この問題、あなたならどうする?

根付いてしまったマイナスイメージ、払拭するにはどうすればいい?

同じ商品でもパッケージのデザインを変更しただけでヒット商品になった、という話を聞いたことがありますか?マイナスイメージをプラスに変えるための「イメージ戦略」「ブランディング手法」について,福島の放射能汚染問題と福島の農業を通したまちづくりの事例から考えてみましょう。

問題背景
2011年に発生した東日本大震災では、家屋の倒壊に加え、放射能による土壌の汚染問題が発生し、農作物へ対するイメージが悪化しました。目に見えない放射能による食への嫌悪感や不安感、恐怖感は日々過熱するテレビや新聞、SNSなどでの報道により、より一層大きくなったと考えられます。特に「福島で採れた野菜は汚染されている」という印象によって福島産の物は買わないといった不買運動が起こり、食への負のイメージの払拭が急務になりました。現在でも処理水の排出問題などが報道されるたび、農業・漁業を含め食への関心は高くなっています。

食べる/食べないは個人の選択ですが、それらが科学的知識の欠如や同調性バイアス、リスク認知やリスクコミュニケーション(情報伝達)が正しくなされていないことから発生しているのであれば改善しなければならないと思います。

[この問題]⑥負のイメージ写真01
思考のヒント
SNSやテレビ、新聞、雑誌などで見聞きしたことは、「本当に事実なのだろうか?」と考えたことはありますか?どうやったら事実を知ることができるのだろうか?事実は何処にあるのだろうか?とそれぞれが考えることが、デマや風評被害を減らす第一歩になるのではないでしょうか。
政策科学部での学び
私たちの研究室では、震災発生後から実際に福島の農家を訪ね、農家が主体となって運営している農家民宿での取り組みを調査してきました。この地域では、放射能汚染問題によって負った農作物への嫌悪感を削減するため、大手旅行代理店と提携し、農業体験ボランティアツアーや震災スタディーツアーを企画、運営することによって、若者や震災被害に関心を持つ人々に対し、福島の食物は安全である、というイメージの転換を図っています。また、ツアー参加者も「自分で経験した」ことによって、福島の豊かさ、たくましさを知り、イメージを一新させています。加えて、生業と震災教育をあわせた観光体験を通して関係人口注)の増加と土壌汚染への理解を深めることに繋がり、一定の成果を上げていることが分かってきました。自身の目で見て確かめる、という求心と事実を把握するスキルを政策科学部では身につけることができます。

注)特定の地域に継続的に多様な形でかかわる人のこと。祭りやイベントの運営に参加する、地域の特産品を購入する、寄附をする、頻繁な訪問をおこなうなど。定住人口でも交流人口でもない。

[この問題]⑥負のイメージ写真02

執筆者紹介

山出 美弥 准教授
YAMADE Miya

専⾨分野:都市計画、まちづくり、コミュニティ・デザイン
学系:環境開発系

教員紹介