高校生の皆さまへ

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矢野先生からのメッセージ

立命館大学の考古学・文化遺産専攻は、学部生100人以上、大学院生10人以上の大所帯です。男女比はほぼ半々です。学生は日本全国各地からやってきます。3回生から4つのゼミに分かれますが、同じ共同研究室で、ゼミを越えた交友関係が継続します。卒業生も全国各地で活躍しているので、各地の博物館などで卒業生と出会う機会も多くあります。立命館大学は、幅広い地域や時代にわたって考古学や文化遺産を専門的に学ぶことができる点、充実した教育・研究環境にあります。ここでは、何万年も昔の遠い過去から今生きている現在にいたる道筋を考古学的視点から見通すことができます。遠い未来を見通すために、共に考古学を学び、新しい歴史を発見しましょう。

私のおすすめ図書

矢野健一 教授

E.S.モース著近藤義郎・佐原真編訳1983『大森貝塚付関連資料』岩波文庫、500円+税

1877年にモースが大森貝塚を発掘したことは知っている人も多いと思います。モースは大森貝塚を偶然、発見したのではありません。船で横浜に到着した2日後、汽車で新橋に向かう途中、貝塚を見つけようと車窓をながめていて、大森貝塚を発見したのです。貝塚が初めて発掘されたのは1840年代のデンマークで、2番目は1860年代のアメリカです。アメリカでの貝塚発掘を熟知していたモースは世界で3番目となる貝塚発掘を実施し、素晴らしい報告書を刊行しました。今では間違いだと判断できる記載もありますが、図や文章はたいへんわかりやすく、科学者としてのモースの考え方や人柄をよく理解できます。解説もたいへん充実しています。

長友朋子 教授

サリー・グリーン著、近藤義郎・山口晋子訳1987年『考古学の変革者』岩波書店、2700円

ゴードン・チャイルドは「考古学の父」ともいわれ、遺跡や遺物からヨーロッパ全体を見渡して体系的に先史時代の歴史として編み上げた初めての考古学者として高く評価されています。この本は、ゴードン・チャイルドが書いた歴史書ではなく、ゴードン・チャイルドの生涯をたどることによって、どのように思考し研究を積み重ねていったのかを現した本です。考古学に興味のある皆さん、是非手に取って読んでみてください。

木立雅朗 教授

梅林秀行2016・2017『京都の凸凹を歩く』1・2(青幻舎) 各1600円+税

「京都高低差崖会崖長」という肩書をもつ梅林秀行さんは「ブラタモリ」に何度も出演して有名な方です。考古学の本ではありませんが、京都の遺跡や寺社の地形と歴史の関係について、とても面白く解説してくれています。考古学にとって、彼の視点で現地を歩くことはとても大切なことです。この本を参考に京都の史跡を歩いてください。立命館大学衣笠キャンパスから近い、御土居跡や聚楽第跡(1冊目)、金閣寺や嵐山(2冊名)などは、立命館の在学生にぜひ読んで欲しい内容です。

寒川旭2011『地震の考古学 大地は何を語るのか 増補版』中公新書(写真は初版) 820円+税

地震研究者の寒川旭さんが、発掘現場を丹念に調査研究した地震考古学の良書です。寒川さんが最初に書かれた、寒川旭1992『地震考古学 遺跡が語る地震の歴史』(中公新書)が基礎的なことも解説してくれていますが、残念ながら品切れです。関心があれば、図書館などで確認してください。ここ最近、地震が増えてきています。近い将来、東南海大震災がやってくると言われていますが、その理由や歴史を遺跡の痕跡から説き起こしてくれています。考古学研究にとっても重要ですが、なによりも、これからも日本列島で暮らしてゆく上で、命に関わる情報が数多く含まれています。なお、命に関わるという意味では、磯田道史2020『感染症の日本史』(文藝春秋、新書。800円+税)も、ウイズ・コロナの社会を生きてゆく上で大切な情報を提供してくれます。考古学や歴史学にとっても、災害や感染症は大切な研究テーマです。

岡寺良 准教授

中井均著1997『近江の城―城が語る湖国の戦国史―』サンライズ出版、1,200円+税

中井均著1997『近江の城―城が語る湖国の戦国史―』サンライズ出版、1,200円+税

中世山城の置かれた歴史・立地・構造(縄張り構造)から語られた近江地域の戦国時代を紹介したものです。山城という遺跡を考古学的に解明することによって、何が明らかになるのか、どのような歴史像を描くことができるのかについて、長年近江の戦国城郭を研究してきた中井均氏(滋賀県立大学名誉教授)によって著されています。
本書の特徴は、個々の城郭を紹介するばかりではなく、そこからどのような地域史を描くことができるのかという点にあり、一般読者向けて分かりやすく書かれています。九州の事例では、岡寺2022『九州戦国城郭史 大名・国衆たちの築城記』(吉川弘文館・歴史文化ライブラリー)もありますので、こちらも併せて一読をお勧めします。

濱田耕作1922『通論考古學』大鐙閣(雄山閣・岩波文庫から復刻あり)900円+税(岩波文庫)

濱田耕作1922『通論考古學』大鐙閣(雄山閣・岩波文庫から復刻あり)900円+税(岩波文庫)

濱田耕作(青陵)は、日本で初めて考古学講座が置かれた京都帝国大学考古学研究室の初代教授でした。濱田はこの書の中で「考古学は過去人類の物質的遺物(に拠り人類の過去)を研究するの学なり」として初めて考古学を定義するとともに、考古資料の性格と種類や調査研究法など、当時最先端のヨーロッパの研究法を取り入れた内容にふれ、今日の考古学研究の礎となっています。また考古学の調査研究のみならず、博物館にも言及しており、博物館を単なる収蔵庫(倉庫・陳列所)ではなく、遺物を保存し、「学術研究の目的と社会教育に資するを旨とす」とあり、今日の日本の博物館の在り方にも大きな影響を与えました。やや文語調で読みにくいところもありますが、考古学を志そうという人にはぜひ一読をお勧めします。