「国際関係学×言語」で日米をつなぎたい- 私が挑んだJDPの4年間とグローバルな未来

稲田 実々 さん
アメリカン大学・立命館大学国際連携学科 4回生

アメリカン大学・立命館大学国際連携学科(ジョイント・ディグリー・プログラム:JDP)のRU Home第4期生の稲田さん。2025年3月に卒業を控えた今、JDPの4年間を振り返っていただきました。高校時代までは特別な海外経験のなかった稲田さん。4年間を通じて、どのようにグローバル人材へと成長されたのでしょうか?

普通科の高校から、英語基準のジョイント・ディグリーへ

稲田高校生の時から日本の外交に興味があり、政治や国際関係を学びたいと思っていました。いろいろ考えた結果、最終的に国際関係学を勉強しようと思い、海外の大学も検討しましたが、やはり学費が高いのがネックになって…。そんな時、立命館大学を志望している友人に国際関係学部を勧められました。それがJDPとの出会いのきかっけです。日本とアメリカで2年ずつ学んで、両大学からひとつの学位を取得できるのは魅力的でしたし、アメリカのワシントンD.C.で学べることが決め手になりました。やっぱり、D.C.は国際関係学を学ぶには理想的な場所ですからね。

ずっと高校までは普通科だったので、入学して最初の1学期は本当にきつかったですね。今まで全て英語だけで学ぶ経験がなかったので、教員の話していることが聞き取れず、授業に集中できなかったり、課題に苦戦したりしました。高校では、週に1回だけ、ネイティブの先生の英語の授業があったのですが、大学の90分授業はまるで違いました。2学期になって、聞き取り、書き取りにもだいぶ慣れてはきたのですが、担当のアカデミック・アドバイザーから、「このままではワシントンD.C.に行けないよ!」と発破をかけられてしまいました。「これはまずい」と思い、もっと頑張ろうと、改めて決心したのを覚えています。

アメリカン大学で、現地ならではのアクティブラーニングを体験

毎日の努力が実り、無事にアメリカン大学への渡航に必要な履修要件を全て修了。大きなチャレンジを乗り越えました。そしてアメリカン大学では、新たな経験を積むことになります。

稲田やはり日本とアメリカの授業は全然違いました。授業はディスカッション中心で、学生が議論をリードし、教員が詳しい内容を補足していく形式です。「アクティブラーニングって、こういうものなんだ」と実感しましたね。当時の私は、表立って発言するのが苦手で、どちらかというと色々な人の意見を聞いて、自分の中で咀嚼するのが好きだったんですが、それではいけないと思い、発言への苦手意識をどう克服すべきか考え、初回の授業でなるべく多く発言するよう努めました。授業がある程度進んでからだと、手を挙げて発言するのがもっと難しくなると学んだのです。授業ではたくさんのディスカッションやプレゼンテーションを経験することになり、人前で話す絶好の訓練になりました。

アメリカン大学で印象に残った授業を教えてください

稲田「SISU-380 Conquest, Cold War, Globalization」です。ラテンアメリカに関する授業ですが、当時の私はこの地域のことをあまり知らなくて、内容がとても新鮮でした。授業ではラテンアメリカの人権問題について学び、ちょうど別の人権に関する授業も取っていたこともあり、人権問題に興味を持つきっかけにもなりました。クラスにはラテンアメリカにルーツを持つ学生も多く、一つ一つのトピックで議論が白熱します。スペイン語もペラペラ。私や同じJDPのクラスメートは、必死についていきましたが、同時にアメリカならではのクラスを体験し、楽しかったですね。

アメリカン大学では、専門以外でも、面白い授業がたくさんあります。私はヨガのクラスを受講したり、また、人間と動物の共生を学ぶ授業では、ファシリティドックに触れあったりと、国際関係学以外の科目も積極的に受講したことで、教養の幅が広がったように感じています。

アメリカン大学へ渡航する前も、立命館大学でインターンシップの授業に参加していた稲田さん。ワシントンD.C.でも、授業だけでなく積極的にインターンシップに参加しました。

稲田アメリカン大学在学中、日本の新聞社のワシントンD.C.支局でインターンとして働きました。翻訳の仕事が中心で、インタビューのレコーディングを日本語に翻訳したり、ニュース記事を翻訳して資料作成したりしました。また、私の知り合いで、政治活動に携わっている人がいると知った上司から、インタビューを手配するようお願いされました。英語でコーディネートをする経験は初めてでしたし、実際のインタビューでも通訳支援をさせてもらい、とても勉強になりました。

アメリカン大学の2年目には、1年目で履修する科目「American University Experience」のTA(ティーチング・アシスタント)を担当しました。毎週、担当教員とミーティングして、カリキュラムを決めていきました。私のクラスはアメリカン大学から入学したJDP生が受講するので、立命館大学の紹介や、日本の文化や制度について授業に取り入れる工夫をしました。授業が始まって気が付いたのですが、最初はクラスメート同士、ちょっと距離があったんです。だからピザパーティーなどの交流会を企画して、お互いが近づけるようにサポートしました。結果、皆、授業にまじめに取り組んでくれたので、嬉しかったですね。

キャンパスの内外で、様々な活動を体験した稲田さん。アメリカン大学の2年間でどのような成長があったのでしょうか?

稲田政治の中心というワシントンD.C.の土地柄もあるのか、政治に関しては皆とてもセンシティブ。政治以外でも、様々なトピックで、敏感な人たちが多かったので、多様な意見を聞けることは大変貴重でした。移民問題であっても、ジェンダー平等であっても、ずっと私はダイバーシティや寛容性を大事にすべきだと思っていましたが、中には否定的な考えの人もいます。でも、よく話を聞いてみると、「それも一理あるな。」と思うこともあり、視点を広げることができました。ポジティブで行くことも大事だけれど、それ一辺倒だと理想論で終わってしまうので、現実的に考えることも大事だと気付いたんです。深いディスカッションを重ねて、視野を広げたことは自分の成長につながったと思っています。

Ambassador's Youth Council(AYC)への参加

アメリカン大学での2年間を終え、学生としても、一人の人間としても、大きく成長して帰国した稲田さんですが、帰国後にどうしても参加したいプログラムがありました。在日米国大使館・領事館が主導するグローバルリーダー育成プログラムAmbassador's Youth Council(AYC)です。稲田さんはJDPでの経験をアピールし、高い競争率の中、見事に第6期生に選ばれました!

稲田過去、AYCに参加したJDPの先輩から勧められて、ずっと参加したいと思っていました。今回、第6期生に選んでいただき大変光栄です。AYCの魅力は、興味あるトピックについて毎月ディスカッションができること。各分野の専門家と直接話せる機会があり、授業では得られない実践的な知識など、色々なスキルをつける絶好のチャンスだと思いました。例えば、初回の会合では、在京アメリカ大使館に赴任している海軍武官(navy attaché)と日米安全保障について意見交換しましたが、安全保障に深い関心があるので、とても楽しかったです!

(写真は在大阪・神戸米国総領事館提供)

「安全保障×言語」で日米の懸け橋に

安全保障分野に興味のある稲田さんですが、もうひとつ、ライフワークとして言語教育に携わりたいという夢があります。稲田さんは、今、そのスキルと情熱を活かせるピッタリの仕事を見つけたそうです。

稲田実は私、防衛政策や安全保障に興味があり、日米の安全保障分野の懸け橋になるのが夢です。そのために、米国防省からの委託で、米国政府関係者に言語教育を行う企業があるのですが、そこに就職し、現地で日本語教師として働くことを目指しています。

以前から、言語教育に興味があり、プライベートで英語を教えていました。今、アルバイトで大人向けのコースで英語を教えているのですが、受講生の職業は様々です。アメリカ人と交流する機会が多い職業の生徒は結構いらっしゃり、英語で喋られず悔しい思いをされることが多いみたいです。同様に、米軍と自衛隊が合同訓練を実施する際、どうしても言葉の壁がある、ということをAYCのディスカッションにてnavy attachéの方から伺いました。言語の壁がなくなったら、両国の友好関係がより発展すると思います。私がその一助になれれば、とてもうれしいですね。

稲田私は教えることが大好きで、「言語って楽しい!」といつも感じてきたから、これからも続けていきたい。JDPでの学びを最大限に活かして、「安全保障×言語」の分野でエキスパートになれるよう、これからも努力していくつもりです。

小学生の頃から、英語圏で生活する、海外生活するのが夢だったので、将来は、アメリカで働きたいと思っています。アメリカは自由でチャンスが多い。自分のバックグラウンドを活かせるニーズがたくさんあるのが魅力的だなって思います。あと、私は話好きなので、知らない人同士でもおしゃべりする、スーパーの店員さんが話し込んでくれるようなアメリカの文化が好きです。そういう意味でも、アメリカは自分にとって暮らしやすい環境です。

グローバル人材への夢 「私ができたんだから、皆さんもできます!」

最後に、後輩たちへメッセージをお願いします。

稲田日本とアメリカで2年ずつ学べるJDPの特徴を最大限に活かして、それぞれの場所でできることはすべてチャレンジしてほしいです。立命館での最初の1年半は、アメリカン大学での学び備えるために、勉強を怠らないでください。例えば、1回生の時に履修したAcademic Skillsでは、基礎的な能力を身につけるために重要な科目で、アメリカの授業でも役立つ内容を日本でも学べるって、本当にスゴイと思いました。ワシントンD.C.は、世界の政治の中心都市という絶好のロケーションなので、様々な課外活動やインターンシップの機会があります。授業だけでなく、そのような機会をどんどん活用してください。

今はネイティブのように流ちょうな英語を話す稲田さん。数年前は、海外経験豊富ではなかった普通科の高校生だったとは今の姿から想像できないでしょう。やる気があれば、誰でもグローバル人材になれることを証明してくれました。JDPで修得したグローバル国際関係学の専門性と、言語への情熱を存分に活かして、日米の懸け橋として活躍できるよう、心より応援しています!

2025年2月更新

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