仲間とともに学び合うことで、能動的な学びへ転換しよう。 仲間とともに学び合うことで、能動的な学びへ転換しよう。

仲間とともに学び合うことで、
能動的な学びへ転換しよう。

レポートや論文を作成するとき。文献や論文の見つけ方、また読むべき量について、みなさんはどうしていますか? 論文はいったいどこを探せばいいのでしょうか。レポートや論文を作成する上で外せない「情報」について、谷口先生にヒントとアドバイスを伺いました。

「AI(人工知能)×ロボティクス」をテーマに研究しています

AI(人工知能)は、知的な行動やふるまいをコンピュータで実現するものです。ではここでいう「知的さ」とはどのようなものでしょうか。人間は、生まれた時には一人で起き上がることもできませんが、やがて誰に教わるともなくハイハイするようになり、親の言葉を覚え、意味を理解し、社会生活を営めるようになっていきます。私が実現したいのは、そうした認知発達のプロセスそのものです。行動の一つひとつをプログラミングするのではなく、人間のように自らの経験から学び、発達していく。そんなロボットを実現したいと思っています。

あらゆる分野に関心を持ち続けることで広がる研究の可能性

私の強みは、人文社会系の文献も数多く読んでいることです。私たちが「記号創発ロボティクス」と呼ぶこのアプローチは、ロボティクス分野はもちろん、それ以上に人文社会系分野の知識が欠かせません。人間の言語理解やコミュニケーション能力も発達段階に応じて進化していくもので、それを無視して言語だけに注目しても、本質を理解することはできないからです。

先生の研究分野での論文の見つけ方

論文や学術ジャーナルはいくつかの学術関連のデータベースで調べて入手しています。よく検索に使うのは、Google Scholarです。データベースでとりわけ活用頻度が高いのは、IEEE XploreELSEVIER。IEEE XploreではIEEEの数多くの学会で発表された最新の論文を読めるので役立っています。計算機科学の国際学会ACM(Association for Computing Machinery)で発表された論文もよく読みますね。近年、AIや機械学習に関する学会や国際会議の情報はすべて公開され、自由に閲覧できるのが時流ですが、arXivでは発表前の論文(プレプリント)で最新の研究成果を知ることができるので、よく活用します。

図書館からの
アドバイス

データベースの使い方、本の探し方について、いつでもどこからでも視聴できます。調べ方が不安な方はレポート執筆前に必ず視聴しておきましょう(RAINBOWのIDが必要です)。

オンデマンドガイダンス

論文執筆のためのアドバイス

Readingからはじめよう。読むことは書くための基本。

とにかくまず論文を読みましょう。この一言に尽きます。文献を読むことは、学問の基礎です。基礎をおろそかにして、プログラミングやロボットへの実装といったアウトプットに偏ると、良い研究はできません。論文を読むことには、基礎知識を身につけることに加えて、論文の書き方を学ぶという意味もあります。まず最低30本の論文を読みましょう。その中で自分の琴線に触れるテーマを見つけたら、それを軸に関連分野の論文を調べていきます。学ぶとは、「真似る」こと。良い論文を知らずに良い論文は書けません。

論文やレポートを執筆する上でのアドバイス

「アカデミック・ライティング」の定石に則って書きましょう。論文は、小説や作文とは違います。例えば「段落」は「意味のまとまり」を表すものであり、一段落には必ず一つの主張を明示する必要があります。これをパラグラフ・ライティングと言います。また主張は、段落の冒頭に明記すること。言いたいことを最後に書くと、論点が不明瞭になってしまいます。さらにエビデンスや引用・参考文献を示すことも重要です。参考になるのは、ディベートによく用いられる“AREA”という手法です。“Assertion(主張)”、“Reasoning(理由)”、“Example(例)”、 “Assertion(主張)”の頭文字をとったもので、「主張」、その「理由・根拠」、それを端的に表す「事例」、最後にもう一度「主張」の順に話すと相手によく伝わります。論文を作成する際にも、これを意識してみましょう。

図書館からの
アドバイス

図書館では「本の読み方講座」「レポートの書き方講座」などをオンデマンドで配信しています。ぜひ活用してください。

図書館×SSP連携講座

谷口ゼミ、ここがポイント!

ゼミではできるだけ教員(私)の介入を減らし、学生同士で話し合うことを重視しています。残念ながらコロナ禍の現在は少し止まっているのですが、学生だけの勉強会を設けてゼミを運営してきています。学生自身にテキストを提案してもらい、自主的に勉強する機会をつくっていました。教員の説明を聞くのではなく、自ら書かれた内容を説明すると、自分がそれを理解しているかどうかを把握できるし、聞く方も話し手がその本のどこに関心を持っているのかがわかります。

「ビブリオバトル」の目的とも重なること

「人を通して本を知る、本を通して人を知る」がビブリオバトル(本の紹介を通したコミュニケーションゲーム、谷口先生が創設者)の目的です。相手が選んだ書籍の情報に加えて、その人がどんな人なのか、何に関心があるのかなど、互いの理解を深めることができます。このように、教員の話を聞くといった受動的な学びから能動的な学びに転換するという意味でも、自主的に学びあう勉強会は重要だと考えています。

「知りたい」という気持ちを忘れない

人と人とのつき合いの中では、疑問やわからないことを「まあ、いいやん」などとその場の空気を読んで議論をうやむやに終わらせてしまうことが少なくありません。しかし学問の出発点は、「わからないことは気持ちが悪い」という気持ちのはず。だから「知りたい」という気持ちを絶対に忘れてはならないと常々ゼミ生には指導しています。

新学期を迎える学生のみなさんにメッセージ

コロナ禍といわれる中、大学の講義自体はオンラインでも受けることができます。しかし新しい友人と出会い、サークル活動やアルバイトで多くの人と交流するといった、リアルな青春を謳歌することはままならなくなりました。これは大変に厳しいことです。でももはや仕方がありません。そのような時代に大学生をしているという運命を受け入れて、この時代ならではの青春を再構築し、withコロナの楽しみ方を見つけていって貰えればと思います。君たちの青春をつくれるのは、他でもなく君たち自身なのですから。

谷口先生の一日

6:30
起床
お風呂、朝ご飯
8:00
コーヒー、身支度
9:00
授業(Zoom)
合間に、打ち合わせ(オンライン)や昼食
13:00
授業(Zoom)
合間に、プロジェクトのミーティングやメールなどの処理
16:00
隙間時間に、論文記事や気になる書籍に目を通す
19:00
オンラインでの打ち合わせや学内業務終了
夕食、読書
21:00
就寝(オンラインでの打ち合わせが続くこともしばしば。そのまま寝てしまうことも)

谷口 忠大

情報理工学部 教授

研究テーマ
記号創発ロボティクスと人間のコミュニケーション理解
専門分野
人工知能、知能ロボティクス、認知科学、機械学習
おすすめの本
隷属の道」F.A. ハイエク 著、西山 千明 訳 春秋社(1992)
おすすめのアニメ
「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」サンライズ(1991)
著書
イラストで学ぶ人工知能概論 改訂第2版」講談社(2020)
賀茂川コミュニケーション塾-ビブリオバトルから人工知能まで」世界思想社(2019)