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新興国・発展途上国における静脈産業に日本が協力できることは何か? —政策科学部2回生の「中国プロジェクト」における国際交流と現地調査

経済発展著しい新興国・発展途上国において、消費者の生活をより便利で豊かなものにするための商品を提供する「動脈産業」に加え、それらの消費に伴って発生する廃棄物や汚水などを適切に回収、運搬、処理する「静脈産業」の形成が求められています。特に廃棄物に着目すると都市部の拡大・高密度化の進む中国においては、最終処分場の処理容量の限界から、新しく排出される廃棄物の減量化が不可欠であると言われています。政策科学部2回生の政策実践プロジェクト「中国プロジェクト」では、中国における廃棄物処理プロセスの課題のなかでも、廃棄物の減量化のための「ゴミ分別」に着目して研究を進めています。 夏季休暇期間には、大きく2つの活動を行いました。1つは中国大連市の東北財経大学からの短期留学生との意見交流、もう1つは大連市、吉林市、および北京市におけるフィールドワークとインタビュー調査です。これらを通して中国における廃棄物処理のプロセスやゴミ分別の実態を分析しています。

中国、東北財経大学の留学生との交流

2015年8月2日〜7日の6日間、東北財経大学からの短期留学生らとともに、本学にて合宿を開催いたしました。合宿においてはフィールドワークを通した交流とあわせて、「中国プロジェクト」の調査課題として中国におけるゴミ分別に関する認識や日本のゴミ分別に関する所感について、留学生を対象にインタビュー調査とアンケート調査を行いました。この交流により、中国と日本では廃棄物の種別に相違点があるということ、およびゴミの分別に関する認識面での実態を把握することができました。

大連市での現地調査

2015年8月29日から9月6日の間は中国国内での現地調査を、フィールドワークを通したゴミの現状把握と関係者に対するヒアリングによって行いました。また一部の学生は8月28日までの約2週間、東北財経大学での短期留学プログラムに参加していたため、言語や文化にある程度慣れた状態での調査開始となりました。
大連市ではまず東北財経大学の教員、大連理工大学の教員およびJETRO大連事務所の職員から、中国の都市化の現状について講義をしていただきました。また大連市信用協会でのヒアリング調査では、大連市における廃棄物政策や廃棄物処理の現状について情報提供していただきました。さらに、大連市における焼却処分と焼却熱を用いた発電を行う事業者であるTEDAでのヒアリング調査では、環境教育のために開放されている施設を見学させていただき、廃棄物が焼却処分に至るまでの過程について説明をしていただきました。全体として、大連市内におけるゴミ分別の方針と実態について理解が深まる、貴重な機会となりました。

吉林市での現地調査

続いて大連市内から高速鉄道で3時間強の移動を経て、吉林市内で調査を行いました。吉林市のゴミ発電プラントはメンテナンス中であったこともあり、バスの中でプラントの計画者の方から設備に関する説明をしていただきました。その後、プラントの処理能力、発電量や主たる収入源など、施設運営に関わる具体的な話を聞かせていただきました。また、吉林市の開発に関連し、満州国時代に建設された豊満ダムの見学をする機会も得られました。
吉林市は中国東北部ということもあり、滞在中は南部の朝鮮半島および西部のイスラム文化といった多様な文化が融合している様子を感じ取ることができました。中国プロジェクトの調査成果とともに、学びの多い滞在となりました。

北京市での現地調査

中国での現地調査の締めくくりとして、北京市の北京理工大学日本語学院において、「中国プロジェクト」の調査報告と意見交換をしました。北京理工大学の学生の皆さんからは、日本におけるリサイクルや分別収集に関する法制度や教育などに関する質問や、廃棄物処理の中国との違いに関する質問が提起されました。中国および日本における諸制度が、お互いにとって当然のものでは必ずしも無いことが、改めて確認される機会となりました。

帰国をして、これより政策実践プロジェクトの中間発表、および最終発表に向けて分析を磨いてまいります。特に、日本の事例に関する調査も目下進行中です。

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