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2023.09.22

【レポート】第59回AJI研究最前線セミナー開催!Dr. Nguyen Thi Thuong: “Grey Water Treatment Using Trickling Filters and Constructed Wetlands Planted with Edible Plants”

9月12日(火)、第59回AJIリサーチ・フロンティア・セミナーがオンラインで開催されました。今回は、Dr. Nguyen Thi Thuong(立命館アジア・日本研究機構 専門研究員)より、 “Grey Water Treatment Using Trickling Filters and Constructed Wetlands Planted with Edible Plants”( 「トリクルフィルター (TF) を用いた排水処理と食用植物を用いた人工湿地 (CW) 」) と題して発表が行われました。

自然環境の汚染を防ぐためには、日常的に家庭から排出される水(grey water)を処理する必要があります。多くの発展途上国では、排水処理施設の不足による水質汚染が問題となっており、省エネルギー型の廃水処理システムの開発が急務となっている現状があります。Dr. Thuongは、増大する真水へのニーズを満たす最も簡単な方法の一つとして、トリクルフィルター (TF) と人工湿地 (CW)を用いた排水のリサイクルに関する研究を行っています。

Dr. Thuongの研究の目的は、1)トリクルフィルターと再生発泡ガラス砂利(recycled foamed glass gravel)で満した人口湿地を用いた小規模な廃水処理システムの性能を実証すること、2)食用植物を植えることで人口湿地にさらなる効能を加えること、3)有機物や栄養素の除去に対する植物の効果を評価することにあります。研究結果では、以下のことが示されています。第一に、トリクルフィルターと人工湿地を組み合わせた排水処理システムは4.5ヶ月の運転中に排水を除染する高い能力を有したこと。第二に、再生発泡ガラス砂利は植物や微生物の生育に優れた汚染物質の除染材料であること。第三に、食用植物を植えた人口湿地は、微生物の栄養塩除去と炭素源利用に関する高い効能を示し、植物はランニングコストを抑えるために利用できることが示されました。

Dr.Thuongのプレゼンテーションは以上のように大変興味深く、実践的な意義を持つものでした。プレゼンテーションの後に行われたQ&Aセッションでは、豪雨への対処、人口湿地の有効なライフサイクル、村規模の人口湿地、およびそれを維持するために必要なスキルに関する質問が投げかけられました。Dr. Thuongは一つひとつの質問に丁寧に回答しました。本セミナーには様々な分野からの聴衆が参加しましたが、Dr. Thuongは、図を用いながら明快にプレゼンテーションを行うことで、専門外の研究者にもよくわかるように発表を行いました。Dr. Thuongの今後の研究のさらなる発展を期待できるセミナーとなりました。

59th報告写真
発表を行うDr. Thuong

過去のAJI最前線セミナーについては以下のリンクからご覧いただけます。
https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/young_researcher/seminar/archive/