学部概要
学部長あいさつ
立命館大学 政策科学部長吉田 友彦

いま日本では、人口が減少し、空き家が増えていると言われます。空き家問題は高齢化が進んで住まいの大きさが家族構成に合わなくなってくるという物的な問題である一方、相続がうまく進まず不明な所有者が増えるといった法律上の問題でもあり、さらには、流通させて効率的な土地利用を促すべきものといった経済問題でもあります。つまり空き家問題は一つではなく、空間、法律、経済の各側面からXYZ軸のように、立体的に観察する必要があるのです。政策科学が「環境開発」、「公共政策」、「社会マネジメント」の3つの側面を総合的に捉えて、実践的に問題解決を志向する学問と言われるゆえんです。
立命館大学政策科学部は全国の政策系学部の中でも最も早い時期の1994年に設立されました。設立当初、いくつもの専門分野の集まりではなく、1つの新しい「政策科学」を目指そうという高い理想を掲げつつ、共通した理論的枠組みは何か?ということが教授会でよく議論されました。この議論においては、平和と民主主義、人権、地球環境保全といった人類の普遍的価値が基軸になるべき、そして高い政策立案能力を有する市民社会が形成されるべき、という理想の社会像が描かれました。
このような政策科学部も、2024年で30周年を迎えました。30年と言えば親と子の年齢の差ぐらいありますから、世代継承という点で新たな段階に入ったと言えるでしょう。
現代社会にはどのような問題があるでしょうか?近年の世界での戦争や紛争を思い起こせば、「平和と民主主義」が依然として重要な国際的問題であることは自明です。日本の特定の業界にあるジェンダー格差や経済格差のような、潜在・顕在するハラスメントや不平等を考えるとき、「人権」の問題が解決されたと楽観的に言い切ることもできません。さらに、気候変動による山火事や水害などの自然災害、廃棄物処理、農村の農業環境、そして冒頭の都市の空き家問題などを考えれば、「環境保全」といった普遍的価値はいまも変わりません。このような中、SNSの普及による地方政治の変質、GAFAMなどプラットフォーマーズやAIの台頭、少子高齢化による地域的な人口減少など、公共部門と民間部門が連携して対応を目指さなければならない大きな社会的変化は次から次へと姿を変えて浮かび上がってきています。「政策科学」の意義は薄れるどころか、ますます重要性を増しているのです。
本学の政策科学部では、世界の学術界で活躍する諸分野の著名な先生方が結集し、公民連携によって問題を解決することを目指しつつ、日々新たな社会課題に挑み続けておられます。大阪いばらきキャンパスという恵まれた立地の中で、柔らかな探究心と新鮮なアイディアを持つ皆さんと一緒に学び合う日が来ることを楽しみにしております。
