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来年度から新しく進化する産業社会学部。そこで、その中でもスポーツ社会専攻を担当される山下高行教授にお話を伺いました。

産業社会学部
山下高行 教授

来年度から1学科5専攻に変わるのですが、なぜ人間文化学系の中のスポーツという分野を1つの専攻として取り上げられたのですか?

産業社会学部ではこれまでもスポーツ分野の教育や研究を重視してきましたが、新たにそれを拡大し、独立した専攻としたのは、スポーツが現代社会の中でこれまで以上に重要な文化となってきており、産業社会学部の目指している広い意味で人々の豊かさを実現する「福祉社会」を創り出す上で欠くことのできないものとなってきたからです。

実際スポーツは、以前であれば考えられないほど、様々な形で変化してきており、“情報化社会とスポーツ”、“ビジネスとスポーツ”、“福祉とスポーツ”など、スポーツと社会の連携が以前にも増して複合的に進んできています。またこの中で人々のスポーツに対する関わり方も大きく変化してきています。スポーツを“する、みる”というのだけではなく、あらたに“支える”という関わり方も生まれてきています。たとえばよく耳にすると思いますが“サポーター”というのも近年登場した新しいカテゴリーですし、それは今まで言われていた“ファン”とも少し異なっています。サポーターを介して商店街や地域のサッカーチームと地域が一体化して街づくりを行ったり、サポーターが地域の障害者の援助を行ったり、サポーターはサッカーチームだけをサポートするのではなく、“街づくり”に大きな役割を果たすようにもなってきています。このような動きは全国いたる所にみることができます。

このように現在では、スポーツや人々のスポーツへの関わり方は大きく変化してきています。そのため従来のような“体育”というカテゴリーではカバーしきれず、新しい複合的な学術の基盤を持った専攻が必要になってきていますし、競技としてのみスポーツを捉えるのではなく広い視野を持った人材が、今の社会では求められるようになってきています。新しい専攻はまさにこのような現代社会の課題に応える意味で設置されたものです。そのため新しい専攻では、産業社会学部の多彩な教学、「メディア・街づくり・福祉」などをスポーツとリンクさせて学ぶことで、社会が求めている人材を育成していきたいと思っています。

来年度から、産業社会学部では「保健体育科」の教員免許が取れること(※現代社会、メディア社会、スポーツ社会、人間福祉専攻で課程認定申請予定)が注目されていますが、それについてはどうお考えですか。

教員としての高い資質を備えていることはもちろんですが、それ以上に今までにない資質を持った保健体育の教員を育成していきたいと思っています。少子化社会の影響により、学校ではクラブ活動が成立しないところも出てきています。また一方では新たな試みとして、複数の学校と地域が連携してクラブ活動を成立させたりしているところもあります。スポーツの基盤として今、あらためて地域というものが見直されていますが、産業社会学部では、学校⇔教員⇔地域といった形で複眼的な視野を持った、地域の専門家として、地域と学校を繋げられる人物の育成を目指しています。            

来年度から始まる授業について教えて下さい。

カリキュラムの特徴は4点あります。これは「クロスオーバー・ラーニング」といって、産業社会学部の教学全体の特徴にもなっているのですが、1つは複眼的な視野を創り出すため、カリキュラムが、スポーツ自体を学ぶと同時に、自己の将来のキャリアも勘案し、福祉やメディア、地域形成、社会思想など、産業社会学部の展開している様々な領域を組み合わせて学びを深めていくように構成されている点です。たとえばスポーツジャーナリストを目指す学生は、スポーツの研究を深めると共にメディアの領域も学ぶことが望まれます。また全学副専攻のスポーツ科学コースを学び、スポーツの自然科学的側面も深めていくことも可能です。

2点目の特徴は、広い意味でのマネジメントを軸にしながら、コマーシャルセクター、公的セクター、ボランティアセクターといった、スポーツが展開される領域に沿ってある程度自己の学びを創ることができる点です。

3点目は、様々な形で現場との距離を近くしようとしている点です。このためインターンシップや地域調査研究などにより現場を知る機会を増やそうと考えています。産業社会学部にはもともと「アクティヴ・ラーニング」という伝統がありますので、新しい専攻でもその精神は生かされています。また現場で活躍している外部の様々な方を講師としてお迎えする機会も増やそうと考えています。

4点目は、斬新な切り口を持った科目を設置していることです。たとえば「スポーツとジェンダー」や「スポーツ人類学」、「スポーツボランティア論」などなどがそれにあたりますが、これらは学会水準でも今注目され、研究が急激に展開し始めている領域です。これはまさしくスポーツの今日的な変化を反映するものですが、このような先端の研究も学ぶことができるようにしています。

最後にメッセージをお願いします。

スポーツ社会専攻では、トップの競技レベルを持つ人からマネージャー、そしてスポーツのファン、あまりスポーツに関わってこなかった人まで、多彩な人物を求めています。

現在、スポーツは生活や文化の一部になっています。将来はますますビジネス・生活などの現場に、スポーツが大きく関わってくると思います。是非ここで学んで、スポーツを広い意味での豊かな「福祉社会」の展開にどのように役立てるかを考えていって欲しいと思います。

 
取材・文 高橋義紀(法学部3回生)
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