• 2022/10/14
  • 神経細胞の活動から個人の価値判断を予測する 〜プロスペクト理論が脳で実現される仕組みをサルで解明〜
  • 立命館大学広報課
  •  伝統的な経済学では、ヒトは合理的な判断に基づき行動することが前提となっています。しかし、実際のヒトの行動はそうではありません。例えば、宝くじの1等の当選確率は極めて低いのに、当たるかもしれないと思ってつい買ってしまいがちです。また、1万円持っていて2万円を得るのも、100万円を持っていて2万円を得るのも、利得は同じ2万円なのに、1万円から増えた2万円の方が大きな価値があるように感じます。このように、価値の主観的な感じ方は客観値からずれることが多いのです。
     経済行動に関するヒトの主観を普遍的に説明するのが経済学のプロスペクト理論です。ノーベル経済学賞を受賞したこの理論の一部は、確率加重関数と価値関数から成り立っています。確率加重関数は宝くじの例のように確率判断が主観的に歪むことを示し、価値関数は金銭の価値が主観的に歪み、金額に正確には比例しないことを示します。この二つの関数の組み合わせでヒトの行動を説明します。
     本研究では、美味しいジュースを得るためのギャンブルをするように訓練した実験動物のサルを用い、脳の「報酬系」と呼ばれる諸領域の神経細胞活動を測定しました。報酬系はギャンブルに関わる脳の領域で、その中でも眼の直上に位置する前頭眼窩野や脳の中央に位置する線条体に含まれる神経細胞の多くは、ジュースが当たる客観的な確率やもらえるジュースの客観的な量ではなく、プロスペクト理論によって予測されるサルの主観に応じてその活動を変えることが分かりました。そして、報酬系の諸領域に観察された神経細胞の活動パターンを数学的に組み合わせる(線形加算する)と、プロスペクト理論が予測するサルの主観(主観的な利得、主観的な確率)が再現されました。

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