この問題、あなたならどうする?

約束の時間にいつも遅れてくる友人。どう対応すればいいですか?

皆さんは日常生活の中で、周りの人の行動やことば遣いについて自分との違いを感じてモヤモヤした気持ちを持った経験はないでしょうか。性格の不一致だと思っていたら、実は生まれ育った「文化」が影響を与えていることがあります。誤解を防ぐ鍵、それは「異文化間コミュニケーション」です。

問題背景
「ゴムの時間(ジャム・カレット)」という表現を聞いたことがありますか。インドネシア語なのですが、時間は「ゴム」のように伸び縮みするもので、約束や予定の時間に対する柔軟な態度を示すことばです。インドネシアに住んでいた頃、友人が何度も待ち合わせ時間に現れず戸惑ったり、結婚式で新郎新婦が30分経っても入場してこないことに驚いたことがあります。「ゴムの時間」は、文化により時間の捉え方も異なることを示しています。

上記のような「異文化」の人々とのコミュニケーションは、海外生活に限りません。今、日本社会では、ビジネスや留学など様々な目的を持って来日する外国籍の人々が増えており、学校教育や病院・福祉の現場などでも異なる文化を持つ人々とのコミュニケーションが拡がりをみせています。また、もう一つ重要な点があります。文化と文化の境界をつくるのは「国籍」だけではなく、日本の中にも、地域や世代などにより異なる特徴を持つ多様な文化が存在しているということです。

そのような「異文化」を持つ人々と出会い対話する際、習慣やコミュニケーションの仕方の違いから、知らず知らずのうちに誤解が生じ、気まずい思いをしたり、時に人間関係の悪化にまで至ることがあります。このような異文化摩擦を防ぐためには、どうすればよいのでしょうか。
[この問題]⑩遅刻01
思考のヒント
「異文化」というと、皆さんはある国の音楽・料理・伝統的な衣服・歴史的建造物などのイメージを思い浮かべるかもしれません。文化人類学者のエドワード・T・ホールによると、上に挙げたような「見える文化」だけでなく、実は「見えない文化」が存在します。そこには、「ジャム・カレット」のような時間の捉え方、コミュニケーション・スタイル、意思決定方式、価値観などが含まれます。異文化間コミュニケーションの誤解の多くは、文化の見えない部分から生じます。私たちの日常のコミュニケーションは、見えないからこそ気づきにくい文化の違いに影響を受けているのです。「見えない文化」にフォーカスして特徴を探っていくことで、異文化間コミュニケーションの誤解の改善・解消を目指すことも政策科学部の問題解決というアプローチの範囲内だと考えています。
政策科学部での学び
私の専門は、社会と言語の関係を研究する社会言語学、そして留学生に対する日本語教育です。クラスでは、世界や日本における言語の政策や、日常生活で私たちが行っていることばの使用と異文化間コミュニケーションの様々な問題についてディスカッションを行いながら理解を深め、どうすればそれらの問題が改善できるのかを探っています。

また政策科学部には、英語で政策科学を学ぶCommunity and Regional Policy Studies(CRPS)専攻というプログラムがあります。そこで学ぶ留学生の日本語クラスでは、様々な国籍の留学生が、ことばの学習を通して日本を知り様々な人々と交流したいという思いを持って日本語を学んでいます。教室を一歩出ると、学内には異文化に触れられる環境もあります。皆さんも立命館で異文化間交流を体験してみませんか。

[この問題]⑩遅刻02

執筆者紹介

藤原 智栄美 教授
FUJIWARA Chiemi

専⾨分野:日本語教育学、社会言語学
学系:公共政策系

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