この問題、あなたならどうする?
また、地震がきた。こんなに頻繁に起こるのに準備をしないのは、なぜだろう。
各地で地震被害や豪雨被害が発生しています。その度に準備不足や避難の遅れが提起されます。重要なのはわかっているはずなのに、災害に対する準備や避難行動が進まないのは、なぜでしょうか。多角的な視点から考えてみましょう。
- 問題背景
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今後30年間の発生確率が70-80%と言われ、最大死者数32万人、経済被害は220兆円と言われている南海トラフ巨大地震など、日本は地震大国です。また、今後の台風や洪水などの気象災害は、気候変動もあり激甚化すると言われています。これだけ様々な地域で災害が発生しているにもかかわらず、防災世論調査(令和4年9月実施)によると「自然災害への対処などをここ1〜2年の間で家族や身近な人と話し合ったこと」がない人が4割近くいます。また食料・飲料水などの備蓄をしていない人も同調査では約6割います。さらに、最近は「防災ナッジ」という人々を特定の方向(防災でいうと安全を高める行動)に導くための方策も議論されています。例えば、過去の災害で周りの人が避難したから自分も避難したと回答した人がいることから、ただ「避難してください。」と伝えるのではなく、「あなたの避難が、みんなの命を救う。」と呼びかけること(広島県)などです。しかし、避難しなくても良い人も避難してしまうことで、かえって危険にさらすことになるなどの議論も起きており、行政などがどのような行動促進をするべきかについては議論が続いています。皆さんはどの程度災害への準備をしているでしょうか。皆さんの周りはどうでしょうか。「何となく準備していない」、「面倒臭い」だけではない理由を探るとともに、誰がどのように防災行動を促進してくのが良いのか考えていく必要があります。
- 思考のヒント
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人の行動は様々な要因により動機づけられています。個人的な視点では、自分は大丈夫だろうという危機感の欠如や、ニュースなどをみて「準備しなければ」と思っても、次の日には忘れているなどの課題を克服する必要があります。それだけではなく、周りがやっていないから自分もしなくて良いだろうという根拠のない安心感がある一方、誰かがやり始めると自分もやらなくてはと思い、周りも一緒にやり始めることもあります。また、日頃から近隣住民とコミュニケーションを取っているほど災害意識が高く、行動をとる傾向にあるなど、周りの人との関係にも影響されます。このように自分自身の心の持ち様だけでなく、周りの人の行動にも注意を払い、それに対して、他者(町内会や行政など)が何をするべきかについて、多角的な視点から行動に影響を与える要因を考えることが重要です。
- 政策科学部での学び
- 社会問題は単一学問では解決できないことから、政策科学部では学際的視点(複数の学問領域を考える)による問題解決を指向した学びを展開しています。公共政策、環境開発、社会マネジメントの3つに分類される様々な学問について学び、多角的視点からの問題解決について考えることができます。