世界展開力強化事業 国際PBLによるイノベータ育成プログラム(3)  タイ・チュラロンコン大学に留学 政策科学部4回生・松田惇生さん

逃げ道のない環境で自らを磨く
チュランコン大学
仲間と共に(松田さん右から2人目)

 立命館大学では、数多くの海外研修プログラムを実施しています。そのなかのひとつ、文部科学省の「平成25年度大学の世界展開力強化事業」で採択された「国際PBLによるイノベータ育成プログラム」*について紹介します。第3回目の今回は、2期生として3回生時にタイ・チュラロンコン大学(CU)に留学した松田惇生さん(政策科学部4回生)にお話をうかがいました。現地での不自由な生活、数々のアクシデントを通じてつかんだものとは…。

グローバル化に必要な力とは

コミュニケーション能力と自制心が成長
プレゼン資料
実際に製作した携帯電話充電ステーション

 グローバル化が進むなか、問題解決の能力はもちろんのこと主体的に物事を進めていく力、他者から学ぶ思考などが強く求められるようになっている。「こうした能力を伸ばしていく上で、このPBLプログラムは最適だと思いました」と、松田さんはプログラム参加のきっかけを口にする。
 都市化が進むバンコクの市街地にあるCUは、18の学部と多数の研究施設を有する1917年に設立されたタイ王国でも最も古い歴史を持つ国立大学。「関西で言えば梅田のど真ん中にキャンパスがある感じでびっくりしました」と第一印象を話す。
 松田さんがCUで受けていたPBLは、「Culture and Thai Traditions in Thai Lifestyle」と「Creative & Critical Problem Solving」という科目。日本の講義形式のスタイルとは異なり、「グループワークはとても新鮮なものでした」。特に「Creative & Critical Problem Solving」は印象に残っている。授業は、まずプロジェクトを一緒に進める仲間を探すところから始まる。チームができれば仲間でどんなものを作るかということを決めていく。「話し合いを進めるうちにハッとするような発見が会話の中から生まれてきたりもします」。次にそれを実際に具現化する作業に移るが、なかなかうまくいかず「何度もやり直すというステップを繰り返すことで、プロジェクトをまとめあげることができました」と振り返る。
 松田さんのグループが最終的にまとめたのは教室内に設置する「携帯電話充電ステーション」。学生は携帯が授業中充電できると同時に、携帯をそのステーションに預けることで授業にも集中することができるというサービスを発表した。
 「プロジェクトを進める方法やチームメートとの合意形成のプロセスは、これからの人生でも活かしていけると思います」。取り組みのなかで「学生の学問に対する純粋さ、取り組む姿勢や熱量に圧倒され羨ましささえ覚えました」と、日本の授業ではなかなか味わえない衝撃に、たちまちタイ、CUの虜になった。

様々な価値観に触れ、多能な世界で生きること

プロセスは今後にもきっと生きるハズ
フィールドワークで記念撮影
お世話になった先輩の卒業式にて

 語学力は格段に向上した。「留学前、自分の考えや思いを英語で表現することに抵抗がありました」という松田さん。留学を経験し、「その点に関する抵抗は無くなりました。多国籍な学生と交流していくなかで、自分を表現しないとやっていけない、他に逃げ道がない状況に置かれたからだと思います」。日本でそういう状況に巡り合う機会は稀なこと。これも留学、国際PBLプログラムならではの経験、効果だったといえるだろう。
 さらに「自分でも想定外ですが、飛躍的にタイ語力が伸びたと思います」と、語学については思わぬ波及効果も。留学前に、日本に留学に来ているタイの学生とも積極的に交流。「本プログラムでは留学前にタイ語の授業が取れます。僕はそれを取らずにタイに行ったのですが、現地は大学を一歩出れば、タイ語しか通用しません。学生はもちろん屋台で働いている人とコミュニケーションを取るうちに自然と覚えました。留学したからこそ得られた力ですね」と笑顔を見せる。

 現地では、「いかにして円滑にコミュニケーションを取るかを常に意識していました」と静かに話す。その経験を通じ「大切なポイントをふたつ見つけました」と松田さんは言う。ひとつは、「いかにロジカルにシンプルに伝えるかということ」。もうひとつは「いかに思いやりを持って、他人の立場に立って物事を考えられるか」という点。自分勝手、自分よがりでは何も始まらない。これはどの国に行っても共通の事柄であり、そこに気付いたことを最大の成長に挙げる。
 コミュニケーション力に加え成長した点に「自制心」を挙げる。渋滞に巻き込まれ歩けば20分たらずの距離をエアコンのないバスで90分近くかけて帰宅したことも1度や2度ではなかった。外国人であることが見抜かれ、タクシーでメーターを使わずに法外な金額を請求されるなど、「正直、最初はそういった理不尽さやストレスをコントロールできなかった」と打ち明ける。しかし、時が経つにつれ、「自分の心をコントロールできるようになりました。理不尽さを受け入れ、そのようなことが起きないように努力しました」。タイ語も必死で勉強した。日本を外から眺めることで、便利さ快適さが当たり前ではないことにも、身を持って気付かされた。

 「この留学を通じて、さまざまな価値観に触れ、多様な世界で生きることに幸せを感じました」と力を込める。「他国の学生に比べ、自分も含めですが、日本の学生は価値観を固めきれていなかったり、自分の考えを表に出すことを恐れている人が比較的多いと感じます」。その課題を克服するのは、やはり教育ではないかという思いを強くした。将来はこれまでの学びを踏まえ、「教育に携わりたい」と意欲を語る。 予想もしない発見や気付きの連続。松田さんにとって今回のプログラム参加が、未来を切り開くきっかけになったことは間違いない。(了)

国際PBLによるイノベータ育成プログラムHPhttps://www.ritsumei.ac.jp/international/aims/
第1回https://www.ritsumei.ac.jp/news/detail/?id=198
第2回https://www.ritsumei.ac.jp/news/detail/?id=204
※2017年度派遣学生募集は、2016年11月初旬を予定しています。

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2016.04.20 TOPICS

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