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国際シンポジウム「東アジアからみる北欧ケアシステムの持続性」が開催されました
政策科学研究科では2023年11月16日(木)に国際シンポジウム「東アジアからみる北欧ケアシステムの持続性-高齢者ケアをめぐる公私アクターの関係」が開催されました。少子高齢化やグローバル化によって高齢者ケアは西洋・東洋を問わず共通の課題となっています。この共通課題に関するここ20年間の現状の変化とケアを提供する公私アクターの関係にどのような変化が生じたのかを情報共有し、対話を通して問題解決の小さな糸口を探すのが、本シンポジウムの目的でした。
ゲストスピーカーとして3名の教授が講演されました。デンマークで福祉国家史を専門とするKlaus PETERSEN教授、韓国で社会政策を専門とするSang Hun LIM教授、中国人経済学者で公共経済、社会保障を専門とするYang YU教授が国際比較の視点を入れながらそれぞれの国の現状について説明しました。
デンマークのPETERSEN教授は、北欧の共通理念である「北欧福祉モデル」の下で、デンマークの高齢者ケア政策に生じたこの20年間の変化は、テクノロジーやロボットの活用と民間部門の参入によるケアの質の低下であったと指摘しました。過去の経済成長で培われてきたケアの質への期待に応えられないほど、ケア労働者の「温かい手」が不足する事態に社会的ジレンマが発生し、議会でも活発な議論がおこなわれていると説明しました。
韓国のLIM教授は、社会サービス部門における社会経済組織(SEO)の役割についての研究を紹介しました。多くのSEOは政府の支援を受け社会的弱者の就労など社会的価値を高める支援をしています。しかし、地域コミュニティとのつながりは希薄で、民主的なガバナンスのあり方からSEOの課題を指摘しました。
中国のYU教授は、この20年間における日本と中国の高齢者ケア制度の多様性について講義しました。日本では、保険料・税金・自己負担の3つの部分からなる独立した高齢者介護保険制度を実施していますが、中国では、医療保険政策に基づく高齢者介護制度の実験が行われています。ケア人材不足を解消するために、両国ともICTやDXを進めていますが、運用には新たな課題が次々と生じ、介護ロボット市場も限定的であることを指摘しました。
最後に、日本人討論者2名からの議論のまとめや問題提起があった後、さまざまな国からきているCRPS生・院生たちからも積極的な質問がなされ、高齢者ケアを通した社会のサステナビリティを自国の課題として真剣にとらえる姿勢が印象的でした。今回来られた3名のゲストスピーカーは、国籍はもちろんのこと、歴史学・社会学・経済学と専門分野が全く異なる教授陣で、このように多角的な視点から情報共有と対話を通して共通課題に取り組むことは、正に政策科学研究科だからこそ成せる学びであったといえるでしょう。