「 コロナ禍を、自分や社会の<本質>を考えるきっかけにしてほしい。」サトウタツヤ教授(総合心理学部)

2020.07.10 TOPICS

「 コロナ禍を、自分や社会の<本質>を考えるきっかけにしてほしい。」サトウタツヤ教授(総合心理学部)

新型コロナウイルス感染の拡大をきっかけに、世界や社会は大きく変わりつつあります。
こうしたなか、立命館大学では、さまざまな分野で研究活動を行う教員へのインタビュー連載企画「NEW STREAMS」をスタートします。

連載企画では、私たちの“いま”と“これから”を研究視線で解説するとともに、未来を創造する学生へメッセージを送ります。

総合心理学部 サトウタツヤ 教授
専門分野:文化心理学/質的心理学/社会心理学

【1】コロナ禍で生活はどう変わったか?

コロナ禍では自粛生活を余儀なくされ、日常生活も大きく変化しました。この間、先生はどのように過ごしていましたか。

以前に比べ、とても規則的な生活になりましたね。不規則な予定が入らないこともありますし、移動の時間が省けるので、教育・研究・行政の仕事のバランスが取れるようになりました。それぞれ大変さが2倍になったので、苦しい感じもしますが、充実しています。講義はオンデマンドに移行していますが、進め方は従来と変わりません。これまで対面で行っていたものが、映像と音声になっただけ。ただ、人と違うことをしよう、というのが私のモットーなので、週に1回、30分ほどツイキャスを使ってラジオ配信をしています。学生からも「教授がツイキャスなんて珍しい!」と面白がられていますよ。学生に対しては、これまで以上に一人ひとりを見て、必要な支援を得ながら成長する機会を提供したいと感じています。

オンライン授業に対する学生たちの様子を教えてください。

授業内で、学生川柳というものを行ったんですが、非常に面白かったです。コロナ禍での自粛の辛さを詠む学生もいれば、未来への期待を込めた句があったりと、興味深かったですね。未曾有の体験で混乱も大きかったと思いますが、学生たちはこの状況下でいろんなことを考えているのだなと感じられて嬉しかったです。専門ゼミについては、ナマケモノが多かった「サトゼミ」としては出席率が向上しています(笑)。社会問題に強い心理学ゼミとして、地位を確立したいところです。

【2】デマの流行や外出自粛に見る日本社会の特性

コロナ禍における社会の動きを見て感じたことはありますか。

今回いくつかの調査・研究を行うなかで、「日本人の未来への見通しの良さ」を強く感じました(※)。報道や政府の対応に不信感を抱いていても、多くの人が根本では「日本はいい国だ」と感じており、「今我慢すれば、後で状況が良くなるだろう」という信頼が感じられました。だからこそ強制力のない自粛ができたのだと思います。一方で、他者への攻撃が増えたことが問題になったのは残念でした。
※「新型コロナウイルスの拡散とそれに関するリスク:オンライン調査の結果」 対人援助学マガジン第41号(2020)

他者への「悪意のない」攻撃を起こさないために、私たちはどうすべきなのでしょうか。

「大切な人を守る行動」と「他者を攻撃する行動」は表と裏の関係にあると「理解する」ことです。それらは対立する二つの行動ではなく、一つの行動の異なる側面であると。そのうえで、攻撃しようとしている相手も同じ仲間なんだと思うことでしょうね。いつか来る第2波に直面した際に同じことを繰り返さないためにも、一人ひとりが理解していただきたいですね。

デマもいくつか広まりましたね。デマが広がるのはなぜでしょう。デマと正しい情報、どうすれば見分けられるのでしょうか。

「息を止めれば感染しているかが分かる」とか、「お湯を飲めば感染予防になる」だとか、これらのデマが広がるのは、知りたいことを「知らない/知ることができない」ことが原因です。デマや噂は重要性と曖昧性の掛け算。多くの人が知りたい(=重要)情報にもかかわらず、確かな情報が得られない(=曖昧)という状況が組み合わさると、それが嘘でも広がってしまう。そして、自分が納得した情報を「人のために」「良かれと思って」他者に伝えるのです。善意に基づいているだけに難しいのですが、それを防ぐには、情報源をチェックすることに尽きます。誰が、いつ発信した情報なのか。それは信頼できる人なのか。少なくともそれをたどれるのかどうか。デマは「一見真実のように感じるが、調べていない情報」なんです。情報源をたどれないものを他者に伝えるのはやめたほうがいいでしょうね。得た情報を人に伝える前に、一呼吸おいて考える時間を置くことが重要です。

【3】アフターコロナを生き抜くために

直接的な接触が限定される新しい生活様式の中で、私たちはどう過ごすべきなのでしょうか。

バーチャル化が進んだとき、個人に求められるのは「自己の本質」、ラフに言うと「自分らしさ」です。時間を割いて対話する価値があるのかという「中身」が問われるようになる。私たち教員も、授業をオンライン化して満足するのではなく、教育の本質を高めることが課題だと感じています。あるいは、立命館大学の教員(研究者)たちが、新しい知識をつくっていく側にいるのかどうかが問われます。講義は知識を伝える場ですが、その知識をつくるのはゼミなどです。学部ゼミも大学院ゼミも、伝える価値のある知識をつくる場にしていきたいですね。
自己の本質を高める上で大事になるのが、「見通しを持つ」ことです。よく学生たちには「北極星的展望を持て」と伝えています。一つ目指す目標がしっかりと見えていれば、目の前のことに左右されず、どんな状況に陥っても目標にたどり着く道を切り拓くことができます。目標達成の手段を多く持つことは、生活の豊かさにもつながりますからね。自分らしく生きることを大切にしてほしいと思います。

最後に、これから先生自身が取り組みたいと考えている研究について教えてください。

ソーシャルインタラクション(社会的相互作用)と精神衛生(メンタルヘルス)についての研究はしておかねばならないと思っています。コロナ禍を通して、生活の質(QOL)はどう変わったのか。幸いにも、これまで国際共同研究を行ってきた仲間と調査を行うことができるようになっているので、コロナ禍前後で日本のみならず世界の人々の行動や心理がどのように変わったのか、について調査を行っています。

学生のみなさんへ

今は自分の本質を考える期間。自分自身をしっかり見つめ、「自分らしく生きる」ことについて、ぜひじっくりと考えてみてください。

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