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2023.06.22

【レポート】第56回AJI研究最前線セミナー:Dr. Polina IVANOVA/日本の国際学生との社会資本の共創

 6月13日(火)、第56回AJI研究最前線セミナーがオンラインで開催された。今回は、Dr. Polina IVANOVA (立命館アジア・日本研究機構 専門研究員)が、近著Civil Society and International Students in Japanをもとに、“Exploring Interactions between International Students and Civil Society in Japan”と題して英語による発表を行いました。

 Dr. Ivanovaは、日本の大学における多様な留学生グループの経験を検証することで、市民社会組織、大学のクラブ、民族性に基づく団体、非公式の趣味グループなどが、大学所属期間の短期間にどれだけ効果的に社会資本を生み出すことができるのか、また、学生の期待とニーズを満たす上でどれだけ成功しているかを調査しています。

 しかし、パンデミックの間、対面でのイベント開催は不可能になりました。かわりに、Zoomによるオンライン・イベントが開催されましたが、直接的な社会的接触と交流から得られるほどの満足感を参加者の学生らに与えることができませんでした。Dr. Ivanovaは、パンデミックがこの間の国際学生支援組織(International Student Support Organization: ISSO)の活動に対して大きな障害となったことを示しました。多くの地域団体はが「ニューノーマル」 に適応できず、機能不全の常態が続きました。その結果として、孤立や人間関係の問題、学業の困難、アルバイトや就職の機会の喪失などが起こり、多くの学生がストレスや不安、不眠症、うつ病などに悩まされたという深刻な事態についても言及がなされました。

 それに対して、Dr. Ivanovaは、異文化間の研修イベントに重点化し、学生が積極的に参加できるようにしたグループは、情報交換、相互援助、規範の共有、友情の形成、新しいつながりの確立に成功していることを発見しました。しかし、学生らの実際の意図や動機への理解の欠如、国際学生の短い滞在時間、また、特に日本における国際学生を支援する公的な調整機関の不在などが障害となってきたという現実があることが発表では焦点化されました。

 発表の結論部において、Dr. Ivanovaは、国際学生との交流が日本の市民社会のトップダウン的な性格に対して新たな課題を突きつけるものであり、学生が大学や通常の支援団体以外の解決策を積極的に模索する中で、新しい組織や新しい形の市民参加が生み出され、独自の政治活動を生み出してきたという点を強調しました。

 Q & Aでは、活発な質疑応答が行われました。セミナーへの参加者の多くが国際的なバックグランドを持っていたこともあり、パンデミック中の研究の進め方、ロックダウン中に学生が直面した困難、日本で他のアジア地域出身の人々が直面した特定の問題についてのDr. Ivanovaの考えについて、様々な質問がなされました。彼女の報告は、パンデミックの経験を共有している研究者にとっても重要なものであり、それもあずかり、参加者の間で刺激的な議論を共有することができました。

発表を行うDr. Ivanova
発表を行うDr. Ivanova

過去のAJI最前線セミナーについては以下のリンクからご覧いただけます。
https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/young_researcher/seminar/archive/