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SGH Rits Super Global Forum (RSGF) 2018 報告⑦ エピローグ RSGFの5年間で見えたもの
2018.12.08
Super
Global High School (SGH)
RSGF2018報告⑦ 5年間で見えたもの(補遺)
SGH Rits Super Global Forum (RSGF) 2018 エピローグ
RSGFの5年間で見えたもの
~実施報告⑦ 補遺~
11月13日(火)~17日(土)にかけて本校で開催されたRits Super Global Forum(RSGF)2018。2014年度から実施し今年度で5回目を終えることができました。5年間実施してきて見えてきたものは何だったのでしょうか。
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5年間をデータで簡単に振り返ってみる。
2014年度 海外3校(2カ国・地域。最終2校に)
実施 2015年1月28日(水)~2月2日(月)
日曜日をはさんで6日間。GLコース生は2年生のみで3年生は存在せず、2日間体験学習棟に宿泊。
テーマ:貧困、ボランティア、気候変動、自然災害、世界平和の5つのテーマに分かれて議論。メインテーマはなし。
2015年度 海外8校(6カ国・地域)
実施 2016年1月19日(火)~1月24日(日)の
6日間。日曜にクロージング。GLコース3年生が誕生。この年から本校生の宿泊はなしに。
テーマ:メインテーマを世界平和の実現とし、難民(移民)、児童労働、食糧安全保障、ジェンダー、紛争資源の5つのトピックをおいた。
2016年度 海外10校(8カ国・地域)
実施 2016年11月15日(火)~11月19日(土)
この年から会期を5日間に。また、11月開催とすることに。Internationl November(国際月間)と銘打ち、JSSF、APU交流企画など学校を国際交流一色の11月に。
テーマ:メインテーマを貧困問題の解決とし、政治的、経済的、教育的、健康衛生的、社会的の5つのアプローチから考えることとした。
2017年度 海外11校(9カ国・地域)に加え、初の国内校招聘(2校)。
実施 2017年11月14日(火)~11月18日(土)
テーマ:メインテーマをこどものための教育とし、児童労働、ジェンダー不平等、学校へのアクセス、自然災害、難民(難民キャンプ)の5つのトピックをおいた。
2018年度 海外11校(10カ国・地域)に加え、立命館附属の国内校招聘(2校)
実施 2018年11月13日(火)~11月17日(土)
テーマ:メインテーマを食糧安全保障とし、生産者、消費者、企業、政府、NGO(NPO)・ボランティアの5つのステークホルダー(アプローチ)をおいた。
1年目は本当に手探りだった。当初はディスカッションの手法についても教員とTAとのコラボレーションを推し進め、立命館メソッドを確立しようとした。しかし、恒常的な協力体制を構築することが困難であることもあり、それを断念。生徒自身がディスカッションをリードできるようになることを目指した。そしてそれは昨年度から現実の体制として機能し出している。まだまだではあるが、今後の可能性には手応えを感じている。また、ディスカッションを通して何を得ようとするのかについては、1年目から真摯な議論を続けてきた。まだ結論が出たとは言い切れない。しかし今年度の到達点から考えると、複雑な議論を経たのちに到達したのは、ある意味茫洋でありふれたシンプルなものであった。しかし、得てして議論とはそのようなものかもしれない。人と人との「コネクト」の行き着く果てはシンプルなもので、これは世界の現実と同じだ。具体的な形を追求し、それに向けて協働する努力は惜しまないが、形にならなかったから失敗だったとか、無理に形にしようとする必要はないのかもしれない。なぜなら、RSGFはゴールではないからだ。RSGFは一つの通過点にしかすぎないのだから。
RSGFが3年目の節目を迎えた2016年度RSGFの終了後、それまでの歩みを振り返って次のように書いた。ここに一部を抜粋したい。
(HP記事「RSGF2016閉幕」から抜粋)
教育の現場で「国際化」は今やディフェンスだ。「海外に行きました」。国際交流をしているというだけではもはや通用しない現状。いたずらに海外交流校の数を競うことはプレ・モダン的発想で、単に生徒たちや教職員が疲弊するだけ。交流することで何を目指すのか、どういう力をつけようとしているのか。国際交流の質が問われている現在、本校のアドバンテージはどこにあるのか。
今年度の3年生は、本校がSGHに指定された年に入学し3年間そのプログラムを体験してきた世代である。このフォーラムで3年生の活躍ぶりはすさまじかった。誰がということではない、波状的に全員が。インクルーシブ・リーダーシップ( Inclusive Leadership )という、本校SGHが目指すグローバル・リーダーシップのひとつの形として。
だからこそ、そういう彼(女)らに応えたかった。そして、RSGFにも万全の体制で臨むことを心がけた。HSFW( Human Security Field Work in Kamagasaki)と題して、GLコース2,3年全員で大阪西成区釜ヶ崎地域をフィールドワークし、事前学習では成山校長や大学教授にもご協力いただいた。そして、それら成果をポスターセッション用に形にもした。生徒たちはこの取り組みで大きな衝撃を受けたようで、その後のRSGFへの向かい方に明らかな変化が見えた。「立命館のような恵まれた家庭の生徒たちが釜ヶ崎に行って何がわかるのか。生まれたとしても同情の感情が関の山ではないのか」「子どもたちをそのような地域に連れて行って大丈夫なのか」。このような意見があることは承知していた。しかし、それでも行く意義はあるとわれわれは考えた。“ノブレスオブリージュ( Noblesse Oblige )”。今や死語と化したかに見えるこの精神の芽を生徒たちのなかに育てたい。同情ではなく、共感。そして、アクション。われわれのこの想いを生徒たちは少しずつ受けとめていってくれているようだった。そうわれわれは実感した。
昨年度までわれわれが課題としていた、具体性を伴なわないポリコレ(Political Correctness)なconclusion(solution)を昇華するということについては、最終日冒頭に具体性を伴った提案をしたグループもあったが、今年度も十分に克服できたとは言えなかったと思う。世界の潮流がポリコレ的なものよりも痛快さ・本音を語ることに喝采を送るようになった現在、そのような社会で生きて行く生徒たちにとって、この取り組みはどこまで有効なのだろうか。そう思う反面、そのような社会だからこそ、ポリコレの復権を目指す取り組みが必要だとも考えるのだ。
抜粋終わり
過去のものを読み返して改めて思うことは、5年間で大きくは変わらないということ、しかしそれでも少しずつではあるが変わってきているということだ。RSGF初年度総括では「まだまだ」という想いでいっぱいだった。それは5年たった今も変わらない。しかし、変わったこと、それはRSGFが立命館の「文化」として根付いてきたのではないかということだ。GLコース生はRSGFがその文化として確実に根付いてきたからこそ、「お客さん状態」になることなくコミットしていたのではないのか。えてして3年生が主役となるRSGFで、今年度は2年生が目を見張る活躍を随所でしていた。そういう状態だったから3年生にもいい緊張感が生まれ、下から突き上げられる形で3年生が負けられないという思いで取り組むという相乗効果を産んでいたんだと思う。2年生はもうすでに来年のRSGF2019についてあれやこれやと構想を練り、野心的な挑戦を検討し出している。これが何よりの証左だと思う。RSGFでの教員の役割は徹底した黒子だ。スチューデント・ファーストの取り組みであり、教員はそのサポートやフォローに徹し、前に出ることを極力排するマインドでもって臨んでいる。
5年間で見えたもの。それは、この意義深いRSGFが生徒たちと立命館の財産でありたいと強く想うこころの共有なのかもしれない。
RSGF 2019、始動。
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皆様方、誠にありがとうございました。
梃子としての「SGH」という枠組みはいったん今年度で終了しますが、立命館高校GLコース、RSGFはこれからも続きます。これからもよろしくお願いいたします。