カリキュラム
哲学・倫理学専攻は、教育人間学専攻と合同で「人間研究学域」を構成しており、学生募集(入試)も専攻別ではなく、この学域という単位で実施されています。
人間研究学域への入学者は、1回生時にはまずこの学域に所属し、哲学・倫理学専攻と教育人間学専攻について、両方の基礎的な科目を学びます。人間研究学域の学生が哲学・倫理学専攻(もしくは教育人間学専攻)に分属するのは2回生以降となりますので、以下では1回生時と2回生以降の2部に分けて、哲学・倫理学専攻が開講している専門科目を中心に、カリキュラムを紹介します。
1回生時のカリキュラム
1回生時は、上記のとおり、哲学・倫理学専攻と教育人間学専攻の両方についての基礎的な科目が学びの中心となります。このうち、哲学・倫理学専攻が開講する1回生以上配当の(1回生時から受講可能な)専門科目としては、以下が挙げられます。
哲学概論I | 哲学の根本問題、原理、枠組、方法、分野などに関する基本的知識を獲得し、哲学への導入をより確かなものにすることを目的とした、初学者向けの概論講義です。この科目では、とりわけ西洋哲学史における「自己」と「主体」の哲学を学ぶことにより、基礎的な哲学史的知識の獲得や問題意識の醸成を目指します。 |
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哲学概論II | 哲学概論Iと同じ目的を共有する初学者向けの概論講義科目です。両科目を履修することで哲学の全体像の概略を把握できます。この科目では、とりわけ「存在」「知」「言語」「時間」など哲学の主要問題を学ぶことにより、基礎的な哲学史的知識の獲得や問題意識の醸成を目指します。 |
倫理学概論I | 倫理学の根本問題、原理、枠組、方法、分野などに関する基本的知識を獲得し、倫理学への導入をより確かなものにすることを目的とした、初学者向けの概論講義です。この科目では、倫理学の中でも特に古典的・原理的問題を考察の軸に据えることにより、倫理学の基礎知識の獲得や問題意識の醸成を目指します。 |
倫理学概論II | 倫理学概論Iと同じ目的を共有する初学者向けの概論講義です。両科目を履修することで倫理学の全体像の概略を把握できます。この科目では、倫理学の中でも特に現代的・応用的問題を考察の軸に据えることにより、倫理学の基礎知識の獲得や問題意識の醸成を目指します。 |
研究入門I/II※ | 人間研究学域の2つの専攻の初歩的な研究方法を身につけることを目的とした科目です。年間のうち半期が哲学・倫理学専攻分に割り当てられています。哲学・倫理学専攻分では、哲学・倫理学文献の読解に基づく研究発表、レポート作成、討論を中心とした演習形式の授業を実施し、哲学・倫理学研究への導入を図ります。 |
人間研究入門講義※ | 哲学・倫理学および教育人間学とはどのような学問であるのかについて、13のテーマを精選し、学域所属の専任教員がリレー形式で講義します。両専攻の学問全般について広く興味を持ってもらうとともに、2回生進級時の専攻分属に向けて、各自の興味関心の所在を自覚してもらうことを目的としています。 |
※は、人間研究学域の履修指定科目(所定の学年に必ず履修しなければならない科目)です。
なお、哲学・倫理学専攻での学びと関係する専門科目は、上記以外にも、文学部内の人文学共通科目(学域・専攻の壁を超えた専門科目群)として開講されています。このうち、「宗教学」「仏教論」「キリスト教思想」「ギリシア語I/II」「ラテン語I/II」が1回生以上配当科目ですから、哲学・倫理学専攻への分属希望者には積極的な履修が推奨されます。
それに加えて、1回生時には専門科目だけでなく、教養科目と外国語科目の学習も重要です(卒業のためには、専門科目以外にも、教養科目24単位以上、第1外国語8単位、第2外国語6単位の修得が必須となります)。教養科目の中には哲学・倫理学関係の科目も多数含まれており(「哲学と人間」「人間性と倫理」「論理と思考」「科学技術と倫理」「生命科学と倫理」など)、またそれらの科目のほとんどは、哲学・倫理学専攻の専任教員が専門科目とは別に授業を担当しています。概論科目とはまた違った視点から哲学・倫理学を学ぶきっかけになりますので、哲学・倫理学専攻への分属希望者には積極的な履修が推奨されます。
2回生以降のカリキュラム
哲学・倫理学専攻では、各自の興味関心に即した系統的な学びを可能にするために、「哲学・現代思想コース」と「倫理学・応用倫理コース」の2コースを設定しています。
哲学・現代思想コース | 哲学史(古代ギリシア、近代哲学など)や現代哲学(現象学、現代思想など)を系統的に学ぶことができます。 |
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倫理学・応用倫理コース | 倫理学の歴史や原理的問題(道徳の根拠や普遍性の問題、倫理理論、正義論など)、応用倫理学(生命倫理、環境倫理、スポーツ倫理など)を系統的に学ぶことができます。 |
哲学・倫理学専攻では、基本的にはこれら2コースに即して、基礎講読や専門演習といった小集団クラス科目や、さまざまな講義科目・講読科目が設定されていますので、2回生以降はいずれかのコースを軸とした学びを進めていきます。ただし、どちらのコースを選ぶにせよ、小集団クラス科目を除けば、もう一方のコースの科目もかなり自由に履修可能ですから、系統性を維持しつつも多様な科目を幅広く履修することで、自らの研究をより豊かに膨らませていくことが推奨されます。
哲学・倫理学専攻の2回生以上配当専門科目としては、以下が挙げられます。
哲学概論III | 1回生配当の「哲学概論I/II」をうけて、より高度なレベルで哲学一般について論じる中級者向けの概論科目です。主としてルネサンス以降、デカルト、カント、フィヒテ、ヘーゲルを経てニーチェ、フロイトにいたるまでの近代哲学の展開の中で、どのようなことが哲学の問題とされてきたか(または問題とされずにきたか)を検討します。 |
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哲学史I~VI | 哲学史を学ぶ講義科目です。古代ギリシア哲学、中世哲学、西洋近代哲学(カント以前/カントとドイツ観念論)、20世紀フランス哲学、20世紀ドイツ哲学など、番号に応じて取り扱う内容が異なります。 |
倫理理想史I/II | 倫理思想史を学ぶ講義科目です。古代ギリシアから現代に至るまでの倫理思想の中から特定のテーマを設定することにより、倫理思想史の主要学説の全体像をつかむことを目的としています。 |
応用倫理I/II | 生命倫理、環境倫理、スポーツ倫理などの応用倫理の問題を取り扱う講義科目です。哲学・倫理学研究が具体的な応用倫理の議論の中でどんな役割を果たすのか、その射程と限界の考察を目指しています。 |
身体論 | 身体の問題を手がかりとして、精神や理性に偏重するきらいのあった哲学史の諸問題を批判的に考察する講義科目です。身体の問題から哲学の根本問題を考察することを目的としています。 |
現象学 | フッサールやハイデガーを中心とした現象学についての講義科目です。現象学の成立基盤、論理、経験、意識、志向性、世界、言語、時間、自我、他者、身体といった問題の考察を手がかりとして現象学の基礎を知るとともに、現象学的に「問う」姿勢の習得を目指します。 |
正義論 | 政治哲学のなかでも社会正義論を中心に取り扱う講義科目です。リベラル平等主義、リバタリアニズム、多文化主義などの代表的理論を概観し、その対立軸がどこにあるのか、現代社会が直面する様々な問題とそれがどのように絡み合うのかを考察します。 |
哲学特殊講義 | 担当教員自身の研究をもとに、哲学分野における最新の研究を提供する講義科目です。過年度のテーマとしては、理性と自由の現象学、意識論の諸問題、社会についての現象学的考察、言語・自我・他者、ニーチェとハイデガーの視点から見た哲学史、『啓蒙と弁証法』の研究など。 |
現代哲学特殊講義 | 担当教員自身の研究をもとに、現代哲学分野における最新の研究を提供する講義科目です。過年度のテーマとしては、フッサールの時間論、西田幾多郎と西洋哲学、アドルノの「非同一的なもの」の思想、超越論的哲学としての現象学、デリダの脱構築の思想など。 |
倫理学特殊講義 | 担当教員自身の研究をもとに、倫理学全般に関する最新の研究を提供する講義科目です。過年度のテーマとしては、動物倫理からの倫理学、政治倫理と公共政策、ロボット倫理、分析的政治哲学、ニーチェ『道徳の系譜学』研究、Why be Moral問題、ケアの倫理など。 |
哲学・倫理学外書講読※1 | 哲学・倫理学の古典を原典で紐解くことにより、哲学者・倫理学者の思想に直接触れることを可能にする講読科目です。英書講読、独書講読、仏書講読がそれぞれ開講されています。過年度のテキストとしては、フィリッパ・フット、オノラ・オニール、ライプニッツ、フッサールとブレンターノ、ジャック・デリダ、メルロ=ポンティなど。 |
哲学・倫理学文献講読※1 | 哲学・倫理学の古典を邦訳書で紐解くことにより、哲学者・倫理学者の思想に直接触れることを可能にする講読科目です。例年複数クラスが開講されています。過年度のテキストとしては、ギリガン、レヴィナス、フッサール、ハイデガー、カント、アダム・スミス、ヒュームなど。 |
基礎講読I/II※2 | 哲学・倫理学研究の基礎的能力の習得を目的とした演習科目であり、コース別に2~3クラス開講されます。哲学・倫理学文献の読解を基礎に、受講者による研究発表や討論を実施することにより、各自の問題関心の見定めや論文執筆能力の習得を目指します。 |
専門演習I~IV※1※3 | 卒業論文の作成を目指した研究指導の科目です(いわゆる「ゼミ」)。3回生は文献の講読に基づく研究発表などを、4回生は卒業論文の中間発表を実施し、全体で討論します。 |
卒業論文※1 | 大学での学びの集大成として、本文12000字以上20000字以下の論文を執筆し、査読と口頭試問を受けます。 |
※1は必修科目(卒業のためには必ず所定の単位数を取得しなければならない科目)です。
※2は2回生時の履修指定科目、※3は3回生時の履修指定科目です(4回生時の専門演習は必修科目(=※1)です)。
なお、1回生時のカリキュラムでも言及したように、哲学・倫理学専攻での学びと関係する専門科目は上記以外にも、文学部内の人文学共通科目(学域・専攻の壁を超えた専門科目群)として開講されています。このうち、「論理と言語I/II」「ドイツ現代思想」「フランス現代思想」が2回生以上配当科目ですから、哲学・倫理学専攻の学生には積極的な履修が推奨されます。
哲学・倫理学専攻のカリキュラムの特色
最後に、哲学・倫理学専攻のカリキュラムの特色は、以下の2点に要約されます。
4年間にわたる小集団授業を通じた、哲学・倫理学の研究能力の涵養
哲学・倫理学は基本的に文献の読解を介した学問であり、また哲学書・倫理学書はおしなべて難解です。そのため、どのような哲学・倫理学を研究テーマとして選ぶにせよ、その研究をしっかりと進めていくためには、いかなる哲学書・倫理学書をも読み解いていくだけの能力を身につける必要があります。
哲学・倫理学専攻では、1回生時の「研究入門」、2回生時の「基礎講読」の授業の中心を文献読解に据えることにより、哲学・倫理学の基礎的な文献に親しむところから始めて、より高度な文献を読み解いていくための能力を徐々に養います。それらの経験を踏まえて、3・4回生時の「専門演習」(ゼミ)では、とりわけ学生各人が自らの関心に即して適切な文献を選択し、またそれを的確に読み解けるよう、個別に指導します。これらの授業はいずれも小集団授業として実施されますので、学生各人の個別の能力や関心の相違に応じた、きめ細やかな指導が可能となります。
2コースを軸とした科目配置により、系統的な学びを保証
哲学・倫理学専攻では、「哲学・現代思想コース」と「倫理学・応用倫理コース」という2コースを軸とした、系統的な学びを可能にする科目配置がなされています。具体的には、
- 講義系の科目では、哲学・現代思想関連科目と倫理学・応用倫理関連科目のそれぞれを、およそバランスよく開講しています。
- 2回生時の履修指定科目である「基礎講読」や、本専攻の必修科目である「哲学・倫理学外書講読」や「哲学・倫理学文献講読」でも、およそこの2コースの区分に対応する形で複数のクラスを毎年開講し、哲学・現代思想関連の講読演習と倫理学・応用倫理関連の講読演習を、各々実施しています。
- 3回生以降の「専門演習」(ゼミ)においても、各専任教員の専門研究領域に即しつつ、この2コースの区分をなおいっそう細分化する形で、複数のゼミを開講しています。具体的には、①ドイツ哲学・現代思想を主軸とするゼミ、②フランス哲学・現代思想を主軸とするゼミ、③英米の近現代哲学・思想を主軸とするゼミ、④古典的な倫理学・倫理思想を主軸とするゼミ、⑤現代倫理学・応用倫理学・政治哲学を主軸とするゼミが例年開講されており、学生のニーズに幅広く対応可能な教学体制を整備しています。