2010年度・第2回FDフォーラム報告 |
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■ 2010年11月9日(火) ■ 立命館大学法科大学院朱雀キャンパス 218教室 □ 出席者 16名 |
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立命館大学法科大学院のカリキュラムでは、司法の現場に触れる科目としての「リーガルクリニックⅠ(法律相談)」「リーガルクリニックⅡ(女性と人権)」「エクスターンシップ」を選択必修として置き、全員が受講することになっている。今回のFDフォーラムでは、これらの科目の現状と、今後の改善課題を中心に、実務科目全体のあり方についても検討した。 | |||||||||||||||||
「立命館大学法科大学院における臨床科目の現状と今後の課題」 立命館大学法科大学院における臨床科目は、以下のようになっている。
クリニックⅠ、Ⅱとも、相談者からは、親切で一生懸命であった、親切な対応で嬉しかったなどの感想が寄せられている。学生自身も、クリニックⅠで、何が実務で重要であるかを痛感、事実を各授業で強調される理由を垣間見ることができた、自分の現時点での知識を活用できる場として有意義であったといった感想が、クリニックⅡでは、机上で学んだことを実務で生かす難しさ、生の相談に触れることができた、依頼者が本当に何を求めているのかを知ることは試験問題を解く上でもとても重要といった積極的感想が出されている。 日弁連法務研究財団の認証評価(2008年度)においても、立命館大学法科大学院の臨床科目は高く評価されており、「エクスターンシップ、リーガルクリニックⅠ・Ⅱを選択必修としている点も適切」とされている。
「実務科目(リーガルクリニック・エクスターンシップ)の履修状況と課題」 実際の履修状況としては、エクスターンシップが多い。最近の傾向として、春期が増えて夏期が減ってきている。履修者の感想では、判例や事実の解き方が分かったなど、おおむね積極的評価である。
派遣裁判官の立場から見ると、立命館が理想と現実の間で苦悩していることが良くわかる。また、一定の成果を上げていることは理解している。しかし、法科大学院としては1人でも多くの院生に司法試験に合格していただかないといけない。そこで、その目標に沿ってカリキュラムを幾分変更してもよいのではないか。実際に要件事実論を教えた実感でもある。 要件事実論は実務家の共通言語として必要性を否定できない。新司法試験でも、要件事実論的な分析を要する問題が出題されている。実務にとって事実認定論のほうが大事だが、それは実務家が一生かけて磨いていくものであって、院生に簡単に教授できるものではない。そのため極めて初歩的な内容にとどめている。 前期に採点した印象は、民法(実体法)の知識が要件事実論に即して充分に咀嚼されていないということである。学生の話を聞くと、「判例や論点、有力説も理解している。しかし、要件事実という枠にのせたとき、それがどうなるのかがさっぱりわからない」とのことだった。確かに容易ではなく、地道に深めていく必要があるが、S1/L2の前期15コマではやや少ないかもしれない。前期の基礎をクリアした学生につき、さらにつっこんだかたちで要件事実論を教えても良いのではないか。 なお、債権法や物権法等の講義の中で逐一要件事実論を扱う必要はないと考える。学生に体系的に学んでもらう為には、従来のオーソドックスな民法の講義には捨てがたい魅力がある。要件事実論はそれに並行するように実務家教員が行なえばよいと思う。車の両輪のようになれば学生にとっても親切かなと思う。 これらの報告を受けた議論では、臨床系科目の現状に関して、その成果と問題点が確認されるとともに、カリキュラム改革の中でこれらの科目を含む実務科目をどう改革していくかについて意見交換が行われた。その結果、要件事実教育についてより強化していくことについては一致が見られた。また、臨床系科目の意義についても確認されたが、今後の改革において選択必修制を維持すべきかどうかについては意見が分かれた。この点については、教授会の下におかれた改革検討ワーキングや教務委員会でさらに検討を行うことになった。 |