立命館白川静記念東洋文字文化賞 第1回~第3回

「立命館白川静記念東洋文字文化賞(略称 立命館白川静賞)」について

---------- 制定の趣旨 ----------

日本の社会と文化の発展、また東アジアの交流と相互理解の歴史を顧みるに、漢字を中心とする東洋文字文化は大きな役割を果たしてきました。東洋文字文化はこれからも日本および東アジアの精神的支柱であり続け、その振興は重要な意義が有ると考えます。

この賞は、立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所が、東洋文字文化に関する研究、普及および教育活動等の奨励支援のため、優れた個人および団体の業績を表彰することを目的としています。日本社会・文化の継承と発展、東アジアの平和と繁栄のために本賞の制定がその一助となることを願っています。

<対象者>

  1. 立命館白川静記念東洋文字文化賞大賞特にすぐれた業績のもの
  2. 立命館白川静記念東洋文字文化賞教育普及賞教育指導ならびに
    漢字文化の普及に貢献したもの
  3. 立命館白川静記念東洋文字文化賞奨励賞若手の研究者

第3回「立命館白川静賞」の選考について

第3回立命館白川静賞の選考は2008年11月に行われましたが、「該当者なし」との結果となりました。

第2回「立命館白川静記念東洋文字文化賞」

第2回「立命館白川静記念東洋文字文化賞」は以下の2件に贈ることを決定し、2007年9月28日、立命館大学朱雀キャンパス中川会館にて表彰式を行いました。

受賞者 日本漢字教育振興協會(代表 理事長 土屋秀宇)
対象業績 幼児・児童への漢字教育活動
副賞 賞金 50万円
受賞者 エヴゲーニィ・イヴァーノヴィチ・クチャーノフ
Евгений Иванович Кычанов
ロシア科学アカデミー東方学研究所
荒川慎太郎
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所准教授
対象業績 『タングート(西夏)語辞典』
СЛОВАРЬ ТАНГУТСКОГО(СИ СЯ)ЯЗЫКА;
Тангутско-русско-англо-китайский словарь
副賞 賞金 50万円

---------- 授賞理由 ----------

(1)日本漢字教育振興協會

「漢字は、かなに比べて難しいので、かなの後に漢字を学習させる」という一般的な認識があると思われるが、日本漢字教育振興協會が行っている石井式に基づく方法は、幼児の視覚認識力に着目し、むしろ早期からの漢字学習を奨励し、さらに昔から伝えられている物語を仲立ちにして無理なく漢字を読むことができるようにする等、優れた内容を実践している。さらに漢字を覚えることだけではなく、「読み検定」の実施等、漢字・言葉を通した知識全般の拡大および情操教育に発展させていること、また長年の継続的活動そしてその活動が広がっているという実績を評価した。

(2)E.I.クチャーノフ 氏と荒川慎太郎 氏

古代語である西夏語の研究は、現在使用する者がいなくなったからこそ、学問的にも高い価値を有し、その困難さには計り知れないものがある。そしてこの分野に対して地道な資料収集と分析に取り組むことによって、辞典を完成した。西夏語・文字と中国語・漢字との対照表は古くから存在するが、これは字典(もじてん)ではなく辞典(ことばてん)であることが汎用性を非常に高めている。今後日本・中国・台湾を始めとする世界の西夏語・西夏文字の研究、さらには東洋史の研究に資することが期待される。

---------- 総括 ----------

第1回の推薦事項は、白川文字学および現代の漢字文化に関するものがほとんどでしたが、第2回はそれらに加え、古代漢字や漢字以外の東洋文字を対象とする推薦が有りました。「東洋文字文化」の概念および本賞の趣旨が、広く認知されるようになった結果であると認識しております。優れた業績が多数寄せられ、選考は昨年以上に難航しました。
本賞では先ほど申し上げた通り、3つの領域に基づく審議を行うこととしました。これは、本賞が白川文字学だけにとどまらず、広く東洋文字文化の分野における業績を対象とすることを示しています。
第3回の募集要項は追って発表いたしますが、本賞の制定が日本社会・文化の継承と発展、東アジアの平和と繁栄のための一助となることを願い、多数の推薦が有ることを期待します。

-------- 立命館白川静記念東洋文字文化賞選考委員会--------

委員長 高杉巴彦(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所副所長、学校法人立命館常務理事)
委員 上野隆三(立命館大学教授)
加地伸行(大阪大学名誉教授、同志社大学専任フェロー)
木村一信(立命館大学教授・文学部長)
下中美都(株式会社平凡社取締役)
本郷真紹(学校法人立命館初等・中等教育担当常務理事)
 ※五十音順

選考委員会は、締め切りの2007年2月末日までに各団体から推薦のあったものを審議しました。委員会では、まず本賞の設立趣旨に基づき、推薦のあった候補を以下の3つの領域に基づいて業績を評価・審議することが決定されました。

①故・白川静博士(当時、名誉研究所長)の学問の継承・発展を目的としたもの。
②東洋文字文化の研究・調査にかかわるもの。
③東洋文字文化の教育・普及にかかわるもの。

この決定に基づき推薦された候補の業績を分類し、全会一致で上記2件を表彰することを決定しました。

第1回「立命館白川静記念東洋文字文化賞」表彰式

第1回「立命館白川静記念東洋文字文化賞」は以下の2件に贈ることを決定し、2006年6月3日、立命館大学末川記念会館にて表彰式を行いました。

表彰式の写真
受賞者 沈慶昊(韓国・高麗大学教授)
対象業績 』(ハンジャ ペッカジ イヤギ),2005年 韓国・牡牛座
(白川静著『漢字百話』中公文庫2002年/中公新書1978年の韓国語翻訳版)
副賞 賞金 50万円
受賞者 漢字字体規範データベース編纂委員会
(代表 石塚晴通 北海道大学名誉教授)
対象業績 「漢字字体規範データベース」(URL http://joao-roiz.jp/HNG/)
副賞 賞金 50万円

---------- 授賞理由 ----------

(1)沈慶昊 氏

』は、韓国での刊行後新聞各紙で直ちに書評が出され、注目を浴びた。自国語の表記法についてハングル専用と漢字併用との間で方法を模索している韓国において、漢字の諸問題や今日的課題を問う本書が刊行された意義は大きい。今後も白川の他の著作にとどまらず、日本での漢字研究の成果を韓国に紹介し、また韓国での研究成果を日本に紹介・比較研究を行うなど、日韓間の漢字研究の架け橋的役割を担うことを期待する。

(2)漢字字体規範データベース編纂委員会

大量の写本を丁寧に集め、膨大な時間をかけて資料を完成させる地道な努力をし、「字体・書体辞典」のような異体字や字体の集積とは別に「字体のゆれ」を把握するという、まさに日本的な着眼を行い、さらに中国だけではなく日本のものも収集し、編年化している。またこのデータベースを無料で公開しており、研究者に限らず書道家等の活動にも寄与することが期待される。選考委員会時点での公開内容は、整備・点検の終了された16文献(異なり字種3,638字種、総用例136,390字)のものですが、その後2006年4月に32文献(異なり字種4,037字種、総用例228,976字)のものに拡大している。韓国資料等も含めた全67文献、40万用例の資料が存在するということであり、それらの一日も早いデータベース化と、字体規範に関する研究を更に深められることを期待する。

---------- 総括 ----------

第1回と言うことで広報活動も十分ではなかったため、本賞がどこまで認知を得、その趣旨にご賛同いただけるのかを危惧していましたが、幸いなことに多数の推薦を得ることができました。残念ながら最終的に受賞には至りませんでしたが、優れた内容のものが多数有り、東洋文字文化に関する長年の活動が地道に行われてきたことや、日本国内で外国人が漢字を理解する必要性が有り、そのために様々な試みや工夫がなされてきたことを改めて感じております。

本賞では上述の通り3つの領域に基づく審議を行うこととしました。これは、本賞がいわゆる白川文字学だけにとどまらず、広く東洋文字文化の分野における業績を対象とすることを示しています。第2回の募集要項は追って発表しますが、多数の推薦が有ることを期待しています。

-------- 立命館白川静記念東洋文字文化賞選考委員会--------

委員長 高杉巴彦(学校法人立命館総務担当常務理事)
委員 上野隆三(立命館大学教授)
加地伸行(大阪大学名誉教授、同志社大学専任フェロー)
木村一信(立命館大学教授・文学部長)
下中美都(株式会社平凡社取締役)
本郷真紹(学校法人立命館初等・中等教育担当常務理事)

選考委員会は、締め切りの2006年2月末日までに各団体から推薦のあった
ものを審議しました。委員会では、まず本賞の設立趣旨に基づき、推薦の
あった候補を以下の3つの領域に基づいて業績を評価・審議することが決定
されました。

①白川静名誉所長の学問の継承・発展を目的としたもの。
②東洋文字文化の研究・調査にかかわるもの。
③東洋文字文化の教育・普及にかかわるもの。

この決定に基づき推薦された候補の業績を分類し、全会一致で上記2件を表彰することを決定しました。

立命館白川静記念東洋文字文化賞
選考委員会


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