ニュース

最新のニュース

角本ゼミ集中セミナーが、「超AI時代に備えるインクルーシブな情報法政策のデザイン」をテーマにヒアリング調査を実施しました。

角本和理ゼミ(政策構想演習)が、2026年度春学期(7月2日)と夏季休暇(8月31日~9月2日)の間に、「超AI時代に備えるインクルーシブな情報法政策のデザイン」をテーマとして「集中セミナー」を行い、主として東京圏にて、複数の研究者や民間企業等へのヒアリング調査を実施しました。 


 夏季休暇の合宿に先駆けて、7月2日には、LINEヤフー株式会社 ガバナンスドメイン サステナビリティ推進CBU CSRユニット 企画デザインの西尾勇気様に、同社がCSR活動として取り組んでこられた情報リテラシー教育について、オンラインでお話を伺いました。まず、子供向けの教材作成や授業構成で注意すべき点等、これまでの試行錯誤の積み重ねについて、ご教示いただきました。その後、SNSの仕様とユーザーの行動が連鎖して生じる加害のリスク、その場面でのユーザーと事業者の責任、さらに未成年者の利用制限等について、お考えをお聞かせいただきました。 

西尾様によるお話

弊学キャンパスの教室の様子


また、合宿前の調査としてさらに、株式会社MG-DX代表取締役の堂前紀郎様に、同社提供の「薬急便」(AI無人受付と薬局店舗内でのオンライン服薬指導サービス)についてメールで質問させていただき、導入後の業務の変化をお伺いしました。機械設置に伴って補助業務が発生し人員配置・役割分担の明確化が必要になった一方で、業務の分割により薬剤師の患者対応が充実したとご説明いただきました。テクノロジーを駆使することで、薬局規模や人員数に関わらず質の高いサービスの提供を実現したいという展望もお聞かせいただきました。 


 その後、8月31日には、東京青海の日本科学未来館にて、障害のある人々の芸術活動を支援するNPO法人エイブル・アート・ジャパンのスタッフお二方および視覚障害のある方お三方と、没入型インスタレーション作品『sky 雲の旅』を鑑賞後、視覚障害のある人の文化芸術へのアクセスの現状と課題についてお話を伺いました。具体的には、日常的な鑑賞体験や施設利用における課題、多感覚展示の可能性と限界、対話を通じて作品を共有する「対話型鑑賞」について理解を深めました。また、鑑賞の「日常性」の保障やインクルーシブデザインの必要性を学びました。 

実際のミストで朝靄を表現するシーン

雲の中の氷の結晶を描くシーン

(ニュース)ps-261008-05

視覚障害の方々によるお話


 
9月1日午前は、慶應義塾大学総合政策学部の斉藤邦史先生(情報法がご専門)にご講話をいただきました。多様性が尊重される社会におけるSOGIESC情報の取扱いについて伺い、情報の不正な提供や利用を防ぐためには利用目的を明確にする等の「利用目的に着目した規制が重要」とのご説明をいただきました。また、日本で同性婚が法制化された後の課題について、そもそも婚姻によって特定の関係のみを法的に認めることが新たな不平等を生む可能性があるため、婚姻制度そのもののあり方を根本的に考える必要があるとのご意見を伺いました。

(ニュース)ps-261008-06

SFC都心サテライトにおける斉藤先生のご講話


 
1日午後には、早稲田大学法学部のロドリゲス・サムディオ・ルベン先生(比較法がご専門)に、AI時代における労働のあり方や専門家の役割についてお伺いしました。まず、AIの発展と労働環境の変化の歴史をご説明いただきました。つぎに、生成AIを適切に活用するには出力の誤りを見抜く知識が求められることから、経験の浅い人ほどAIの回答を過信する危険性があるため、専門知識を身につけることひいてはそのための養成が不可欠であることをご教示いただきました。そして、AIが出力した誤った情報を法律家が不用意に利用した米国の事例を題材に、最終的な責任は人間が負うべきであることを強調いただきました。その後質疑応答では、専門家の需要が今後大きく変化する可能性や、広範な情報を踏まえて総合的な判断を行うジェネラリストの重要性、そもそも単なる経済的効率性の観点だけからAIの導入を捉えるべきではないことをご示唆いただきました。

(ニュース)ps-261008-07

早稲田キャンパス7号館におけるルベン先生のご講話


 
2日午前には、東京大学法学部の米村滋人先生(民法・医事法がご専門)に、医療機器と法的責任についてお話しいただきました。まず、医療AIの開発や利用に事前の行政規制が及ぼす影響の重大性に注意喚起をいただきました。その後、判断支援型AIと直接動作型AIの違いに伴う、医師・医療機関・開発企業の民事責任の異同をご解説いただきました。さらに、医療AIは専門医が不足する医療機関の支援策となること、今後医療が人間基軸型とAI基軸型とに分かれる可能性、そこにおける患者の期待の役割について、ご示唆いただきました。

本郷キャンパス法文1号館入口

 米村先生によるご講話


2日お昼には、ピクセルインテリジェンス株式会社の茅ヶ崎工場を訪問しました。実際に自動運転車を体験させていただいた後、工場長の齋藤洋明様、営業&企画部事業推進マネージャーの高橋信二様、ソフトウェアエンジニアの本田龍之祐様に、「移動そのものを再設計し、街を動かそう」というビジョンのもと開発された、RoboBus及びRoboShopについてお話しいただきました。また、AI技術がさらに発展した社会における人間の役割や、自動運転車が普及した社会における「人間が車を運転する自由」の如何について質問し、貴重なご意見を伺いました。

自動運転車の試乗体験

オフィスでの本田様によるお話


2日午後には、TISI株式会社ビジネスイノベーション事業部の神原博史様と野田将大様から、AIの社会実装についてお話を伺いました。特に上記ピクセルインテリジェンス社の自動運転車の活用について、地域ごとに異なるニーズに応じた、都市部でのポップアップストアや観光地での無人移動販売、地方での交通機関の運転手不足への対応といった利用想定の意義と課題をご説明いただきました。また質疑応答では、タスクを分解することでAIのミスの責任をゆくゆくは(人間ではなく)AIが負うことになる可能性をご示唆いただきました。  

TISIが入居する豊洲ベイサイドクロスタワー

神原様と野田様によるお話 


今回の「集中セミナー」を通じて、超AI時代に備えてインクルーシブな法政策を構想するための多くの知見を得ました。この度の調査等にご協力いただいた皆様に心より感謝申し上げます。この経験をもとに必ずや、今後の研究を有意義に進めていきます。 

2日夜の懇親会会場の東京タワー

懇親会の様子

(ニュース)ps-261008-16

早大の前身・東京専門学校創設者の大隈重信像前での集合写真

 
(文責:2026年度角本ゼミ「集中セミナー」出席者一同)

一覧へ戻る