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2022.02.16

第41回AJI研究最前線セミナー開催

 2022年2月8日 (火) 、第41回AJI研究最前線セミナーをオンラインで開催しました。今回は、Dr. Sugit Sanjaya Arjon(立命館大学国際関係研究所客員研究員)が“Peace for Sale: The Cost of Post-Conflict Stability in North Maluku, Indonesia”のタイトルのもとで、インドネシアの政治情勢について英語でプレゼンテーションを行いました。発表では、オランダ植民地のもとでの差別的な政策に苦しんできたインドネシア・マルク州のイスラム教徒の平等を回復する集団移住法(The Mass Migration Law)が、少数派キリスト教徒から彼らの特権を奪い、両グループ間の憎悪と対立を生み出したという歴史的背景が示されました。Dr. Sugitの発表では、最も被害規模が大きかった地域の一つであるマルク州に焦点を当て、1999年から2001年までの四つの紛争期間を概観し、その地域のアクターらがその緊張関係から利益を得ていたのかに焦点が当てられました。また、、紛争後の過剰な援助物資と支援活動の流入によって、地域のエリート層の間で公平性、不正義、腐敗などに対する懸念を高める結果となり、紛争後の社会復興活動の状況が流動化したことが指摘されました。以上の状況は民族的アイデンティティ間の対立を扇動したエリートの間で権力闘争を生み、その結果として、良い統治を犠牲にしながら現状を維持することが相互に利益となる二つの「政治王朝(political dynasties)」に基づく権力構造の硬直化へと結びついてしまったという問題が浮き彫りにされました。それゆえ、発表タイトルにあるように、この状況は「Peace for Sale(売りに出された、あるいは、分譲された平和)」と言えるわけです。

 続いて、紛争の根本的原因、インドネシアにおける民主主義の不安定な状況、政治活動を通じた状況改善の可能性、政治の改革というデリケートな問題に関する研究が必要とされることなどについて議論が行われました。

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発表を行うDr. Sugit

過去のAJI最前線セミナーについては以下のリンクからご覧いただけます。
https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/young_researcher/seminar/archive/