じています。成功するためには、テーマに対する深い理解と情熱。そして入念な調査と工夫、効果的なプレゼンの構築を行うことが必要です。成果を上げるためのそうした小さい努力の積み重ねが肝要であると再認識しました。
次年度の参加チームへメッセージをお願いします。
オープンゼミは自分の好きな事を好きな形で発表出来る事が醍醐味だと思っています。何かに興味や疑問を持つことから始まり、それについて最後まで自力で答えを出しに行くという経験は滅多に出来る事でも無いと思います。
私たちのチームでは答えがあるものを研究した訳ではありませんでしたが、答えがないということも研究するまでは分かりませんでした。オープンゼミは最終の発表報告だけでなく、準備期間で得たものが想像以上に大きいと思います。次年度に参加する皆さんも楽しみながら頑張ってください!
2024年1月更新
MORE INTERVIEWS
-
国際関係学は、様々な学問分野の知識や理論を集約して国際社会を紐解いていく、学問の幅と深みを併せ持つ非常に魅力的な学問です。
片山 純雪
国際関係学専攻 3回生2025.4.11
studentlife|academics|ir_major|
-
学内外で平和構築について考え、行動する様々な活動に参加。これからも核兵器に頼らない平和を創る仕事に関わり続けたいと考えています。
倉本 芽美
国際関係学専攻 4回生2024.4.1
studentlife|ir_major|
-
学生同士や大学と学生との間を繋ぐ「国際関係学部自治会」での活動。3回生からは学部だけでなく大学全体に関わる学生団体でも活動しています。
藤澤 海音
国際関係学専攻 3回生2025.3.14
studentlife|academics|ir_major|
-
戦争や貧困のない社会を実現するには、人々が「社会はどうあるべきか」に関心を寄せ続けることが不可欠と思い、取材や報道を通じてその一端を担える記者を目指しました。
高田 みのり
中日新聞社(2016年3月卒業)2025.3.14
alumni|
-
「国際関係学×言語」で日米をつなぎたい- 私が挑んだJDPの4年間とグローバルな未来
稲田 実々
アメリカン大学・立命館大学国際連携学科 4回生2025.02.25
studentlife|academics|studyabroad|jdp|
-
自身の経験を元にキャリア・心理の両面から従業員支援を行う会社を起業。国際関係学部での学びが今の海外事業展開の土台になっていると強く感じます。
福井 千春
Veap Japan株式会社 代表取締役/公認心理師(2009年3月卒業)2025.2.21
alumni|