在学生・修了生の声

学際性に富んだ環境で独創的なテーマを追求できた

堀池 航洋 さん

日本学術振興会 特別研究員PD
立命館大学OIC総合研究機構 プロジェクト研究員
立命館大学政策科学部 授業担当講師

修了生

政策科学部を卒業後、政策科学研究科で博士号を取得し、現在まで行政学を専門として、行政史、公共政策学などの観点から、「住民把握」をテーマに研究を続けています。例えば今日の日本では、戸籍制度を中心に、住民基本台帳やいわゆる社会保障・税番号制度(いわゆるマイナンバー制度)、健康保険証など、公的に人々を記録し把握する数多くの仕組みが整備されています。とりわけ、私は国民を正確に把握し統治する機運が高まった明治前期の日本で、「住民把握」がどのように構築されてきたのかを明らかにしてきました。

大学院への進学を考えたのは、学部3回生の時です。所属ゼミの先生 に勧められ、4回生が政策科学研究科の科目を履修できる「大学院進学プログラム」を受講したことがきっかけでした。はじめて研究報告を行った際、「それはただの『調べもの』で、研究とは言えない」と指摘されたことが、強く印象に残っています。文献や史料から明らかになった事柄を並べるだけでなく、「そこから何が言えるのか」を考える必要がある。そうした気づきが、その後の私の研究に対する向き合い方の基礎になっています。

政策科学研究科を選んだ理由の一つは、学際性に富んでいることです。博士課程前期課程では、学問領域の異なる複数教員による研究指導(リサーチプロジェクト)が採用されています。「住民把握」という様々な領域にまたがる行政の営みを捉えるには、多様な視角からアプローチしなればなりません。学際性を基礎に置く政策科学研究科にいたことで、複数の学問領域から多角的にテーマに接近することができました。また講義やリサーチ・プロジェクトで他の分野の先生や院生に自身の研究を説明したり、議論を重ねたりする中で、ロジカル・ラテラルな思考が身につくとともに、発想力を養うことができたと感じています。

博士課程後期課程では、本格的に研究者の立場で先生方と向き合うことになります。さまざまな分野で研究成果を挙げておられる先生方から、鋭い質問や批判的な指摘を受けることで、研究を洗練させていくことができました。

「住民把握」に関する研究は、いまだ十分な蓄積がなく、そのメカニズムへの理解も進んでいません。今後、事例研究を通じてさらなる研究の蓄積と原理的知見の探求を進めるとともに、制度と実態の橋渡しとなるような理論枠組みの構築を目指して研究を行っています。「住民把握」の制度に迫る背後には、「国家とは何か」、「国民とは何か」、さらに「生とは、死とは何か」といった疑問があります。これからの研究者人生を通じて、その問いに答えを見出していきたいと考えています。