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- 平等な労働関係のために(倉田 原志 教授)
最近何かと話題の格差社会。その原因の一つに雇用主と労働者の関係の不平等が考えられます。憲法は、思想・良心の自由なども含め人間らしく生きる権利を保障しています。しかし、現状は雇用主の契約の自由が重視され、労働者は雇用主の決める採用決定・労働条件に従わざるを得ません。私は憲法の人権保障に着目し、労働関係を問い直すことはできないかと考えています。
憲法は国家と個人の関係を定めたものであり、雇用主と労働者という私人どうしの間には適用されないという考え方が根強くあります。また、最高裁は、憲法が私人間に適用されないとはいわないものの、労働者の思想・良心の自由を認めないのと同じといえる判決を出しています。さらに現在は、企業活動の妨げになるという理由で、労働法の規制緩和が進んでいます。労働法の規定は労働者を保護する内容が多く、現在の規制緩和は格差社会化を助長するのではと懸念しています。労働関係の平等化のためにも、労働法の社会的な意義を再度確認すべきでしょう。
つまり、安心して働き、人間らしい生活をするために、憲法の理念を労働関係にも反映させる必要があると考えています。それには、労働者一人一人が憲法論や人権論を身に付けて、生かしていく必要があります。誰もがいずれは社会に出て、働くことになります。そこで、ただそこにあるものを受け入れるのではなく、自由や平等を求めて行動するためにも、法学部での学びを役立てて欲しいですね。
- 厚生労働省は企業に対し、採用面接では「本人に責任のない事項」「本来、自由であるべき事項」に関わる質問は就職差別につながる恐れがあるので控えるよう指導しています。例えば、本籍、家族に関することが前者に、宗教や思想、支持政党が後者に当たります。そもそも面接は労働者と雇用主の契約のためのもの、仕事に関係のないプライバシーに関することは聞くべきではないのです。ドイツではさらにこの傾向が強く、裁判所の判例でも、面接においてプライバシーを侵害するような質問には、事実と異なることを答えてもかまわないとされています。このことは、「うそをつく権利」が認められていると表現されるのが一般的です。
- 【労働法】
- 労働関係を規律する法の総称。労働法という名前のついた法律は存在しない。代表的な法律として、労働三法と呼ばれる労働基準法、労働組合法、労働関係調整法、その他、労働者派遣法、職業安定法などがある。2008年3月1日には労働契約に関する基本的な事項をまとめた労働契約法が施行された。