講演会・シンポジウム

漢字学研究会シンポジウム
「漢字文化の展望」

 3月19日にオンラインシンポジウム漢字文化の展望を行なった。

 日本は独自の文字をもたない国です。「漢字があるではないか」というなかれ。あれは隣の国の発明で日本人はそれを借りているだけです。「ひらがな・カタカナがあるじゃないか」というなかれ。あれは漢字の草書体や漢字の一部分を利用したものです。そもそも漢字がなければ、ひらがな・カタカナは存在しませんよ。だから日本は独自の文字をもたない国です。
 でも、いじけてはいけません。歴史が始まってから以降、そういう例は多々あります。シュメールが文字を発明し、アッカドはそれを利用しました。シュメールとアッカドの文法はまったく異なるんですよ。でも文字は文法とはかかわりなく使えます。「そういえば、たしかに中国語と日本語の文法は違うよな」と、あたりまえのことに、いまさら気づきましたか。ついでにいえば、日本語と英語の文法もまったく異なるのに、ふつうにローマ字を使ってますよね。
 「山」は本来、何と読みますか?「やま、でしょ」。ざんねん!それは本来、読み方ではなくて、やまとことばを宛てただけの宛字(当て字)ですよ。日本語を知らない中国人に読んでもらってごらんなさい。「やま」とは読みません。いまだったら「shan」、唐代あたりだったら音読みの「サン」に近いかな。
 さて、「漢字」という語は、唐代あたりにはじめて作られました。そのことは、今回の発表者の山田崇仁氏が詳しく調べられています。だから、厳密にいえば、それ以前の中国の文字は漢字とはいえないのです。でも、今回は堅いことはいわず、甲骨文あたりから始まる文字も含めて漢字としましょう。甲骨文・金文・篆書・隷書・楷書・行書・草書といった字体の変遷はあるものの、紡ぎだされた文字文化は中国国内だけでなく周辺の国々にまでひろがっていきました。そこにはたくさんの人々が往き来したはずです。人が来なければ、あるいは人が往かなければ、発音だってわかりません。漢字の文化は人々の交流の記録でもあるのです。
 金文京氏には、東アジア全体を視野に入れた大きなお話をしてもらおうと思います。ただ、あちこちに細かい話も入れてもらうつもりです。
 曹方向氏には、出土資料のお話をしてもらいます。ここ掘れ、ワンワンというわけではありませんが、地中という過去からは出土文献という宝物が出てきます。一流の学者が推論を重ねて考察したことが、「こんなものが出てきましたよ」で、一瞬にしてくつがえってしまいます。こわい世界です。でも、こわいものほど面白いんです。
 山田崇仁氏には、現在のデジタル化された漢字文献の扱い方とその未来を語ってもらいましょう。いまは四庫全書の七億文字が一瞬で検索できます。ただ、それだけでは足りないことがあります。さきにみた「漢字」という語が唐代に出てくるということは四庫全書では調べられません。仏教関係のデータベースも調べる事によってはじめてわかるのです。新しい資料とツールによって漢字文化は新たな展望を見せるでしょう。

シンポジウムの様子

シンポジウムの様子

日 時 2022年3月19日(土) 14:00~17:00
場 所 立命館大学 衣笠キャンパス
講 師 基調講演
東アジア漢字文化の過去・現在・未来
金文京 京都大学名誉教授 

簡牘文字"各"旁的省略
曹方向 海南師範大学
通訳 草野友子 JSPS特別研究員

中国古文字のデジタルテキスト化に関する諸問題
山田崇仁 立命館大学

鼎談
漢字文化の展望
金文京・曹方向・山田崇仁
司会 村上幸造 立命館大学

総合司会 山本優紀子 立命館大学 

立命館土曜講座―白川静生誕110年記念企画―
「歴史の謎を解く鍵としての白川文字学~岡野玲子 漫画作品の制作から~」

 2020年9月26日(土)、立命館土曜講座が開催されました。今回の土曜講座は白川静生誕110周年記念として、漫画家の岡野玲子氏を講演者としてお招きし、「歴史の謎を解く鍵としての白川文字学~岡野玲子 漫画作品の制作から~」というテーマで講演をいただきました。
 岡野氏が執筆された漫画「陰陽師」は、主役の天文博士安倍晴明が実在した、平安時代の史実に基づいた物語です。当日は、会場のスクリーンに「陰陽師」に登場する実際の場面を映し出しながら、物語の元となった当時の時代背景や陰陽道の考え方などについて解説いただきました。また、これらを調べる上で、白川文字学・白川博士の著作物からいかに示唆を得たか、漢字の成り立ちの姿と意味の多重性の魅力についてご説明いただきました。その中で、2001年に別冊太陽「白川静の世界」で白川博士と対談された際のエピソードについてもお話しいただきました。
 また、講演会の隣接会場では、白川静生誕110周年の特別展示も開催され、白川先生の学問の歩みと栄典の数々を来場者の皆様にご覧いただきました。 今回は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、定員を100名に限定しての開催でしたが、講演中は皆さま興味深く耳を傾けておられ、講演後も岡野様への質問を希望される方が列を作るなど、大変好評をいただきました。

岡野玲子氏

講演の様子

漫画「陰陽師」を使用した展示

特別展示の様子

日 時 2020年9月26日 13:00~14:30
場 所 立命館大学 衣笠キャンパス 存心館301教室
講 師 岡野 玲子氏(漫画家)

1982年、『エスタープリーズ』にてデビュー、少女漫画誌から活動を
始め、若い僧侶を主人公にした『ファンシィダンス』が好評を得て、
小学館漫画賞受賞。夢枕獏原作による『陰陽師』が大ヒットし
社会現象になる。手塚治虫文化賞受賞。
他の作品に『両国花錦闘士(りょうごくおしゃれりきし)』
『妖魅変成夜話(ようみへんじょうやわ)』、『コーリング』などがある。
2001年、『別冊太陽』(平凡社)において白川静先生との対談記事が
掲載される。

漢字と書-日中韓のはざまと女性-

白川静博士没後十年企画として、2017年12月16日[土] 日中韓に関する女性研究者による鼎談が開催されました。 三カ国における漢字事情や白川文字学などについて、楽しく語っていただき、 また、華雪氏には漢字への理解や思いを込めた書の揮毫実演をしていただきました。

筆先に集中力をこめる華雪氏

講演会の様子

張莉(大阪教育大学)

華雪氏(書家)

久保裕之(社会連携課専任職員)

金津日出美(立命館大学)

日 時 2017年12月16日(土)
11:00〜13:00
場 所 立命館大学 衣笠キャンパス
創思館カンファレンスルーム
報告者 ■華雪(かせつ):書家
1975年京都府生まれ。書家。立命館大学文学部哲学科心理学専攻卒業。 1992年より個展を中心にした活動を続ける。(文字を使った表現の可能性を探る)ことを主題に国内外でワークショップを開催。 舞踏家など他分野の作家との共同制作も多数。
■張莉(ちょうり)
1968年生まれ。中国天津市出身。大阪教育大学教育学部特任准教授。白川静記念東洋文字文化研究所客員研究員。 書道文化・中国語を教える傍ら漢字を中心とする中国・日本の文化史を研究している。
■金津日出美(かなづひでみ)
1968年三重県生まれ。韓国新羅大学校専任講師・高麗大学校副教授を経て立命館大学文学部准教授。 日中韓の学生に日本文化を教える一方、近代東アジアを移動した人びとの貧困・抑圧・病いについて研究している。

「平井嘉一郎記念図書館」開館記念事業・白川静博士没後十年企画
白川静先生を語る会

2016年12月15日、立命館大学衣笠キャンパスにおいて「白川静先生を語る会」が開催されました。“在りし日の白川先生を偲ぶ”語る会は、本研究所副所長の芳村弘道(文学部教授)の司会により、白川先生のご長女である津崎史氏、『白川静の世界』(平凡社)の編者をされた西川照子氏にお話いただきました。白川先生の学問や研究に触れ、資料だけでは見えなかった先生のお人柄について語られました。
また、図書館では、白川先生の学問の歩みとお人柄を回顧する特別展示を開催し、多くの方にご来館いただきました。

「白川静文庫」特別展示~白川静の世界~


2016年度国際シンポジウム白川静博士没後十年企画
「白川学の現在と展望」について

2016年12月3に国際シンポジウム「白川学の現在と展望」が開催されました。故白川静博士(立命館大学名誉教授)の学問は「白川学」と総称され、さまざまな学問的影響を各分野に与え続けています。本シンポジウムでは、漢字文化圏の各国から臧克和氏(中国)、張宇衛氏(台湾)、魯耀翰氏(韓国)、張莉氏(日本)の4名をパネラーとして招き、国際的な視点から各国における「白川学」の受容の歴史と現状について語って頂き、さらに今後の学問の展開に「白川学」がどのような役割を果たしていけるのかという点について考察しました。
当日は研究者や一般市民など100名余りが会場に集まり、各氏の講演に熱心に耳を傾け、活発な議論がなされました。

※本シンポジウムは橋本循記念会「研究交流活動助成」の助成金を受けております。

日 時 2016年12月3日(土)
13:20〜18:00
場 所 立命館大学 衣笠キャンパス 創思館1F
カンファレンスルーム
講演者 臧克和氏(華東師範大学・世界漢字学会会長)
張宇衛氏(台湾中央研究院)
魯耀翰氏(高麗大学校)
張莉氏(大阪教育大学)

2015年度国際シンポジウム

2015年11月28日、立命館大学衣笠キャンパスにおいて、国際シンポジウム「漢字文献の現在」が開催されました。中国を中心とする漢字文化圏内においては、まさに無数の漢字文献がこれまで産み出されてきました。それらは、鈔本や刊本のかたちで伝わり、歴代の学者や読者によって多くの研究や鑑賞がなされ、東アジアの重厚な文化を形成しています。さらに20世紀以降は、甲骨片や敦煌文書の発見が学界に大きな衝撃を与え、また近年では簡牘などの出土文献も加わって、漢字文献は多様な様相を呈しています。若手及び中堅の研究者4名による本シンポジウムでは、それら多様な漢字文献からいくつかを取り上げて、その歴史的・今日的な意義やさまざまな研究への活用について考察し、漢字文献研究の深化を図っています。

※本シンポジウムは橋本循記念会「研究交流活動助成」の助成金を受けております。

日 時 2015年11月28日(土)
13:20〜17:30
場 所 立命館大学 衣笠キャンパス 創思館1F
カンファレンスルーム
講演者 田天氏(首都師範大学歴史学院講師)
張立克氏(東北大学秦皇島分校講師)
王亮氏(復旦大学中華古籍保護研究院副研究館員)
住吉朋彦氏(慶應義塾大学附属研究所斯道文庫教授

2014年度国際シンポジウム「西洋・東アジアと漢字文化の出会い」報告

2015年3月8日、立命館大学衣笠キャンパスにおいて、「白川静記念東洋文字文化研究所」と「間文化現象学研究センター」の共催による国際シンポジウム「西洋・東アジアと漢字文化の出会い」が開催されました。
今回のシンポジウムでは、香港、韓国、フランスから漢字の研究者にお越しいただき、西洋にはない「漢字」という文字文化が、西洋で、また東アジアでどのように受け取られてきたのか、また西洋の学問の方法からどのように理解できるのか、といった観点から考察していただきました。
3人の先生のご発表は、いずれも漢字文化が歴史的にも地理的にも非常に大きなスケールで多くの文化との出会いを経験してきたこと、そしてその経験を研究することのうちに、西洋と東アジア文化の「あいだ」で生きることの豊かさと難しさを理解する鍵があることを教えてくださいました。多くの聴衆から熱心な質問が寄せられ、暖かい拍手で国際シンポジウムは終了しました。今後もこのような国際的な研究交流が行なわれることを願っております。

日 時 2015年3月8日(日)
13:00〜17:00
場 所 立命館大学 衣笠キャンパス 敬学館210教室
講演者 司会 加國尚志氏(立命館大学)
關子尹氏(香港中文大学)
沈慶昊氏(高麗大学校)
フランソワーズ・ボッテロ氏
(フランス国立科学研究センター・東アジア言語研究所)

白川静 生誕100周年フォーラム

以学館2号ホールにおいて、白川静先生の生誕100周年記念フォーラムが開催されました。
第1部は、第4回立命館白川静記念東洋文字文化賞表彰式を実施。教育普及賞を久米雅雄氏(大阪芸術大学客員教授)が、奨励賞を岡墻裕剛氏(北海道大学大学院文学研究科専門研究員)が受賞されました。
第2部は、編集工学所長の松岡正剛氏の講演会。日中の古典『万葉集』『詩経』を同時に読んで古代社会の変化を理解した白川静先生の研究手法の一端を紹介しました。
第3部は、座談会「白川静を語る」を実施。白川静先生に身近な人たちが「睡眠時間5時間で研究に打ち込んだ」「学識がありながら、人一倍謙遜していた」といった思い出などを披露しました。白川静先生の学問的成果を中国・韓国などの東アジアにもっと広げること、電子化対応の必要性を求める声もありました。

フォーラム写真 フォーラム写真

第2部 松岡正剛氏の講演の様子

フォーラム写真

第3部 座談会「白川静を語る」の様子

日 時 6月6日(日)
13:00〜15:00
場 所 立命館大学 衣笠キャンパス 以学館2号ホール
内 容 1部 第4回立命館白川静記念東洋文字文化賞表彰式
第2部 松岡正剛氏講演
第3部 座談会「白川静を語る」

好奇字展 -白川静と東洋文字文化の世界-

本展では、漢字の世界だけでなく、漢字と接する地域にみられるさまざまな「非漢字」の世界、および白川静の世界に皆さまをご招待します。
両研究所の所蔵する貴重資料、現地からもたらされた写本類、各地の日常でも今も生きる文字資料、ユニークな字典類などをご覧いただきます。

会 期 2009年1月7日(水)~ 1月17日(土)
※期間中休みなし
開 場 午前9時30分~午後5時
(入場は午後4時30分まで)
料 金 大人:500円・中高生:400円・小学生:300円
※立命館の学生・教職員は入場無料
会 場 立命館大学衣笠キャンパス
以学館地下多目的ホール
主 催 立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
協 力 文字鏡研究会・有限会社エムズ
後 援 京都府教育委員会・京都市教育委員会
展示される文字群 漢字・チューノム(字喃)・モンゴル文字・チベット文字・女書・ロロ(彝)文字・ハングル・満洲文字・アラビア文字・パスパ文字・梵字・フレイザー文字など
東洋文字コーナ ロロ(彝)文字による占いの書・トンパ文字経典・チューノム(字喃)の詩歌集・契丹文字碑文の拓本・西夏文字の発音字典・チベット文字習字帳など
白川静コーナー 自筆原稿・代表著作・甲骨文字トレース・蔵書・愛用の電子機器や趣味の品など

チラシのダウンロード

「立命館白川静記念東洋文字文化賞」記念講演会

日 時 2009年1月11日(日)
15時~17時(予定)
場 所 衣笠キャンパス 末川記念会館講義室(1階)
講演者 石塚 晴通
(北海道大学名誉教授・漢字字体規範データベース編纂委員会)
(2006年第1回「立命館白川静賞」受賞者代表)
内 容 「漢字字体規範データベース(HNG)」について(仮題)
入場料 無 料(事前申込不要)
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