立命館白川静記念東洋文字文化賞

「立命館白川静記念東洋文字文化賞(略称 立命館白川静賞)」について

---------- 制定の趣旨 ----------

日本の社会と文化の発展、また東アジアの交流と相互理解の歴史を顧みるに、漢字を中心とする東洋文字文化は大きな役割を果たしてきました。東洋文字文化はこれからも日本および東アジアの精神的支柱であり続け、その振興は重要な意義が有ると考えます。

この賞は、立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所が、東洋文字文化に関する研究、普及および教育活動等の奨励支援のため、優れた個人および団体の業績を表彰することを目的としています。日本社会・文化の継承と発展、東アジアの平和と繁栄のために本賞の制定がその一助となることを願っています。

<対象者>

  1. 立命館白川静記念東洋文字文化賞大賞特にすぐれた業績のもの
  2. 立命館白川静記念東洋文字文化賞教育普及賞教育指導ならびに
    漢字文化の普及に貢献したもの
  3. 立命館白川静記念東洋文字文化賞奨励賞若手の研究者

第11回「立命館白川静記念東洋文字文化賞」表彰式

第11回「立命館白川静記念東洋文字文化賞」は以下の2件に贈ることを決定し、2017年4月22日、立命館大学衣笠キャンパス 平井嘉一郎記念図書館カンファレンスルームにて表彰式を行いました。

立命館白川静記念東洋文字文化賞優秀賞

受賞者 笹原宏之(早稲田大学社会科学総合学術院教授)
対象業績 国字の研究
副賞 賞金 30万円

立命館白川静記念東洋文字文化賞奨励賞

受賞者 成田健太郎(東京大学附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄附研究部門特任研究員)
対象業績 『中国中古の書学理論』および王羲之・顔真卿関連の論考
副賞 賞金 20万円

---------- 授賞理由 ----------

(1)立命館白川静記念東洋文字文化賞優秀賞 笹原宏之 氏

対象業績は、国字に関する日本語学界初の体系的な研究書で、学術的に極めて高い水準にあり、これを超える研究成果は発表されていません。これらは、日本語学界における国字に関する誤解等を修正するもので、漢和辞典等の記述をより精緻なものにすることに貢献するものです。今後、さらに国字研究を発展することが期待されます。

(2)立命館白川静記念東洋文字文化賞奨励賞 成田健太郎 氏

対象業績は、唐の張懐瓘による書論『書断』をベースとしながら、「勢」「訣」「風格」「筆勢」など、これまであまり取り上げられなかった視点から、深みのある考察を行っています。考察は、独創的かつスタンダードになりうる内容であり、今後、文字学・書道史を学ぶものにとって必読書となると思われます。

-------- 立命館白川静記念東洋文字文化賞選考委員会--------

委員長 杉橋隆夫(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所長)
委員 加地伸行(衣笠総合研究機構特別研究フェロー)
下中美都(株式会社平凡社代表取締役社長)
上野隆三(立命館大学文学部教授)
芳村弘道(立命館大学文学部教授)
萩原正樹(立命館大学文学部教授)
 ※順不同

第10回「立命館白川静記念東洋文字文化賞」表彰式

第10回「立命館白川静記念東洋文字文化賞」は以下の3件に贈ることを決定し、2016年10月15日、立命館大学衣笠キャンパス 平井嘉一郎記念図書館カンファレンスルームにて表彰式を行いました。

立命館白川静記念東洋文字文化賞大賞

受賞者 上島有(摂南大学名誉教授)
対象業績 ユネスコ記憶遺産として登録された国宝、
『東寺百合文書』の整理・研究
副賞 賞金 50万円

立命館白川静記念東洋文字文化賞教育普及賞

受賞者 冨谷至(京都大学人文科学研究所教授)
対象業績 簡牘、出土文献の知識の普及
副賞 賞金 30万円

立命館白川静記念東洋文字文化賞奨励賞

受賞者 武内康則(京都大学白眉センター助教)
対象業績 契丹語、契丹文字の研究
副賞 賞金 20万円

---------- 授賞理由 ----------

(1)立命館白川静記念東洋文字文化賞大賞 上島有 氏

上島氏は、京都府立総合資料館所蔵の「東寺百合文書」の整理とその研究に長く従事され、日本の中世古文書学・中世歴史研究に多くの業績を打ち立て、多大な貢献を果たされている。同氏は、これまでに『東寺・東寺文書の研究』(思文閣出版、1998)をもって第21回角川源義賞、また密教学芸賞を受け、斯界に赫赫たる名声をすでに馳せておられるが、90歳をこえてなお大著『中世アーカイブズ学序説』を世に問われ、古文書学に新しい方法を提唱する旺盛な研究を示された。長年に亘る古文書研究は、広く日本の学問世界のみならず、文字学においても敬意を表すべきものであると、高く評価する。

(2)立命館白川静記念東洋文字文化賞教育普及賞 冨谷至 氏

冨谷氏の主著『木簡・竹簡の語る中国古代――書記の文化史』刊行の2003年当時、出土文献についての専門書は少なく、また体系的に論じる書はほとんどなかった。同書は、専門的な内容を含みながら、一般向けにわかりやすく解説され、難しい言葉にはルビや説明をつけるなどして読み易い。題名にある木簡・竹簡だけではなく紙以前の甲骨から紙への移行までを追って書かれており、多くの人への簡牘、出土文献の知識の普及という点においては大変優れた書籍である。 簡牘の内容が中国西北辺境の漢代の行政文書と限定的ではあるが、これまでに無かった辞典であり、文字学のみならず行政史の研究の上でも高い価値を有するものである。

(3)立命館白川静記念東洋文字文化賞奨励賞 武内康則 氏

武内氏は、契丹小字中の漢語軟口蓋音の音写を扱い、契丹語の軟口蓋音の1部を解明した。また、漢語史書における漢字による音写で記録された契丹語に着目し、契丹語の音声特徴、特に音素配列に関する重要な特徴を明らかにした。同氏の研究は一見オーソドックスな分析であるが、漢語音韻学・契丹文字、特に小字の構造・モンゴル諸語の音韻に精通し、データの丹念な検証なくしてはなしえないものといえる。契丹文字は使用された期間は短いものの、その研究はモンゴル諸語の古層、遼・契丹族の歴史と文化、疑似漢字の類型といった様々な研究に寄与する。若手ながら有意義な多くの論考を持つ研究は今後も
斯界に貢献できるものと期待できる。

-------- 立命館白川静記念東洋文字文化賞選考委員会--------

委員長 杉橋隆夫(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所長)
委員 加地伸行(衣笠総合研究機構特別研究フェロー)
下中美都(株式会社平凡社代表取締役社長)
上野隆三(立命館大学文学部教授)
芳村弘道(立命館大学文学部教授)
 ※順不同
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