世界で初めて「クロロゾーム」の成長過程を可視化に成功

2019.01.29 NEWS

世界で初めて「クロロゾーム」の成長過程を可視化に成功 ~世界的権威を持つ米国化学会誌(Journal of the American Chemical Society)に採択

 立命館大学大学院生命科学研究科D1の松原翔吾さん(日本学術振興会特別研究員)と同研究科の民秋均教授は、光を当てることによって光合成色素(クロロフィル;葉緑素)を集積化させるシステムを開発し、「クロロゾーム」と呼ばれる光合成集光アンテナ器官の成長過程を世界で初めて可視化することに成功しました。

 光合成における集光アンテナであるクロロゾームは、多数の特殊なクロロフィル分子が集まって形成されたチューブ状の色素集積体であることは、民秋教授らの研究グループによって明らかにされてきました。しかし、それがどのようにして形成されているかということは判っていませんでした。

 これまで、クロロフィル分子を集積させてクロロゾームモデルを形成しようとしても、チューブ状のクロロゾーム様色素集積体を直接形成することは不可能でした。本研究ではその理由を、天然のクロロゾームが形成される過程が正しく模倣されていないことだと考え、クロロゾームモデルを人工的に作り上げることが企図されました。

 クロロゾーム内の色素集積体は、逐次生合成されたクロロフィル分子が徐々に集まっていくことによって形成されています。本研究では、生体内のようにクロロフィル分子が徐々に集積していくシステムを人工的に再現することによって、従来の方法では困難であったチューブ状の色素集積体を直接的に形成することに成功しました。徐々に集積し、チューブ状の色素集積体を形成する過程は、まさにクロロゾーム内で色素集積体が成長していく過程をモデル化したものであり、クロロゾームの成長を模倣した世界で初めての例となりました。本研究の成果は、クロロゾームの形成過程の解明のみならず、これまでよく分かっていなかった他の様々な生体器官の形成過程を、分子レベルで可視化し解明していく研究に発展していく可能性をも示しています。

 以上の研究成果は、化学系学術団体としては世界最大の米国化学会で世界的権威を持つ学会誌(Journal of the American Chemical Society)にSpotlight(注目)論文として採択され、審査員からも高い評価を得ました。2019年1月9日に、速報として同誌オンライン電子版に発表されました。

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