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2007年4月から公務研究科の教授となられる鵜養幸雄さんに、公務員に求められる人材・公務研究科での学び等についてお話を伺いました。

人事院公務員研修所 教授
鵜養幸雄 さん
2007年4月より公共政策大学院
公務研究科 教授予定

現在のお仕事の内容を教えて下さい。

人事院の仕事は公務員の採用、育成・配置、そして退職に至までの基準の設置、勤務条件の改善、人事制度が適正に運営されているか等の人事の管理などが中心です。私が具体的に携わった仕事としては、上級公務員(現在の国家I種)採用試験問題の作成・結果分析や、人事院規則原案のチェック、不利益になる処分を受けたと訴えた公務員に対する公平審査などが挙げられます。また、外務省に出向し、外務省内の人事制度の整備や国際機関での業務も経験しました。

現在は、埼玉県入間市にある人事院公務員研修所での合同合宿研修などの実施に関与しています。研修には、新人研修から幹部研修など様々な形があります。また昨今、コスト面などを中心に、社会的に指摘されている公務員の意識改革のため、時には民間企業の方を講師に招いたり、民間企業の方と合同で研修を行ったりすることもあります。

公務の現場で求められる人材とはどのような人ですか。

ひと口に公務といっても省庁や自治体によって求められる役割は異なり、行政機関がそれぞれの基準にしたがって良い人材を集めようとしています。ただ、公務の現場全体に求められていることとして言えるのは、国民の目線に立って問題を発見し、多面的な視点から問題を分析し、その問題に対する施策を提案できる人材です。また、組織人として協調性を持ちながら、仲間が元気良く働けるようリーダーシップを発揮していける人材です。

もちろんはじめから全ての能力を備えた完成した人材を求めているのではありません。採用活動を通じてこの人は将来どういう人に育つだろうか見極め、それが省庁の重視する要素と一致しているかどうかを見極めているのです。

公務研究科ではどのような役割を担われるのですか。

公務研究科の全体像は設置委員会事務局長の見上先生をはじめ、多くの方のご尽力で形づくられていくと思います。私が携わるのはその中の一分野、実務に関連する行政過程論などの分野です。私はこれまで人事院の業務の中で、様々な省庁の人と意見を交わす機会が多くありました。その経験を活かし、具体的に今までに携わった行政政策などを振り返りながら幅広い視点で院生や教員の方々と意見交換を行いたいと考えています。

公務研究科が求める「政策力」に必要な要素は法学、経済学、政治学の3つに留まらず、文学や倫理学、自然科学も含まれる幅広い分野であると考えています。私がこれまでに得た現場での経験をぶつけるのと同時に、院生からもそれぞれの専門分野の理論を出し合ってもらうことで、思考力や判断力を養うことができればと考えています。また、リサーチ・プロジェクトを通じて、実務を経験する過程で、問題を発見し、政策を立案する力を習得して貰いたいですね。そうすることで実務の基になる「政策力」を培うことが期待できると思います。

最後に私の授業スタイルの中に取り入れてみたいと考えているのは古典を学ぶことです。現在も人事院の研修で「貞観政要」などの古典を題材に用いていますが、古典は人のあり方を学ぶことができます。人のあり方を学ぶことで国の向かうべき方向性を考えるきっかけが得られる授業を行いたいと考えています。知識があるだけではなく、幅広い視野を持ち、「政策力」のある人材の芽を育成したいですね。

 
取材・文 田中吉政(政策科学部4回生)
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