所長室から

2024年も、よろしくお願い申し上げます

 明けましておめでとうございます。本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 昨2023年も、皆さまから温かい応援やご支援を、たくさんいただきました。日本も世界も、脱コロナ状況に向かう中で、コロナ禍の中で開発したDX(デジタルトランスフォーメーション)の手法と新たに定義され直したアナログの手法を合わせながら、所員みなで力を合わせて1年間の活動を展開してきました。ご支援、ご声援に、深謝申し上げます。

 研究高度化の第4期を実施している本大学では、その3年目を迎え、R2030チャレンジデザインがめざしている次世代研究大学への歩みを進めてきました。立命館アジア・日本研究機構も、その傘下の本研究所も、その一翼を担って、研究活動、成果発信、国際連携に力を入れてきました。

 1年間をふりかえって見ると、1月にはまず、多言語国際フォーラムMeridian180の「多言語連続ワークショップ」が実施されました。昨年は、「災害管理における『現地固有の知』とコミュニティ参加」をテーマに、5言語6文字、つまり、日本語、英語、中国語(簡体字と繁体字)、韓国語、インドネシア語を用いて報告と討議をおこないました。今回は、インドネシア語を加えたのが新しい点でした。

 今年は、1月28日に「高齢社会の新しい地域ガバナンス」を主題に、同フォーラムを開催する予定です。

昨年2月には、2023年のグローバル・シンポジウムを開催しました。今年も2月18日に、「アジア日本研究 グローバル・シンポジウム2024」を予定しています。今回は、ポスト・コロナ禍、世界に広がる戦乱、生成AIの登場で加速を強めているICT革命などを背景として、「立命館発 これからの価値創造と私たちの羅針盤:アジア・日本研究からの発信」と題して、薮中三十二先生の基調報告「東アジアの安全保障の危機と日本の針路:理想と外交力の架橋」と、アジア・日本研究所とRARA(立命館先進研究アカデミー)のリーダーの中から3教員が参加するパネル・ディスカッション「アジア・日本の未来と次世代の生きる力」を予定しています。オンライン配信いたしますので、是非、ご覧下さい。

 研究所の重要な役割として、学術誌を刊行して、研究成果発信の場として国内外の学術界に貢献する仕事があります。本研究所では、そのために英文学術誌2誌、和文学術誌1誌を毎年刊行してきました。

 3誌それぞれの特徴については、投稿者向けのご案内をご覧下さい。日本や世界の各地でアジア・日本研究にたずさわっている皆さまに、3誌それぞれが、研究成果の発信媒体として認知いただいていることは、とても嬉しく感じます。3誌とも、研究論文(および研究ノート)について厳密なダブルブラインドの査読をおこなっており、質の高い論文が掲載されているとの評価を耳にすると、編集長として身に余る光栄です(J-STAGEに3誌とも登録されておりますので、成果発信には好適かと存じます)。今年も、皆さまからのご投稿をお待ちしております。

 AJI Booksは、これまで英語を中心に刊行してきましたが、昨年は、日中韓の3言語を用いた研究成果も刊行されました。グローバルな発信という場合に、国際語としての英語を用いると利便性が高いのは言うまでもありませんが、本研究所では多言語主義の立場から、日本語を含めてアジア諸語も重視しています。その一環として、研究プロジェクトの1つは、アジアの多言語主義を主題としています。

 国際連携も、2023年には非常に活発に展開しました。2022年12月には、本研究所がベトナムのノンラム大学とMOUを締結し、それを基に2023年には3回におよぶ若手中心の国際ワークショップが開催されました。また、同じ2022年12月には、中国の浙大城市学院と本大学の大学間MOUが締結され、同月に大阪いばらきキャンパスで国際研究集会「日中ゼロカーボン都市フォーラム」が開催され、第2回が2023年12月に杭州市において開催されました(42万人の皆さまに視聴いただきました)。さらに、2023年9月には、UIII(インドネシア国際イスラーム大学)とのMOU締結の記念式典と記念国際シンポジウムが本大学で、2023年11月にはマレーシア国民大学(UKM)とのMOU締結を記念する国際シンポジウムがプトラジャヤ(マレーシア)で開催されました。

 これまでMOUを結んで連携してきたノースウェスタン大学とは、2023年1月に(上記の)国際多言語フォーラム、7月には同大カタル校のグローバル・サウス高等研究所との共催の国際シンポジウムが開催されました。同じくアジア太平洋地域の国際連携として、オーストラリア国立大学から客員研究員として本研究所に滞在なさる先生方をお迎えして、公開講演会も開催を続けています。今年も、1月に2回、公開講演会が予定されています。

 今年も、1月のMeridian180フォーラム、2月の若手主導の国際コロキアム、5~8月の国際ワークショップ、9~11月の国際シンポジウムをはじめ、盛りだくさんの国際連携活動を展開していきたいと思います。告知をご覧いただき、ご参加いただければ幸いです。

 若手研究者育成では、「大学院連携・次世代研究者育成プログラム」が3年目に入りました。これは、本学の大学院でアジア・日本研究の分野(およびその関連分野)で学位を取得した研究者に、常勤の研究・教育職をめざして研究力にいっそうの磨きをかけていただくプログラムです。その成果の現れというべきでしょうか、2023年4月には、一期生の一人が助教に昇任しました。

 さらに、若手研究者の育成について、第4期の研究高度化の一環として、研究部が学内の大学院と連携して、博士後期課程の院生育成に協力する仕組みが構築されてきました。本研究所でも、大学院博士課程の院生を対象とする「NEXTフェローシップ・プログラム」や、立命館先端研究アカデミー(RARA)のRARA学生フェローなどの育成支援に参画しています。2023年には、研究所重点研究プログラムの中で、博士後期課程の院生をRA(リサーチ・アシスタント)として雇用する「AJI-RA」プログラムも発進しました。

 和・英のバイリンガルなウェブサイト(ホームページ)の充実にこれまでも努めてきましたが、昨年は1月に、研究DXと連動する新企画として、AJI Webマガジン「アジア・マップ」をスタートいたしました。これは、アジア各国に関する学術的な成果に基づく情報発信として、単に情報やデータが豊富なだけではなく、深みのあるアジア認識を推し進めることを目的として刊行しています。アジア地図がクリッカブル・マップになっていて、地図の上でクリックすると各国に飛べる仕組みも含めて、読者の皆さまに好評を得ています。今年も、このマガジンのVol.2を刊行して、読んで楽しく、学術的にも信頼できるような発信を続けていきたいと思います。

 アジア・日本研究推進プログラムも、4月からスタートする新しい3つのプロジェクトが採択されています。3つのキャンパスで各プロジェクトの開始に向けて、現在、鋭意準備を進めています。

 学術3誌、AJI Booksの刊行も、しっかりと注力して続けていきたいと思います。

 そのほかにも、本学と本研究所のグローバル化を推進するさまざまな活動を企画しています。皆さまにも、順次、お知らせいたしますので、研究所ホームページをご愛読ください。

 本年も、どうぞご支援・ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

アジア・日本研究所所長 小杉 泰
(2024年1月1日)