研究科長挨拶

社会学研究科は、産業社会学部(1965年度創設)を基礎として、国内外の諸課題に応え、社会にその成果を還元しうる優秀な研究者と各専門領域における専門職業人の輩出を目的として1972年に設置されました。本研究科の特質の概要は以下のとおりです。 第1に、本研究科では日本や世界で生起している諸問題を的確に把握し、かつ解決するために諸科学の連携あるいは総合を重視しています。今日、グローバリゼーションの潮流のなかで、環境問題、貧困問題などに見られるように、ある問題が他のそれと密接に結びつきながら質的に新たな問題をわれわれに次々と提起し、それらの解決に向けた複眼的な視座を要請しています。たとえば昨年南アフリカで開催されたFIFAワールドカップやオリンピックなどのメガ・スポーツイベントの開催に際しては、もはや環境政策が欠かせない課題の一つとなっています。
この点と関連して第2に、本研究科では社会学を中心としつつも、社会諸科学の協同によって、先端的で多面的・学際的な理論と実証的な研究を行うことを重視しています。そのために、2007年度にカリキュラムの改革(3つの「研究領域」、10の「研究系」の配置)を行い、社会学研究科の学際性と多様性をさらに活かした研究環境を整えました。複眼的、多角的な視点による考察が要請される現代社会にあって、本研究科では学際的特徴をいかしながら、環境、都市、産業、家族、労働、地域、消費者、文化、人間、教育、社会倫理、社会病理、余暇、スポーツ、芸術表現、マスコミ、メディアリテラシー、社会政策、福祉、対人援助、発達、心理、地域医療などの多彩な分野の研究を進めていくことができます。この点は他の社会学系大学院との比較において、極めてユニークな側面と言えるでしょう。
第3に、アカデミック・スキルを高めていく観点から、国際性豊かな研究を重視しています。本研究科では2008年度より文部科学省の大学院教育改革支援プログラム(大学院GP)に採択され、「海外大学共同による比較社会調査研究型教育~アジアと欧米をつなぐ国際的な社会調査研究のスペシャリスト育成~」をめざしたプログラムを開設してきました。この教育プログラムでは海外の大学と密接に連携して、大学間をつなぐ遠隔授業や研究交流、ランカスター大学と連携したメンター制度など、ユニークな国際的大学院連携教育を展開しています。同プログラムは、文部科学省のプログラムとしては2010年度で終了しましたが、これまでの成果を踏まえ、2011年度以降も同様の趣旨と目的でポスト大学院GPプログラムとして実施されます。また、アジア、ヨーロッパの大学院生との合同研究発表会も継続的に開催しており、英語による発表と英語論文の作成などを通じて、個々の研究成果を日本のみならず、世界にも発信していくための取り組みも行われています。
その他、進路・就職支援と関連して、インターンシップ科目の「応用社会学実習」、資格取得講座(「専門社会調査士課程および教職課程」)の配置、キャリアオフィスと連携したキャリア形成支援などにも取り組んでいます。
あらゆる研究がそうであるように、社会科学の研究もまた多くの時間と労力が求められます。しかし、そうした厳しくも主体的、能動的な営為は、研究力量の向上とともに研究者自身をも成長・発展させずにはおかないでしょう。大学院生諸君の研究成果が、本学の教学理念である「平和と民主主義」の日本ならびに世界における発展に寄与するよう大いに期待しています。


