学生の晴れ舞台、卒業設計講評会をオンライン形式で実現。
藤井 健史 助教(理工学部)
寶珍 宏元 助手(理工学部)
2021年8月6日
2020年度コロナ禍の
立命館大学教員による
未来に向けた挑戦
コロナ禍における教育・研究・行政・社会貢献の遂⾏は、過去の経験に答えを求めることができず、先例のない不連続な対応が求められました。先の見通せない困難な状況でありながらも使命を継続するため、全教職員が真摯に向き合い、努⼒を重ねた1年でもありました。このような未曽有のコロナ禍のなか、取り組まれた事柄には、ウィズコロナ、アフターコロナにつながる共有すべき優れた実践が数多くありました。
そこで立命館大学は、将来的な教育・研究・行政・社会貢献の更なる発展、向上を目指し、共有知として教訓化していくために、多くの先生方のたゆまぬ努力を全学から集約しました。推薦された取り組みは「全学的視点からの教育研究行政等の評価・報奨」として13件、さらに「教育、研究、社会貢献等におけるグッドプラクティス」として56件、併せて69件に上りました。
これらは単なる実践にとどまらず、その実践方法を形式知化し、学部内、研究科内で積極的に共有され、組織を横断した財産となって次の改革、挑戦につながるものであると考えます。
本サイトを通じて、学生・院生のみなさんにはウィズコロナ、アフターコロナにあっても安心して学修・研究に励んでいただける環境を大学として整備していることをお伝えするとともに、先生方には互いの実践例を共有し、さらなる挑戦につなげていただくきっかけとしていただけますと幸いです。
学校法人立命館総長 仲谷 善雄
※職位・役職は2020年度当時のものです。
経営学部副学部長(教学担当、国際担当)として、オンライン授業のツールとして導入されたZoomの授業実施マニュアルをいち早く整備し、学部教員を対象に研修を重ね、オンライン授業の実施体制を整えました。授業内容も自ら試行を繰り返し、改善を重ねながら同時双方向型のリアルタイム授業やZoomを活用したオンデマンド授業など、さまざまな実施方法を提案しました。また、当時課題であったZoomのセキュリティ設定の詳細等を明示し、授業を行う側の教員の不安も払拭しました。ほかにも、受講状況(視聴時間や視聴タイミング)等を分析し、受講動向を把握して、学部の授業実施方針の検討根拠とするなど、オンライン授業の質を向上につなげることができました。作成されたマニュアルは、複数の他学部の研修でも活用され学部を超えた広がりを見せました。
コロナ禍の突発的なオンライン授業の中にも関わらず、学生の受講動向を把握しながら、授業実践に変えていく授業改善の原点を見直すことができた取り組みであると言えます。また、各教員が直面した課題を素早くキャッチしてマニュアルの改訂等を重ね、それを他学部に展開したり、学部での授業実践を踏まえて、全学的にZoomのインフラとしての有効性やクラウド録画の要件等を進言するなど、将来を含めた組織のデジタル対応力の向上に寄与しました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
生命科学部の副学部長(教学担当、大学院担当)として、コロナ禍における教学方針をいち早く設定・周知し、授業や入試のニューノーマルを整備しました。
具体的な取り組みとしては、授業支援ツール(manaba+R)の機能やオンライン授業で気を付けるべき著作権のポイントなどを解説した動画を作成し、他の教員に共有したり、学生の授業アンケート等の結果をまとめ、教員にフィードバックし授業の質向上に取り組みました。また、「学生の主体的参加を促す授業運営」や「TAの活用事例」、「学生の授業外学習の促進方法」など、授業におけるさまざまな工夫をセミナーで共有するなど、実施例を共有知とする取り組みにも貢献しました。大学院生を対象にした授業アンケートでは、オンライン形式の授業であっても教育目標が達成され、受講生の満足度が非常に高いことが証明されました。
また、大学院入試では、受験者の受験機会を保障するため、徹底した感染対策措置を確立しました。その方策は他研究科にも採用されるなど、コロナ禍での全学の入試制度にも大きく貢献しました。
上記の取り組みは、オンライン授業のノウハウを早期に確立したほか、そのノウハウや学生アンケート結果等を積極的に他学部へ共有する取り組みは、全学の教育の質向上に影響をもたらしました。
また、試行錯誤の上実施した大学院入試の感染対策方法は、今後入試を円滑かつ、安心安全に実施する上での全学でのメルクマークになるものと考えられます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
本研究プロジェクト「GastroEdu」は、①社会課題に対して身近な食材と知恵で対峙し、創造性を育むオンラインワークショップを開発すること、②食の生産者の現場を中継し、本物に触れながら生産者と生活者の間を教育で繋ぐプラットフォームを確立すること目的としています。GastroEduは、Gastronomic Sciences(食科学)とEducationの造語でプロジェクトメンバーが命名したものです。
コロナ禍により人々が移動できないというかつてない強い制約が発生し対面授業をはじめ様々な活動が制限される中、教授らは、オンライン技術と大学が有する世界中の最先端の知のネットワーク(研究機関や教育機関、生産・研究開発現場との連携)を駆使してオンラインだからこそ実現できる新たな教育ワークショップを確立しました。
例えば、立命館小学校と連携し実施したトマトアドベンチャーでは、グローバルフードである身近なトマトを題材に食品ロスを学ぶため、日本にいる小学生とナポリのトマト畑と真のナポリピッツッァ協会をライブ中継し、小学生は本物の職人にピザづくりを学びました。ワークショップ最後に行った創造料理提案では,小学生はイタリアにSDGs解決のためのトマト料理を提案。採用された料理のいくつかはナポリの歴史ある協会のレストランで提供され、その収益はコンポスト購入費用に充てられました。一連の取り組みを通じて、小学生たちは自分たちの提案が、実社会の食品ロス解決に直結するという実感を抱き、異文化理解や社会課題の解決を体験することが出来ました。2020年度には、この他に附属中学校4校と連携し、柑橘類の多様性を通じて生物多様性を学ぶレモンアドベンチャーを実施。活動を広げています。これらの取り組みは、Scheem-D(大学教育のデジタライゼーション・イニシアティブ (文部科学省))の先行事例として紹介されました。トマトアドベンチャー、レモンアドベンチャーは主催:立命館EDGE+Rプログラム(文部科学省次世代アントレプレナー育成事業)、協力:立命館RIMIX、立命館大学食マネジメント学部、立命館大学食総合研究センター、株式会社TNC、ZVC Japan(Zoom)など様々な国内外機関との連携により実施されました。
2020年はコロナの影響を受け多くの対面授業やイベントが実施困難となり、オンラインを用いて試行錯誤的にさまざまな取り組みや工夫が行われました。
オンライン技術の発達によって圧倒的な没入感やリアリティを感じる体験は今後ますます可能になると考えられます。このときオンラインを介した学びの交流は,空間や時間的制約を超えるのみならず、これまで直接繋がることが難しかった生産者や生活者らによる新たな共創を生み出すプラットフォームとなる可能性が期待されます。本研究プロジェクトは研究・教育の新たな可能性を切り開いたと言えます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
石田雅芳教授は、コロナ以前にもヴェネツィアの漁民を招聘して脱皮ガニの講義を企画したり、ジェノヴァ近郊のスローフード協会理事を招聘して、リグリア州の地域品種のオリーブとオイル、ひよこ豆クレープの講習会を開いたり、ナポリのピザ協会から著名ピザ職人を招聘して、学生のための講習会を行うなどの試みを通じ、生の食の伝統知識の大切さを学生たちに伝えるよう取り組んできました。コロナ禍において、なんとかして食文化のリアリティを教室に持ち込むために、コロナ禍以前から検討を始めていたオンラインによる講師の招聘を実現しました。オンラインのメリットは、市井の生産者の生の声を聞くことができるという点にあり、時差や通信環境の課題をクリアし迅速に実現に取り組みました。結果として、鷹狩りの実演、朝市のチーズ屋台、ナポリの魚醤、ルネサンス晩餐会、ローマの観光ガイド、カラスミ生産者、高地放牧、カンボジアの塩田、地域食材のシェフ、料理学校の校長など様々なゲストを迎えたオンライン授業を実現することができました。
YouTubeやEdu、MOOCなど様々なシステムやサービスを用いたオンライン教育が普及し、高等教育へのアクセスが誰でもできる時代となりました。さらにコロナウイルスの世界規模での感染拡大は、こうした教育にも新たな価値を加えることとなり、この流れが一気に加速しました。アフターコロナにおける大学教育は、市民権を得たリモート教育とともに、高等教育が提供できるコンテンツそのものの幅を広げ、より豊かなものになってゆくことが想定されます。石田教授による今回の試みはグローバル社会への主体的貢献、大学、教員、学生とが国際ネットワークの結節点として有効に機能してゆくための好例であり、本学の学園ビジョンR2030チャレンジ・デザインにおける「新たなグローバル化へのパラダイムシフト」や「教育研究 DX の推進」などとも合致しています。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
経済学部の企画担当副学部長として、経済学部の授業改善活動に関する学内LMS(学習管理システム)のWebページを創設し、経済学部・経済学研究科のすべての授業担当教員のオンライン授業への支援体制を構築し、その管理運営を行いました。参考資料の提示のみならず、素朴な質問に丁寧に答え、オンライン教育下での学部教学全体の運営を支える貴重な土台としての役割を果たしました。
新入生に向けては、オンラインと対面を併用した上回生と新入生の交流の機会(通称「しゃべりっつ」)を設け、定期的なコミュニケーションの機会の提供を行いました。
また、学生の研究成果の発表の場である学内ゼミナール大会、およびキャリア支援の取り組みである経済学部就職活動応援企画(通称「メントレ」)の実施においても、運営形態をかつての対面形式から新たにオンライン形式で実施するにあたって、その中心的な役割を果たしました。さらに経済学部では、キャンパスに入構できない学生のため、コンビニでの無料のコピーサービスを構築し、学生の学びを支えました。
経済学部の授業改善活動に関するWebページは、今後学内LMS(学習管理システム)を活用した教員の授業の質向上の取り組みにおいて参考にすべき豊富な内容を含んでおり、引き続き教員のオンライン授業実施にあたっての相談解決、交流の場として機能しています。
また、コロナ禍での様々な学生支援の取り組みはオンライン、オンサイト双方での学生も巻き込んだピアサポートの新しい取り組みとして教訓化できます。さらに、各種企画のオンラインでの実施経験は、学部・大学外に対して企画を広く発信し、広い参加を可能とする道を開きました。これからの活動は、アフターコロナに向け意義のある取り組みとなったと言えます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
2020年度学部国際担当及び大学院(MPED)担当副学部長として、大学の教学運営、学生・大学院生支援において取り組みの中軸となって立案、運営実施に努めました。
オンラインでの面接等学生受入の実施、入学決定学生に対する入国支援と入国できない学生に対するオンライン授業体制構築、また、協定を結んでいる中国の各大学との飛び級プログラムでの学生支援を継続的に行うことで、コロナ禍において安定的な学生受入と学びの保障につながりました。
また、海外留学を希望していた経済学部生に対し、オンライン留学プログラムを開発・実施し、コロナ禍の制約の中で、多くの学部生にとって国際交流を体験する機会を提供しました。
渡航による留学や国際交流が困難となる中、オンラインを生かして外国人学生と英語や中国語で交流する機会を学生に提供することが出来ました。また、オンラインでの講演会や国際交流企画は、事前準備や交通費など実施に当たっての費用が僅少であるにも関わらず、参加者が語学力や国際理解を深める機会の提供が可能であることがわかりました。
こうした取り組みはウィズコロナ時代だけではなく、アフターコロナ時代においても、学生が気軽に参加でき、留学準備や実践的な外国語コミュニケーションの育成に資する企画としてのモデルを示しました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
2020年度の春学期、新入生はオリエンテーション実施後緊急事態宣言の発出により休講措置が取られ、宣言解除後webによる授業実施となり一度も対面での授業を受けていない状況となりました。新入生の孤立を防ぎ、学修・生活支援を進めるため、新入生へアンケート調査を2度に渡って行い、適切なサポートや情報提供を実施しました。春学期はweb授業を1か月経験した時期にアンケート及びストレスチェック、希望者への面談を行いました。秋学期に実施した2度目のアンケートでは、1度目のアンケートで把握した内容のその後の状況を把握し、学生からの質問や不安が多かった「大学での印刷方法」「アルバイト情報と注意事項」などを学生支援NEWSなどで情報提供を行うとともに、教員全体へも共有し、コロナ禍での学生支援を止めない取り組みを継続しました。
オンラインでしか大学と繋がりが持てない状況の学生たちへアンケートを実施することで、学生のストレス状態・具体的な困りごとの内容・それに対するサポートが十分に受けられていない状況を組織的に認識することができました。また、大学側としても学生のストレス状態や困りごとを把握することで、情報不足を一定程度解消でき、適切な情報提供や支援を試みることができました。
教員側としてもwebを活用した学生との対話で分かり易く伝える工夫を行い、また質問や相談があるときの連絡手段を明示しておくことで、学生と教員との信頼関係が向上し、教育の質の保証につながりました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
担当授業において様々なウェブツールを効果的に活用し、オンライン授業の効果的な実践における先駆的な取組みを行いました。
具体的には、Zoomで行うオンライン授業にMiro(オンラインホワイトボードツール。従来の対面授業でホワイトボードや模造紙、付箋などを用いて行っていたブレインストーミングやマインドマップ作成などの作業をオンライン上でアクティブに行えるサービス)を導入し、Zoomを使用したオンライン授業で多くの教員が苦労する双方向授業を実現化しました。永野准教授の授業では、Zoomのブレイクアウトルームでグループワークを行い、その結果をMiroで可視化し、他のグループの参加者に共有したり、ディベートをする際には、討議場をMiro上に設け、そこでの議論状況を視覚的に共有できるようにするなどの工夫を行いました。また、授業で独自のYouTubeチャンネルを開設し、作成した動画を共有するだけでなく、映像作家やYouTuberなど外部人材をゲスト招聘し、評価してもらうなどオンラインの良さを生かしたフィードバックの機会を設けるなどの工夫を行いました。
さらに、学部ゼミにおいてはフィールドワークを実施するための費用を確保するためにクラウドファンディングを取り入れ実践的な学びの機会の保障にも積極的に取り組みました。
Miro等を活用した授業の優れた点は、学生同士や学生と教員間のインタラクティブなコミュニケーションを可能とし、参加型のアクティブ・ラーニングを可能にしました。加えて、授業内容のデータがログとして蓄積されていくため、教員は次年度以降の授業設計(改善)にも活用することができます。また、今後履修する学生にも授業内でグッドプラクティスを容易に提示することも可能となるなど授業の質向上にもつながります。また、授業実践の際に、他者や他グループのワークやアウトプットがリアルタイムで見える化される事により、自身や自グループのワークやアウトプットの改善が自然と図られるという当初想定もしていなかった良い循環がもたらされ、結果として、成果物の質が飛躍的に向上しました。今後は、こうした具体的実践を他の教員にも広げていくことが期待できます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
学生部長(スポーツ担当)として、コロナ禍における体育会クラブの活動継続にあたり、2020年春の緊急事態宣言発出を受けた活動停止時期から活動再開に向けて、職員と協働し全クラブの幹部学生と丁寧な面談や調整、対策の検討の指揮にあたりました。学生の要望を受け入れながら、安心安全な活動環境を保持できるようにするために、約2500名の体育会学生の体調管理を行うためのシステム導入や、職員によるチェック・管理体制を敷き、丁寧な指導を行う事で、学生、クラブスタッフ、学生部が三位一体となって未然にクラスターを防ぐ運営を確立しました。本学は、新型コロナウイルス感染症BCPレベル3における課外自主活動の方針として、「感染防止策の徹底ができると認められた団体に限り、規模や内容を制限した活動を認める」と定めています。団体が感染対策の徹底を「自主的な行動」にまで落とし込めるよう、丁寧な面談、相談対応、指導を繰り返しました。その結果、2020年度体育会クラブ活動において早期の活動再開を果たすことができ、さらにはクラスターを発生させることなく、学生の学びと成長の機会を保証することが出来ました。
課外自主活動の基本である、学生の自主的かつ自律的な活動を推進するには、学生自身がその組織として、ならびに組織の一員としてのあるべき姿、行動を自覚して活動することが求められます。単に活動を規制・管理するのではなく、一連の活動を通じてその意識を醸成したことは教育機関として意義のあることであり、将来的な課外自主活動への支援の在り方を示すものとなりました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
2020年度は春学期の開講直後の授業中断に始まり、授業再開後のWeb授業の実施、秋学期の対面授業の復活など、先の見通しが持てない混乱に陥りました。未曽有の事態の中で、大学の基幹である教学の質を保証しながら、継続的に授業が実践できるよう、BCPレベルに対応した授業形態のガイドラインを教職員と協力して設定し、全学へ周知、徹底しました。時には厳しい調整を迫られることもありましたが、常に教育を止めないとの強い信念のもち、教学の責任者として、リーダーシップを発揮しました。
その結果、学生・院生・教職員が共通理解をもって授業に取り組むことが出来ました。
今回の新型コロナウイルス流行に限らず、自然災害も含めて授業継続へのリスクが起こった際の、レベル判断、授業を継続するための手立てについて、今回の対応は先導的なモデルとなりました。「学生の学びを止めない」ということは大学にとって極めて重要なことであり、想定されるリスクマネジメントと合わせて、授業継続の方法を確立する大きな方向性を得られました。
また、対面授業の有効性を前提としながら、例えば、学生同士のピアラーニングがWeb授業でも可能であるということなど、今次の取り組みからWeb授業の長所を可視化することができ、将来的な授業方法の展開に新たな示唆をもたらすことができました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
2020年4月の授業開講に向け、全教員のオンライン授業実施の支援のために、教育・学修支援センターの教員でチームをつくり、非常に限られた時間の中で、教員のニーズを踏まえた7種のマニュアルを作成しホームページで公開しました。また、個別教員に対するメールでの相談事業の開始し、オンライン授業に関わるサポートデスクを発足させ支援に取り組みました。さらには、オンライン授業に関するアンケートを教員、学生それぞれに対し各3回実施し、集計結果の分析および専門的考察に基づく解釈と次につながる改善提案を行い、その後の授業運営方針策定に大きく貢献しました。
全教員が同時にオンライン授業に移行しなければならないという未曽有の事態において、センターのメンバー全員が事務局と緻密に連携し行ったオンライン授業に関わるコンテンツの配信は、不安を抱えた教員のニーズにこたえるものでした。この授業支援の実践と貢献、部課を横断した教員と職員の連携は、R2030チャレンジデザイン(学園中期計画)の教学DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた革新的な一歩であり、意義のある取り組みとなりました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
本学の研究推進の責任者である研究部長、研究部副部長として、新型コロナウイルスの感染拡大によって研究活動が大きな制限を受ける中、各種申請手続きのweb申請への変更、オンラインシンポジウム等の開催支援などを積極的に進めました。
また、新型コロナウイルス感染症に関する調査研究からWithコロナ社会形成に向けた様々な基礎研究や応用研究を支援する「Withコロナ社会 提案公募研究プログラム-Visionaries for the New Normal-」いち早く企画し、本学研究者の研究意欲を喚起し、総合大学としての研究の多様性と強みを社会に向けて発信しました。
コロナ禍での新たな研究推進手法の開発と実践は、研究活動の代替的支援にとどまらず、研究支援のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の起点となりました。また、想定外の困難のなかにあっても、本学研究者が柔軟かつ強靭な研究力量を備えていることを示し、次世代研究大学としてのポテンシャルの可視化に大きく寄与しました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
保健センター所長・医師という立場から、新型コロナウイルス流行初期より、一日も欠かすことなく、医学的視点からウイルスに関する知見や感染拡大状況、今後の見通しなどの医学的情報を学内の感染防止委員会メンバーにメールで伝え続け、学園全体の関係者の知識・意識の向上に寄与し、適切な判断や行動につなげる役割を果たしました。また、学習会・啓発ビデオ作成などを通して分かり易く学園内に情報を発信し続けました。
さらに、学内で発生したすべての感染例とそれに伴う濃厚接触などの職場環境に関わる相談にもすべて目を通し、一つ一つ適切な対処法をアドバイスし、関係者の安心・安全を高めるなど、全学の感染防止対策の基礎を形成し、啓発活動の中心的役割を果たしました。
学生・教職員の安心安全のために迅速な対応の指揮にあたり、発熱外来、PCR検査器の導入など学園としての新たな展開に大きく寄与しました。また、保健センター教授・医師として感染拡大防止の最先端に立ち、従来の職務を超えた取組は、予期せぬ事態が生じたときの教職員としての役割発揮・業務の姿勢においても組織全体の模範となりました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
受講登録者が1100名を超える教養科目「現代の教育(GB)」において、VOD教材の作成、manaba+R及び動画を活用したフィードバック、毎回の平常点課題(小テスト、レポート)の蓄積による成績評価、4名のTAによる補助等を駆使して授業運営を成し遂げました。
作成したVOD教材は、パワーポイント資料と見やすく編集された映像(1チャプター15分程度を4つ分)で、受講生の集中力が途切れないよう工夫をしたり、毎週15分の小テスト課題は不正防止のためランダム出題により実施しました。また、提出されたレポートをテキストマイニング分析し、受講生には動画でのフィードバックを試みるなど双方向性も意識した授業運営に取り組みました。
こうした取り組みは、科目間連携や課外の取組みへの発展にも繋がりうる可能性を秘めており、大規模私学におけるオンライン教育のモデルケースの確立に寄与しました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
教養科目C群演習科目「シチズンシップ・スタディーズⅠ」は、地域と大学とを往復し、社会貢献活動とその省察を通じて学びを深めることを目的としており、42時間の学外活動を前提とした科目であるため、コロナ禍における活動制限下でも、学生の学習環境の維持のために担当教員が受け入れ先団体と綿密な事前調整・準備を行い、その目的を達成しました。
具体的には、全5クラスでの各プロジェクトの実施前に担当教員が「学外活動計画書」をサービスラーニングセンターに提出し、活動概要・リスク管理・安全性等をセンター長が確認・承認した上で、担当教員・受入団体・大学事務局間で連携を図りながら活動地域の感染状況や移動手段、現場の密状況などの安全性を考慮しつつ学外活動を実施しました。
活動内容は「小学校を訪問しての防災まちづくり学習の運営補助」「行列中止で可能となった時代祭装束の大規模調査」「草津街あかりイベント代替の動画作成」「地域の商店街や保育園でのインタビュー」「茨木の中山間地域での農作業ボランティア」など、クラスやプロジェクトの特性に応じて多岐にわたり、時には感染状況等を考慮して対面企画の中止・延期やオンライン企画への変更などが発生しましたが、工夫をしながら各プロジェクトを進めることが出来ました。
このように、担当教員・受入団体・大学事務局が連携してリスク軽減を行いつつ、学習環境を維持したことは個別授業の事例としてのみならず、PBLや産官学地域連携科目を有効かつ組織的に運営するためのモデルケースとして学内外から高い関心が寄せられ、今後学内で共有していく意義のある取り組みとなりました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
コロナ禍においても連携企業と緊密な連携を図りながら、複数の産学連携型PBLクラスをオンラインで実施しました。受講生が全員1回生であったため、学生の学修環境(ネットワーク環境・情報リテラシー)を調査し、その結果を基にピアサポートが可能なチーム編成を行ったり、プロジェクトの進捗に合わせて情報リテラシー(Zoomでの協働作業)も段階的に向上させられるような内容に授業を再設計したりするなどの工夫をしました。また、全学型キャリア教育科目として3キャンパスで複数クラスを運営するために、運営マニュアルの作成やFDを実施し、組織的な支援体制による「運営の共通化・効率化」と「授業の質の担保」にも取り組みました。
なお、授業形態の変更にもかかわらず、当初の到達目標が達成されたことを各種の調査にて検証しています。特に、「自己成長感」を尋ねる独自のアンケート調査から、①能動的な学びや行動への意欲(動機づけ)を喚起させる「困難克服・挑戦力」「積極的発言・行動力」、②プロジェクト型学習による「議論の整理・理解力」「論理的思考力」、③チームでの協働作業による「他者受容力」「チームへの貢献意欲」の三方向から、学生自身が成長を認識していることが統計的にも示されています。
加えて、入学直後の学部横断型チームでのプロジェクト活動でしたので、授業内容以外での相談や学部を越えた友人づくりの貴重な機会にもなっていたことが伺えました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
3キャンパス計150クラス開講の教養科目・実技科目「スポーツ方法実習」において、授業10回分の共通コンテンツ(VOD教材、manaba+Rでの自動採点機能を使用したフィードバック課題およびレポート課題[自宅での運動課題を実施した所見などを記入]等)を作成し、体育実技の実施が出来ない状況下において、実技科目であるスポーツ方法実習の到達目標に即した学習環境の維持に努めました。
また、同一科目における共通コンテンツの作成及び、科目担当者間の共有を通じ「授業の質の担保」を行うと共に、2021年度以降も作成した教材を活用した+αな学習を受講生に提供することが実現できました。
さらに、作成したコンテンツについて学生のアクセス時間や確認回数、レポート課題の内容等の情報を基に、教材をブラッシュアップするとともに、個別公開期間や個別相談などコロナ禍における学生の心身のケアに取り組むことができました。
本科目の実施モデルは実技科目におけるリモート授業での実践事例として、また短期間に担当者や事務局との協働を通じて組織的に授業運営を進めつつ、共通教材を有効活用した事例として、大きな意義をもたらしました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
薬学部生をトロント小児病院及びトロント大学薬学部に派遣してきた学部独自の海外留学プログラム(トロント・クリニカル・トレーニング・プログラム〔Toronto Clinical Training Program: TCTP〕)をオンライン留学プログラム(TCTP Online)として実施しました。本プログラムは、薬学科の5回生が医療現場で薬剤師や医師から直接学ぶ実習型となっており、当初、感染拡大下においては実施が困難と考えられていました。しかし、国内での病院実習を終え、翌年に国家試験を受験する薬学科生にとっては、この時期を逃すと在学中に留学することが不可能であるため、何とか留学の機会を創出しようと試行錯誤を重ね、オンラインの特性を生かしたプログラムの立案を実現しました。具体的には、先方のトロント小児病院ラーニング・インスティチュートと調整し、トロント小児病院やトロント大学が提供するセミナーや交流会へのzoomでの参加の機会を創出したほか、「留学体験」を創り出すために、本学側でも海外留学生のTAや海外出身の教員の協力を得ることで、講義の理解を深めながら専門的な英語を話す機会を設けたり、各国の医療制度についてのディスカッションや互いの文化について話し合うといった、様々なオンラインセッションを実施しました。
また、各オンラインプログラム実施にあたりSlack(ビジネス・チャットツール)を活用しました。対面型の留学であれば、自然にコミュニケーションが取れますが、オンラインの場合だと授業外コミュニケーションの機会が減ってしまうため、メール等よりも気軽にやり取りができるツールを導入することで、参加者間での情報交換が円滑になり、教員のオンライン引率も効率的に行うことができました。
コロナ禍を契機にオンライン留学は今後も開発・実施が進むと思われます。本プログラムは、ただ単に授業をオンラインで受講するという域を超えて、いかに「留学体験」を創出するか、という点において先行モデルを示しました。
薬学科では実務実習があるため、コロナ禍においても対面式授業の実施は必須という考えの下、授業内容を精選し必要な実験・実習に限定して実施しました。そのために、実施時期を調整したり、オンライン教材を作成し反転教育を導入しました。これにより、学生からは授業前に自宅で実験の手技・手法について資料を見ながら予習ができ、授業を効率よく実施することにもつながりました。実習実施時には、入室時の検温、マスクとフェイスシールド着用、体調不良時は欠席(レポート課題提出で出席扱い)等、感染防止措置を徹底しました。その結果、薬学部の実験実習科目の授業において感染者は一人も出ませんでした。上記のように、学生同士がグループを作り協同して取り組む実験・実習は密な環境になりやすいため、出来る限り感染リスクを低減させ、安全に実施する教育手法の開発は、アフターコロナの授業の在り方においても重要視されています。また、反転教育の導入については従来の実験・実習の在り方から、時宜にかなった教育の質の高度化につながったと評価されました。
コロナ禍において薬学部の全教職員が一丸となって対面式実験・実習の在り方を検討し、最善な形で安全・安心に十分配慮した実験実習科目の開講に努めたことについて大きな成果を得ました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
本学のSGU目標にむけてプログラム開発を積極的に取り組み、現地滞在1週間の超短期プログラムGFP(Global Fieldwork Project)を開発し、2020年度では予定では300名を超す参加者が見込めるまでに育て上げました。同時に国際教育推進機構が2018~2020年度に進めた留学効果検証の取り組みである「立命館グローバルXプロジェクト」の中心メンバーとして活躍し、このプロジェクトの最終年度としてその取りまとめを行っており、2021年度にはその成果として国際教育実践フォーラムを開催する予定です。
GFPは滞在期間を短くして参加しやすくするとともに、事前講義・現地滞在・事後講義という構成として短い滞在期間を効果的にするスキームとなっています。また、それを留学の効果検証の取り組みと連関させ、事後講義の後にも参加者にさらなる振り返りを行わせる形となっています。これらは、単に本学のSGU目標における海外派遣者の数の達成に大いに貢献しただけでなく、振り返りと効果検証をビルドインした新たな留学モデルを提示したということで意義のある取り組みとなりました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
2クラスで開講される「計算機科学入門」の授業において、コロナ禍ではzoomで2クラス合同の遠隔ライブ授業を行いました。双方向性を持たせるため、授業担当者のうち一人は授業での説明を行い、もう一方はチャットによる学生からの質問にリアルタイムで回答する役割を担いました。本科目は500名を超える大規模授業で一般的に学生は質問がしにくいと感じているようですが、チャットを利用することにより、学生からの質問が増え、また、その場で感じた疑問にリアルタイムで回答することができ、その上質問を行った学生以外にも質疑応答の内容が共有でき、教員同士も互いの進行を確認しながら進めるため、授業内容に関する理解を促進することに成功しました。クラス間での授業の均質化にも貢献できております。
さらに、遠隔ライブ授業で行われた学生と教員のチャットのやり取りは記録として残るため、次年度以降の授業改善にもつなげることが出来ました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
優秀な海外からの大学院生の確保、及び、入学後の研究内容などのミスマッチを防ぐために自身の研究室(知能エンターテイメント研究室)においてオンラインで英語によって実施するゼミを大学院入学希望者に公開し、聴講生として参加できる仕組みを作り上げました。ゼミ参加を通じて研究室の水準(在学生や研究)と指導教員の指導スタイルへの理解を深めてもらうことができ、大学院への入学先として複数の候補から本学を選択してもらうことを期待できます。
2020年度秋学期にはインドネシア1名、ベトナム1名、中国3名の聴講者が参加しました。インドネシアとベトナムの聴講者はそれぞれ大学推薦国費留学生、大使館推薦国費留学生として2021年度9月に本学の前期課程へ入学する予定であり、中国の聴講者1名が2021年度4月に前期課程へ入学済みで、残り2名の内1名は2021年度9月に後期課程へ入学する予定です。大学院への進学者の確保についての取り組みは、R2030(学園中期計画)の重要なテーマである、「次世代研究大学となること」において大きく寄与しました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
同一科目4クラス開講である「企業と会計」では、コロナ禍において、イレギュラー対応の結果として講義内容や形式に担当者間のばらつきが生じないよう即座に関係者で意見交換し、申し合わせを作成し実質的で標準化された講義を実施しました。
単位の実質化を図るために,1350分(13回+補講2回)の授業時間を確保し、また、各講義も60分以上の講義時間に加えて質疑応答時間、小テストを行うことで90分以上の講義時間を設けました。小テストは担当者間で共有することで標準化するとともに、そこでの意見交換を通じて、各回の小テストの質の維持・向上を実現し、授業外学習の促進も図りました。
本講義は新入生対象の科目であるため、学生の関心を引き出し、学習態度の形成を促すことが重要となります。そこで、講義は原則としてライブオンライン形式で実施し、大規模講義のなかでも、大学で学習している実感を少しでも学生がもてるよう、上記のような一定時間以上の受講と授業外学習の習慣化を図りました。毎回の講義内では各教員が考えたキーワードを定期的に発し、それらを小テストの一部とすることで、出席の確認とともに、オンライン講義という集中力の持続が難しい講義環境のなかで学生の聴講の維持を図りました。
担当教員間では、学期中もzoomの活用方法やmanaba+Rの活用上の注意点について積極的に意見交換がなされ、スキル向上が図られました。また、各クラスの出席率などを共有し、学生の学習習慣の形成についても担当者間で共有・確認をし、講義の実効性向上につなげることができました。
非常時、大学がおかれる状況を予想し、積極的にライブオンライン講義を行い初年次教育としての重要性を理解したうえで、こうした取り組みを実現できたことは学部教学上の基礎を築いたと言えます。非常時には、事前に十分な作りこみを行うことは難しく、学部としての一定の枠組みのなかで、教学に関する基本的な価値観を共有し、よりよいものを目指して柔軟に講義運営を行うことが求められ、そのなかで執行部と担当教員の間で協働して学部教学を作り上げていくプロセスがより重要になります。この取り組みは担当教員と執行部の前向きな協働の結果であると言えます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
言語教育情報研究科では留学生の増加に伴い、従来の日本語校閲では対応が難しくなってきたため、2018年度からアカデミック・ライティング・デスク(以下、AWD)を設置して、修士論文やレポートの日本語文書指導を行ってきました。コロナ禍以前は、拠点となる施設で指導員とTA(授業や教学活動をサポートする大学院学生)が週2~3回相談窓口を開き、そこに留学生が日本語の文章が入っているファイルを持ち込み、指導を受けるといった体制で運営をしてきました。しかし、2020年度の春学期は新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、キャンパスへの立ち入りが禁止となったため、急遽オンラインでの指導に移行しました。
指導用のファイルのやりとりには、googleやzoomなどのサービスを活用したほか、学内システムであるmanaba+Rを活用し、海外に滞在している留学生にも日本国内にいる院生と同様のサービスを提供できるよう工夫を行いました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
生命科学部を中心に発信型英語教育(プロジェクト発信型英語プログラム:PEP)を展開するプロジェクト英語部会は、コロナ禍以前よりICT(Information & Communication Technology)を積極的に取り入れた教授法とその研究を行ってきました。2020年度のコロナ禍ではこれまでの知見と実践を活かし、学生だけでなく教職員にとっても有益な学内電子リソースの活用法を積極的にYouTubeで公開するなど、アフターコロナの時代を見据えた教育DX(Digital Transformation)に取り組んできました。
そうした取り組みの1つとして、PEPでは生命科学部事務室のあるリンクスタジオ2Fに映像スタジオ「PEP Studio」を開設しました。PEP Studioは、教員や学生が利用できる映像スタジオです。デジタルビデオカメラや照明、クロマキー用スクリーン、スイッチャーといったプロフェッショナル用機材を揃え、教員による講義や講演などの配信、映像教材の制作に利用できるほか、学生による正課授業の成果発信にも利用できます。
オンライン授業や会議ではZoomなどのビデオ会議システムが頻繁に用いられますが、パソコンのカメラや小型Webカメラでは肩より上の座った状態が多くなり、本来の講義や学生発表で見られるような、動きのある映像になりにくいという欠点があります。また、光量不足により顔が暗くなったり、ノイズが発生したりと、視覚情報のクオリティが対面時よりも劣りがちです。PEP Studioでは、3方向からの大型照明により撮影対象をカメラ上に生き生きと浮かび上がらせることが可能です。また、膝から上のほぼ全身をカメラに映すことができるため、前後左右に移動するなどダイナミックな映像を収めることができます。大型のクロマキー用スクリーンと4系統入力に対応したスイッチャーにより、複数の映像を1つに合成するなど、本格的な映像編集も可能です。プロ用映像機材は操作が難しいことがハードルになりますが、初めての利用者でも使えるようにチュートリアルを動画形式で準備したほか、学生の利用時には教員が補助に入るなどのきめ細かなサポート体制を敷きました。
これにより、2020年度はPEPによる英語関連のコンテンツ制作にくわえ、学部生・大学院生による成果、専門科目の教員による講演の撮影、発信動画の制作、オンラインカンファレンスの配信など、幅広い用途にPEP Studioが利用されました。
PEPでは、この他にも、2020年度のオンライン授業開始前から教員間コミュニケーションツールとして導入していたチャット型グループウェア「Slack」を約1,300名の学生にも拡大し、授業連絡やディスカッション、悩み相談などに柔軟に利用しています。TAを中心とした英語授業のサポート体制「SAPP」もオンライン上で活発に展開されました。
さらに、英文法の要点を解説した動画教材「PEP Parsing Gym Online」を約100本制作し、manaba+Rの小テスト機能に組み込むことで授業外学習に活用し、効果をあげています。
正課授業を中心とした教育ICT活用においてPEPは全国でも抜きんでた先進性を示しており、数多くのリソースを提供している点で全学の英語教育に大きく貢献しています。映像スタジオの開設と利活用はそうしたPEPの取り組みの最新事例であり、学部教学と緊密に連携した英語教育の質向上を示すアフターコロナ後の大学教育の姿を見据えたグッドプラクティスと言えます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
オンライン講義資料に説明文を入れる形式は、講師は正確な内容を伝えられる利点、受講生は理解しにくいところを何度も読み直すことができる利点があります。一方、「である」調の書き言葉では臨場感や親しみやすさに欠ける問題点もあります。そこで本取り組みでは対面講義のようにその場で語りかけるような口調の説明文を講義資料に入れることにしました。また、manaba+Rの機能を活用し、講義資料内に関連動画やクイズを入れることで、直観的な理解や参加型で能動的な学びにつながるように工夫しました。さらに、講義受講後にアンケート機能で質問・コメントを集め、次回のコンテンツ内に返答(Q&A)を入れることで学生との双方向な講義の実施に努めました。受講生からは、「読んでいるだけで先生が話しているように感じられる、とても面白い授業で、毎週楽しみにしていました」、「動画があるため理解しやすいです」、「学生の疑問などに対する先生の解答を見るのが楽しみになっています」などの反響がありました。オンライン講義では受講生間のコミュニケーションが課題ですが、Q&Aに受講生の質問・コメントを掲載することで「自分が気づかなかった色んな視点からの疑問を知ることが出来て嬉しいです」、「皆さんの感想や疑問を読むと自分の知識不足が悲しくなります。どうしたら良いでしょうか?」というコメントがみられ、オンライン上であっても受講生間が互いに刺激し合い学びを深めている様子が分かりました。その他、模型の製作課題の効果をオンライン講義と対面講義(前年実施)で比較したところ、オンライン講義では時間をかけてじっくりと考えながら取り組めること、対面講義授業では周りとコミュニケーションしながら取り組める楽しさがあることが分かり、両者が相補的であることが見出されました(今村, 山置, 「紙模型によるタンパク質αヘリックス構造の理解」立命館高等教育研究 21, 127 (2021);)。本取組みによりmanaba+Rの機能利用に関する煩雑さを指摘する声を拾うこともでき、改善課題を見つけることもできました。manaab+Rの有効な活用方法の参考事例として共有できればと思います。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、在宅時間が長くなる状況で人々の身体活動量が低下し、筋量の減少だけでなく生活習慣病やうつ病を引き起こすなど、心身の健康に及ぼす影響が懸念されました。藤田教授らは全国で一斉休校が発令された直後(2020年3月)から、「子ども向けの運動プログラム」の動画配信やSNSでのコンテンツ発信、Zoomを活用したオンライン運動教室を展開しました。その後、中高齢者などオンラインを苦手とする年齢層の方々に対して、オンライン以外(テレビ放送や運動記録冊子の配布など)の方法にて運動プログラムを提供しました。また、集合住宅に居住する方々を考慮し、プログラムの内容にジャンプ動作がないものを選択した上で、一定の身体活動量を確保するような工夫を施しました。このように、「自宅の限られたスペースで出来るエクササイズ」を推奨することは、運動に対するハードルが高かった人々に対して、新しいスタイルを提案するだけでなく、生活内に運動習慣を取り入れるという行動変容や行動の定着化に関する新しい価値をもたらしました。また、草津市小学校体育連盟と連携して「草津市チャレンジタイム」の取り組みに対し冊子と動画などのコンテンツを提供し、地域に根差した活動を推進しました。
様々な制約条件下で、生活における新しい運動習慣を定着させるための気づきやスタイルを提案したことは、withコロナ時代において意味のある活動となりました。また、大学や学園にとって重要なステークホルダーとどのように協働・連携を図るべきかという、今後の大学や学園の取り組みの指針となり得る取り組みとなりました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
2020年4月のキャンパス入構制限を受け、動物実験に用いる動物の飼育管理も大きな影響を受けました。西澤教授は、教職員、学部生・院生(以下、学生)、委託業者に新型コロナ感染症の罹患者が生じるケースを想定するBCP策定をBKC動物実験委員会副委員長として主導しました。BCPは動物の愛護及び管理に関する法律の趣旨に従い、外部委員である実験動物専門獣医師のアドバイスも受けたうえで、コロナ禍における施設内の実験動物の飼育管理についても定め、外部からの問い合わせにも対応できる枠組みとしました。
また、サイエンス・コアの飼養保管施設は面積に対して利用者が多く、密の状態となりやすいことから、BKC全体とは別の入室調整の必要があったため、教員とBKC動物実験委員会間での利用調整実施を同委員会副委員長として提案・主導しました。尚、BCPレベル2以上の場合は業務委託範囲を拡大し、学生が飼育へ関与しないルールを整理・運用しました。
これらの取り組みは、コロナ禍での様々な制限の中において動物実験に用いる動物の管理方法として意義のあるものとなりました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
緊急事態宣言下、急遽在宅勤務となった子育て中の教員・研究員から「子どもを保育園・小学校に預けられない」、「オンライン授業開始への対応が困難」などの声が聞かれました。篠田教授は、リサーチライフサポート室の室長として、現状と課題把握のために育児・介護等のライフイベント中の教員・研究員を対象にアンケート調査を行いました。受入教員などとの縦の繋がり、同僚や同期などとの横の繋がりが遮断され、孤立化している教員・研究員がいることがわかりました。その実態を踏まえ、研究者同士が直接相談や情報交換が行える「OPEN DAY オンライン版」をzoomで開催、教員・研究員同士がネットワークづくりを行える場を提供し、少しでも不安が和らぐような機会を創出しました。OPEN DAYは年間通じて計14回実施しました。
コロナ禍において多くの学内構成員が学生対応に注力している中、他方で研究活動にも注力している教員・研究員にもアンケート等の実施を行ったことは、SDGsの考え方である「誰一人として取り残さない」という視点を持った取り組みとなりました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
コロナ禍において、生産、流通、飲食店等が多大な影響を受け、食ビジネスの持続性が深刻な問題となっている中、今後の地域経済の安定や発展および地域の安全保障のため、持続可能な食ビジネスの仕組みを工夫し、地域全体で支援するシステムを構築するため以下の取り組みを行いました。
まず、滋賀県草津市のフードチェーンに関連する各界のステークホルダーが、それぞれの現場でどのような問題に直面しているか等、実態を明らかにするため、オンライン調査及び対面での聞き取り調査を農家・流通業者・外食中食等の事業者及び従業員を対象に行いました。
また、米国ノースウェスタン大学の提供するプラットフォームMeridian180を用いた一か月間にわたる国際オンラインフォーラムや、日英二言語対応のオンライン国際シンポジウムを開催し、本事業での研究成果を世界に発信しつつ、国境を越えた意見交換を行いました。
この調査の結果、食品の電子商取引を促進するためには、生産者や飲食店経営者の思いを消費者に届け、生産者・経営者と消費者の関係を構築する必要性が明らかになったため、映像学部との協働で、生産者・経営者の生産・販売における思いを理解することができる動画を作成しました。この動画は国際シンポジウムやウェブで発表するだけでなく、販売現場で活用していただいて、大きな反響を呼びました。
コロナ禍において本取り組みは、ステークホルダーからの情報収集方法、調査結果を踏まえた政策提言や動画作成を通じた地域貢献、さらには成果の国際的発信や共有といった視点から、学内で共有する意義の高い取り組みとなりました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
若手研究者の研究発表の修練および、学生に多様な分野の学術・科学・技術に興味関心を持ってもらうことを目的として実施しているライスボールセミナー(ランチタイムに軽食(おにぎり)を取りながら研究者の研究発表およびフリーディスカッションを行うセミナー)の実施において、緊急事態宣言発出及び、BCPレベルによる出張制限の影響により継続が危ぶまれました。研究機構長らは事務局の提案に基づき、大学で開催していた企画については早々にオンライン開催に切替を迅速に判断しました。その結果、従来は会場に参加することが出来なかった他キャンパスや学外に向けて、SNS等での新たな広報を行ったところ、継続性の確保だけでなく、予想外の他キャンパスの学生や教員、学外研究者の参加等、聴講対象者の拡大へもつながりました。
また、附属校・提携校の大学での科学の面白さを紹介して欲しいとの要望に応え開始したライスボールセミナーも事務局が聴き取った実施校の要望を基に、企画・運営を進めた結果、コロナ禍でも各実施校からの要望を叶えることができ、さらに高校生向けの研究紹介冊子を作成することにより、聴講生の理解を深めることができました。
本取り組みは、若手研究者には発表の修練場を継続的に提供でき、プレゼンテーション重要さの学びを途切れさせずでき、また聴講者に対しても分野横断的に学術・科学・技術への興味の向上に貢献できた。その結果、コロナ禍においても研究への関心のすそ野も広げ、高大連携を深化させ、立命館大学、大学院進学への意識の啓発にも貢献しました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
食文化の伝達や継承には共食の場を持つことが必要不可欠となり、また、文化人類学の調査にはフィールドワークが欠かせません。コロナ禍により大きく制限を受ける中で、ICTを活用した共食の方法や現地調査の方法を考案し、学生・国内外の研究者・企業等とともに様々な活動を行いました。
まず、リアルな場で集まって共食を行う試みでは、教員によるレストラン内での共食実験や学生ゼミにおける試食会実験において、三密や飛沫の飛散を回避するためにアクリル板を設置したうえで、会話はzoomを通じ各自がイヤホンを装着し席が離れたままでもスムーズに会話できる方法を取りました。
また、オンライン調査および研究会の試みでは、ゼミ生がzoom等を利用して国内食産業関係者へオンラインインタビューを行いました。これに関わる調査票の作成や、教員によるインタビューモデルの提示等、調査から調査結果の分析と報告書の作成に至るまでほとんどをオンラインで実施しました。また、学内外の研究者および企業との共同研究で、海外の家庭の食生活や家電の使用方法について調査を実施しました。調査対象は5か国で、現地のカウンターパートの協力を得て、zoom等を用いてオンラインインタビューを行いました。
上記のようにICTを活用することで、長距離移動や三密を回避しつつ教育・研究・共食を行うことが可能であると立証し、withコロナ時代の新たなフィールドワークの方法を提示する意義のある取り組みとなりました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
周教授は、「武漢支援に対する感謝、日本の新型コロナ防止に対する支援」を目的とする「「愛返福来」京都・日本支援」活動を発起人と統括実施者として研究室所属の院生と卒業生、立命館大学中華校友会、日中発展促進会や京都日本支援有志者一同と実施しました。
活動第1段階は立命館中華校友会(張沖09年度政策科学研究科修士課程修了、衡彦龍同07修了、凌奕樹同博士後期課程在籍中、周巧鳳01年度経営学修士課程修了、張青雲同08年度MBA修了、尤会超09年APS中退、楊希堯1993年度文学研究科修士課程修了など)、日中発展促進会(橋本昌彦事務局長等)、と京都支援有志者(倪継紅浙江大学ボストン校友会会長、孫志国上海留日同学会元事務局長等250名)、並びに複数の有志企業団体(浙江緑城慈善基金会、上海卡桑国際貿易有限公司、日本浙江総商会など)の協力を受け、学校法人立命館をはじめ、京都市内にある小中大学、病院、福祉施設、政府機関等に対して、計600万円分に相当するマスクなど医療物資と学生支援金1,288,888円を寄付しました。
活動第2段階は日中発展促進会と共に、有志企業(DaddyBaby株式会社)と協力して、立命館学園以外に、京都、大阪、兵庫、熊本、岡山、名古屋、奈良、東京、埼玉等地域の小中大学、病院、福祉施設、政府機関等に対し、計60万枚のマスクを寄贈しました。
上記の義捐活動は、研究室出身者(卒業生・現役院生)とRU・APU卒業生が中心となり、協力して実施した優れた社会貢献活動となりました。「飲水思源」「恩返し」「助け合い」「愛返福来」など社会貢献精神の醸成の教育実践活動となったこと、および、この活動は令和2年度京都市自治記念式典にて京都市長により表彰されたことから、学内で共有する意義が大きい取り組みとなりました。
それ以外に、周研究室では院生を中心とした研究チームをいち早く結成し、日本全国と京都市を対象に、新型コロナ禍による国民の生活満足度影響に関するアンケートを実施し、100以上の国・地域の感染状況や中国、日本、米国、韓国、台湾、ニューヨークなど国・地域の感染防止対策に関する計量分析を行い、また中国浙江大学と共同研究会を開催し、新型コロナの感染特徴と対策に関する政策工学的研究を行いました。院生執筆の研究成果を含め、政策科学誌に計8本のディスカッションペーパーを発表し、また政策決定者向けの政策提言や国際発信に努め、新型コロナに関する研究教育活動にも熱心に取り組んでいました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
経済学研究科では、多くの大学院生が統計解析ソフトStataを用いて実証研究を行っています。また、大学院生が履修する講義でも同ソフトを用いた演習を実施しています。このソフトは大学設置のパソコンにインストールされているため、コロナ禍で大学への入構制限が行われた際や日本に入国できない状況で研究活動を自国で行う留学生がそれらを利用できず、学習・研究活動に支障が出ました。
こうした状況を受けて、学生が自宅のパソコンにインストールして利用できるよう、経済学研究科においてリモート・ライセンスを購入し、使用希望者に配布しました。教育・研究活動が終了しソフトを利用しなくなった利用者にはアンインストールの徹底を指導し、利用可能になったライセンスを新たな利用希望者に配布することで、限りあるライセンス数を効率よく利用する仕組みを構築しました。
コロナ禍において、学生の自宅での学習と研究活動を継続・促進し、計量経済学をはじめとする講義の円滑な実施、および修士・博士論文作成にあたっての研究環境の整備については意義のある取り組みとなりました。また、アフターコロナにおいても、場所や時間を選ばずに学習・研究が可能となる各種リモート・ライセンスの導入の検討の際には、本取り組みによるライセンス管理体制および実績が有効活用できるものと考えられます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
産業社会学部小澤ゼミでは、2008年度から嵐電沿線多言語観光マップの制作に取り組んできました。2019年度~2020年度は、京福電鉄側への聞き取りと現地フィールドワークを実施したうえで、京都嵐山エリアの観光過密・過疎問題の解決を目指したレンタサイクルマップ制作をターゲットとすることになりました。右京区まちづくり支援金を基盤として、京福電鉄が運営する「らんぶらレンタサイクル」と連携し、5つの言語表記(日本語・英語・中国簡体字・中国繁体字・コリア語)のサイクリングマップの制作を目指しました。コリア語・中国語版(簡体字・繁体字)の翻訳ではコリア国際学園(校長は、立命館大学大学院卒)や立命館大学留学生、産業社会学部・社会学研究科を卒業したOBなどの協力を得ることができました。英語版は学生が、最初に翻訳し、担当教員と英語非常勤講師がチェックし、万全を期しました。
プロジェクト途中でコロナ禍に遭遇し、フィールド活動においては、多大な困難に遭遇しましたが、多くの関係者の協力を得て、マップを完成させることができました。本プロジェクトでは、サイクリングによる「健康な観光」というコロナ禍における観光復興に向けた足がかりを提案するという大学らしい社会貢献活動になりました。また、ポストコロナにおけるインバンズ観光の復興を睨んで、多言語版マップを準備することもできました。こうしたコロナ禍で疲弊する嵐山地域や観光業界を元気づける意義のあるチャレンジは、長年にわたる活動蓄積による信頼形成が基盤となって実現したもので、COOP教育(連携先とともに学生・教員が成長する)という理念も実現できました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
日本経済史を専攻する細谷ゼミでは、2016年以降、ゼミ研究の発展・深化を目的として香川大学の教員・学生と学術交流を行ってきましたが、コロナ禍では対面形式での交流ができなくなりました。そこで、急遽zoomを利用したオンラインでの交流に転換し、経済史・現状分析に関わる5つの研究テーマの発表が行われました。
初めてのオンラインでの報告・討論となり、対面での交流とは異なる難しさもありましたが、学生たちは1年間の研究成果を入念に準備した資料を用いて堂々と発表したほか、zoomのチャット機能なども活用しつつ充実した質疑を行いました。
今回の実施については、移動時間・空間上の制約がなくなったこともあり、オンラインを通じて二つの大学の学生を結び付け、手軽に交流できた点は大きなメリットとなりました。また、準備の過程では、制限があるなか学生は可能な限り学内外での資料調査を行うなど、感染防止に努めながら旺盛な研究活動を展開しました。その結果、コロナ禍以前のゼミ研究と比べても遜色のない質の高い研究が発表されました。しかし、対面交流のような独特の緊張感・雰囲気を味わうことができない点や、交流会とその前後での雑談・コミュニケーションが思うように図れない点、また、開催までには相手校との調整をはじめ、時間外での学生の研究指導を含めて相当な準備時間を要したことは今後の課題となりました。
コロナ禍において、新たな方法・実践により大学・ゼミナール間での学術交流を継続できたことは、これからの大学での学びの魅力・可能性を伝えることに結び付いたと言えます。普段あまり接点の無い他大学の教員・学生からのコメントも大きな刺激となり、指摘された課題を踏まえてより水準の高い研究論文へとブラッシュアップ出来ました。
上記のようなオンラインを活用した学びの事例は、コロナ禍での学びの質保証という点において意義のあるものとなりました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
経済学部1回生向けの科目「実践経済演習」にて2クラスがコロナウイルス感染防止に努めつつ、合同で対面でのグループワークやプレゼンテーションを行いました。
具体的には、グループワークはオンラインで行いつつ、対面で行う際は、適切な間隔を確保するため2教室を用意し、教員と2名のESが両教室を行き来しつつ指導しました。プレゼンテーションの際は、大教室を利用し、紙のレジュメを全員1部ずつ用意し、配布場所で密が起こらないよう間隔を空けてレジュメの山を作り、かつ順次移動するよう動線の設定を図りました。また、報告者が入れ替わりで触れる教卓上には、非接触型のアルコールスプレーを設置し、機器類を使用する際は、報告時に学生が自ら操作する必要がある機器を除き、可能な限り教員が操作することを徹底しました。
上記のような対策を行った上での2クラス合同プレゼンテーションでは、発表者はその発表に力を尽くし、聴衆となった学生からは質問が飛び交ったことで、活発な報告会の実現となりました。
コロナ禍で種々の複合的理由から対面授業が困難な中、オンラインでの学びに加えて、クラス間の対面での交流・対抗的要素を取り入れたことで、コロナ禍における初年次教育の新たな可能性を示すことができました。こうした経済学部での初年次教育の実践は、今後の学部教育の発展はもちろん、R2030(学園中期計画)を見据えた本学の主体的な学びを前に進めるうえでも意義のある取り組みとなりました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
これまで経済学部の演習・卒業研究では、経済実験用のソフトウェアを用いた対面での実験を行いデータを集めてきましたが、コロナ禍において対面実験が難しくなりました。そこでオンラインで実験ができるよう、比較的新しいプログラムであり自由度が高いoTree (Chen et al., 2016)というソフトウェアを導入することに決めました。しかし、このソフトウェアを操作するには複数のプログラミング言語を用いる必要があり、またインターネット上に存在する資料や質疑応答用のフォーラムが英語のため、利用のハードルが高いことがネックでした。そこで、oTreeの習得を促すため、Slack(チャットツール)を複数の利用頻度の高いゼミに所属する学生間で導入し、気軽な情報交換ができる場を用意しました。
Slackは、ゼミを横断することも可能であり、また後から参加した人も前に共有された資料や質疑応答等を全て確認することができるため、学生が自由に学ぶことが可能となりました。また、oTreeの使用経験がある元院生や他大学の教員の方々等に参加してもらい、質疑応答用のスレッドを作成することで日本語でも質問しやすい環境を整えました。
このような実験をオンラインで行う必要があったのは本学だけでは無いため、他大学の学生にも情報共有の需要がありました。そこで、大学の垣根を無くし推薦制で希望者は参加できるようにし、合計150人以上の人が参加するプラットフォームに成長しました。
複数の教員による協同作業により、様々な大学の学生たちが必要に応じてオンライン上で自習する環境と資源を整えることが出来ました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
寺脇ゼミは、毎年地域連携・課題解決型のプロジェクトを新規に起こし、ゼミ全体でその活動に取り組んでいます。コロナ禍において活動が制限される中、感染拡大防止の観点から、必ずしも会話を目的としないブックカフェに注目し、その「静かに本を読みながらカフェを楽しむ空間」に対する人々の選好を明らかにするプロジェクトに取り組みました。具体的には、学生らは琵琶湖の畔にあるなぎさ公園にて、屋根もなく、イスとテーブルが並べられただけの、完全に開かれたブックカフェ空間を創り出し、滋賀の古書店に出店協力を得て自然豊かな空間で読書と共にカフェを楽しむイベントを企画しました。また、イベント参加者を対象にアンケート調査を行い、得られたデータを分析することで、人々はブックカフェであれば、普通のカフェと比べてコーヒーの価格が140円まで高くなってもよいと考えていることを導き出しました。活動資金はクラウドファンディングにより集められ、期限まで20日以上を残して目標額が達成されました。
この活動の遂行には膨大な時間がかかっており、事前に多くの店舗や団体と協力の可能性を探りながら、最終的に大津市から公式の後援を取り付けました。またプロジェクト開始後も学生らの行動範囲・頻度を最小限に抑えるため、関係機関との調整や運搬などを自ら担いました。
当該ゼミで実施している地域連携・課題解決型プロジェクトは、本学ならびに経済学部における社会地域連携を重視する教学の方針と整合し、かつその発展に大きく貢献しています。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
コロナ禍において、経済学部生に向け、以下のG-Alps企画(国際交流関連企画)をオンラインにて実施しました。
詳細については、主に留学経験者からの体験発表や、各国の文化についての紹介、質疑応答などを行いました。広報・募集はmanaba+Rや講義を通じて行い、いずれも参加者が少なかった企画については、事後にmanaba+Rで当日の録画を公開しました。企画後にはアンケートを実施し、高評価が寄せられました。
渡航による留学や国際交流が困難となる中、オンラインを生かして、参加者が主体的に留学や国際キャリアへの理解を深め、各国の外国人学生と英語や中国語での交流を体験できる有意義な企画となりました。
今回の企画を通じて、オンラインを活用した国際交流企画は、渡航や招聘のための交通費、教室予約等の企画実施に当たっての費用が僅少であるにも関わらず、参加者が語学力や国際理解を深める貴重な機会を提供しうることが確認出来ました。こうした取り組みは、海外渡航が難しいウイズコロナ時代だけでなく、アフターコロナ時代においても学生が気軽に参加でき、留学準備や実践的な外国語コミュニケーション力の育成、国際理解に資する企画としてのモデルを示しました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
コロナ禍において現地での海外留学プログラムの実施が困難な中、中国協定大学である大連外国語大学、東北財経大学とオンラインでの実施を行いました。オンラインでの留学実施経験が無い中でどのような内容で進めるかなど、相手先大学の協力も得ながら、コロナ禍における新しい海外研修プログラムの在り方を模索しました。
コロナ禍において海外留学プログラムや海外研修のプログラム実施が難しい中で、こういったプログラムに参加したいという、意欲のある学生の学習意欲を如何に維持し、刺激するかが重大な課題ですが、オンライン実施にすることでこれらの課題を解決することが出来ました。
また、オンライン留学を計画・実施することで新しい留学形態の可能性を示すことができ、今後渡航が可能になった場合でも、留学前段階での学習や、留学後の継続学修等、あるいは費用その他の理由から参加が難しい学生への学びの提供の一形態としての可能性を示しました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
佐藤教授は、コロナ禍においてオンラインで授業を実施する中で予習教材(material)、授業での説明(direction)、説明通りに理解できているか復習での評価(feedback)の3点が必要であると考え、以下の取り組みを行いました。
予習教材については、manaba+Rの「小テスト」機能を用いてデジタル版穴埋め予習ノートを作成し、受付終了時に採点結果と正解を公開しました。このノートでは学生が予備知識なく穴埋め問題が解答できるように、解説文の記述を厚くするだけでなく、表やイラストを多用し、YouTube動画や学習サイトへの外部リンクを貼ることで自学自習できるよう配慮しました。授業自体はAnchorというアプリを用いてラジオ番組風のポッドキャスト配信を行いました。ポッドキャスト配信の授業を行うことで、動画作成が苦手な教員にも容易に授業作成ができるだけでなく、インターネット環境が整わない学生にとっても通信料を気にせずスマホで簡単に聴くことができました。復習への評価については、manaba+Rのアンケート機能を用いてデジタル版ミニッツペーパーを作成しました。ミニッツペーパーでは、授業のポイント要約・質問・メッセージを学生から回収し、要約には採点を付け、質問とメッセージにはコメントを付けて返却しました。担当授業では500人以上の受講生が週2回受講するため、返却作業は通算1万5000人分と膨大なものとなりましたが、Excelの関数機能を使って採点・コメントを行うことで省力化に成功しました。また、ミニッツペーパーにはハンドルネーム記入欄も設け、紹介したいメッセージを書いた学生にはポッドキャスト配信による授業内でもラジオさながらに返答しました。
オンライン授業であっても、対面授業で必要となる予習・授業・復習の要素を工夫して取り入れることで、学生の学びを止めない授業事例として成果をあげました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
ゼミナール大会は、毎年学部生の研究成果の集大成を発表する貴重な機会です。この取り組みは学生の研究活動のモチベーションを形成してきたと共に、附属校からの参加も受け入れて高大連携に貢献してきた行事であったため、コロナ禍においても継続開催は必至でした。そこで、2020年度はZoomで開催しました。
ゼミナール大会は、発表のための論文受付や審査担当教員への振り分け、分科会の実施などで構成されており、すべてをオンライン化する必要がありました。オンラインでもスムーズに運営ができるようにするため、各参加チーム名は研究テーマを端的に表すものにして、研究分野や手法を選択して申告させ、論文審査の割り振りや分科会の編成作業が省力化できるようにしました。審査論文の割り振りはプログラミングが得意な教員の協力を得て、システムを試作し実施しました。
本番は、様々なトラブルを想定した上で、各分科会は教員2名体制をしき、参加チームは録音済のプレゼン電子ファイルを提出させる等工夫を凝らしました。また、Zoomでの開催ということもあり、附属校には広く参加を呼びかけたところ、3チームが参加し高大連携に貢献することができました。様々なリスクを想定し、大規模な行事を遂行し、学生の学びの機会を保持できたことは大変意義のあるものとなりました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
経済学部では、アカウンティング分野の初年次教育の学習支援を充実させ、財務会計プログラムの実質化と学部・大学院の教学連携を強化するために2018年度からアカウンティング学習相談会と「財務・会計プログラム」説明会を実施しています。コロナ禍においては、zoomを利用したオンラインと対面でのハイブリット方式で実施しました。
学習相談会実施にあたり、感染対策を徹底し、関連科目の外部講師、学部事務室、メディアライブラリーの協力の下、財務・会計プログラム運営委員を中心に、税の専門家を目指す学部生(ES)や税理・財務コースの大学院生(TA)を相談員とする対面授業の要請が強い1回生に対するピア・サポート体制を整備しました。これにより、簿記相談だけでなく、公認会計士等に関する進路相談があり、「財務・会計プログラム」説明会への誘導に貢献しました。
「財務・会計プログラム」説明会及び講演会企画は、これまで会計士等の外部講師による講演会を実施してきましたが、コロナ禍では、進路支援策だけではなく、公認会計士・税理士・国税専門官の勉強に取り組んできた経済学部4回生によるパネルディスカッションを企画しました。この上回生からの経験やアドバイスは、1回生にとって貴重な機会となり、アンケートによる評価は非常に高いものとなりました。コロナ禍で様々な制約がありましたが、本取り組みによって「財務・会計プログラム」申請者は微増しました。また、本学公認会計士合格者が増加傾向にあるなか、2020年度経済学部在学生の合格者数は全学でも最大数を占めるに至り、合格者に「財務・会計プログラム」登録者が含まれていること、2020年度アカウンティング学習相談会ES経験者や相談者が、2021年4月入学大学院学内進学者に含まれていることなど、本取り組みの波及効果が一定程度確認出来ました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
コロナ禍をうけ、今後授業の在り方がオンライン・対面の両方に展開していくと予想し、それらに対応した反転授業方法を開発し、各種授業で実践しました。反転授業とは、学生が授業時間前に教科書・資料の通読や講義動画の視聴を行い、授業では講義内容の理解を深める課題に取り組み、議論などに時間を多くさく授業方法です。学生らは「自分の好きなペースで受講ができる」「授業時間中には協同で課題に取り組むことから学生間、学生・教員間で学習内容のフィードバックが生まれ、学習内容の定着が進む」といった利点が得られます。特に交流が乏しくなるオンライン授業では二つ目の利点が有効です。
国際経済学における授業アンケートでは、授業外学習時間が2019年度春学期・秋学期にはそれぞれ2.5、2.4だったものが,2020年度春学期・秋学期にはそれぞれ3.8、3.3に上昇し、アンケートのコメントには「コロナ禍における模範的な授業形式であった」「講義資料、疑問点へのフィードバックがとても丁寧で手厚く良かった」「“授業では他者と協力しながら問題に取り組むことができ、web授業でも大変満足した」などの声が寄せられました。
この授業方法は動画視聴や資料の精読が主な講義部分となるため、対面/オンラインの切り替えに影響が少なく、ウィズ・コロナにおいても有効であると考えられます。一方、教室での問題演習は速やかでインフォーマルな会話や自発的で流動的なグループの形成と組み替え、授業全体の雰囲気の把握と共有など、オンラインではなしえないものを活用して受講生の学習到達度を高めることができるため、対面授業を行う説得的な理由になるコロナ禍の実情に見合った有意義な取り組みと言えます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
2020年度秋学期、1回生に対面での学習機会をもってもらうため、実践経済演習Iは基本的に対面授業を実施することしました。入学直後に入構制限かかかり、コミュニケーションが十分に取れていない1回生が同級生たちとクラスで活発に交流できるよう、授業のスタイルをグループ学習スタイルにしました。
具体的には、「専門外国語ワークショップ」では、外国語を「読む」ことが学習の中心ですが、入門レベルのミクロ経済学の英語動画を教材として使い、外国語を「聞く」ことを学習の中心としました。英語のリスニングに興味がある学生が集まったため、受講生による「おすすめ英語動画」の個人プレゼンテーションでは、優れた動画が多く紹介され受講生の授業外学習に刺激を与えることができました。また、毎回の授業で、同じ動画を見た者同士での話し合いと,違う動画を見た学生と両方と話し合いをさせることで、受講生同士の交流する機会を増やしました。また、毎回3つの動画の要点、確認問題および確認問題の解答例の提出を課題とし、学習習慣が付くように工夫しました。ほかにも、提出物へのフィードバックを必ず付けるようにしたり、授業がワンパターンで飽きないよう、3・4回に1回は受講生による「おすすめ英語動画」の個人プレゼンテーション行う機会を設けました。こうした工夫により、1回生が春学期には得られなかった「リアルな学生生活」を体感することができたと考えられます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
2021年3月に執り行われたテクノロジー・マネジメント研究科(MOT)博士課程前期課程学位記授与式では中国人留学生46名が修了を迎えることとなりましたが、コロナ禍で帰国困難であった中国人修了生たちの晴れ姿を、中国の保護者を交えてお祝いできるようにとMOT学位記授与式を日中2カ国語でライブ配信しました。
コロナ禍で時間的な制約があるなか、韓講師の日中2カ国語による司会のもと、事務室とも連携し修了式は例年同様スムーズに挙行することができました。
学位記授与式では式次第全般にわたり、日中2カ国語でライブ配信することによって、MOT教学の状況が遠隔の保護者にリアルに伝わり、多くの共感を得ることができました。特に担当教員全10名からの修了生たちへの祝辞を通して、コロナ禍に外国語で修士論文を完成したことの意義、今後の人生においてMOTの理論的実践的教育がどのように役立つか等、教学における多様な視点から各教員の心のこもった言葉が、中国語で直接伝えられたことの意義は大きく、コロナ禍においても貴重なコミュニケーションの機会を実現できた好事例であると思います。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
テクノロジー・マネジメント研究科は、「技術とビジネスを結び、新しい価値を創造する」イノベーションを主導し、新事業や新市場を創出する将来のリーダー養成を目指して、社会人学生と学部等から進学した学生が共に学んでいます。当研究科では、「理論と実践の習得」を目指し、テクノロジー・マネジメント研究科ならではの実習として、「選択科目」の中で、インターンシップを発展させた「プラクティカム」を実施しています。その特徴は、“実習先で企業等の仕事を経験する”一般的なインターンシップとは異なり、企業が実際に直面している課題に学生が取り組むという「課題解決型長期企業実習」です。
例年は対面で行っていた「プラクティカム」ですが、コロナ禍ではそれも叶わず、参加企業・学生・教員・事務職員が協働して、コロナ禍のハンディを克服し、ハイブリッド環境で適切にプロジェクト管理して例年通りやり遂げることが出来ました。
具体的には次の3点の取り組みを行いました。まず第1に、担当教職員が参加企業と十分な事前協議を行い、授業実施の理解と協力を得ることで、学生と参加企業のWEBミーティングをスムーズに行うことができました。第2に、参加企業においてもコロナ禍で様々な制約があるなか、担当教員が遠隔・対面で柔軟に対処しながら学生指導を行い、調査のためのインタビューや参加企業の幹部への最終プレゼンテーションをWEBで行うことで、授業の目標を達成することができました。第3に、WEBを活用して来日できていない留学生を1人も取り残さず、授業の受講と研究活動を支援して成果物をまとめる支援を行いました。
参加企業・学生・教員・事務が緊密に協働して非常時の困難を乗り越えたからこそ、「プラクティカム」を通した実践的な教育・研究と人材育成の意義を再認識すると同時に、ニューノーマルな働き方を関係者全員で体現することができた事例であると言えます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
野間教授は、立命館大学副総長及び、学生部の職員、そして学生と協働し、コロナ禍における学生交流の新たな場として、サイバー空間上にもうひとつのキャンパス空間となる「Ritsumeikan Cyber Campus(βversion)」を構築しました。
Ritsumeikan Cyber-Campusは、ブレインストーミングやワークショップなどのチーム作業で注目されるオンラインホワイトボードサービス「Miro(ミロ:オンラインホワイトボードツール)」をベースにしたインタラクティブオンラインキャンパスです。ここには、学生だけでなく、校友や父母、教職員をはじめ、広く一般の方も参加できます。
参加者はオンライン上に作られた複数の島(キャンパス島やサークル島など)を自由に移動しながら、大学や学生の活動について理解を深めることができ、ZoomやSlackなどのコミュニケーションツールとの連携により、多くの人との交流を深めることもできます。
例えば、3キャンパスに所属する400を超えるクラブ・サークルや学生サポート団体に所属する学生から入部を検討している学生が説明を受けたり、交流を深めて入部したりする使い方が想定されています。
立命館大学では、キャンパスにおけるリアルな活動を充実させたうえで、積極的にサイバー技術を取り入れ、リアルとサイバーを融合させた「立命館版キャンパスDXプラットフォーム」づくりを進めており、「Ritsumeikan Cyber-Campus」もその一つの取り組みで、まずはクラブ・サークルなどの情報発信、交流からスタートし、今後機能を拡張していく予定です。その中で学生団体の各種活動ならびに大学の活動が俯瞰的に可視化され、交流が生まれることを目的としています。従来のVR技術ならびに既存のアプローチでは、「俯瞰的な視点」を得ることができず、かつアプリの導入などが必要とされていましたが、スマホを含めてアクセスが容易にできるシステムが完成しました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
新型コロナウィルス感染防止の啓発活動のひとつとして教職協働で取組みを進めた啓発教材(コロナクイズ)の開発チームをリードしました。この啓発教材は、オンラインでのクイズ形式による知識の習得と個々の到達度の検証が可能なつくりとなっています。学生がゲーム感覚で気軽に取り組めるよう工夫しつつ、難易度を2段階で設定し、徐々にレベルを上げることで、一定の達成感を持たせることが意図されています。
また、各自の解答を受けて、誤答した設問を中心に正解が得られるまで繰り返し類似の問題が提示されるなど、各自の習得状況に応じた対応を可能としたことも特長です。
本取組みは、開始から1ヶ月間で約5,000名を超える学生・院生が活用(学外者を含めた総アクセス数は13,000件超)し、単なるクイズに留まらず、全問正解者へ生協食堂利用カードを進呈することから、学生への健康維持・促進にもつながる副次的なメリットも生み出し、その貢献度は広がりを見せています。さらに、ゲームに付された啓発用のPPT(プレゼンテーション用ファイル)は、附属校や他大学からも啓発教材として活用の要請があり、感染症対策への有益な取組みとして各方面に波及効果をもたらすことが出来ました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
生存学研究所は、2020年度新型コロナウイルス感染症を最重点に置き、研究テーマで取り上げることをはじめ、2020年4月に発出された緊急事態宣言下での研究成果発信についても情報保障の観点から極めて迅速な対応を行いました。
2020年5月8日に開催されたオンラインセミナー「新型コロナウイルス感染症と生存学」と、2020年7月5日開催の「ウィズコロナ/アフターコロナのアクセシビリティ」において手話・文字通訳を伴ったセミナーをオンラインで行いました。
そのノウハウを活かして、2020年7月28日に行われた英語による国際セミナー「障害学国際セミナー2020」において、次の工夫を取り入れました。①動画転送で日本の傍聴者向けにZoom配信、②日本語への同時通訳、③②をもとにした手話通訳、④日本語字幕の4点です。特に手話とともに言語通訳と字幕を画面に出すという技術的難度が高い最先端の情報保障の取り組みに成功しました。
障害学国際セミナーは、2010年に日韓の障害学の対話の場として開始され、現在は日本、韓国、中国、台湾にて持ち回りで毎年開催される東アジアで唯一の定期的な障害学の交流の場として機能している国際セミナーです。
新型コロナウイルス感染症は障害者差別主義(ableism)を含め現代社会の既存の格差を拡大しかねない危機でもありますが、今回のオンラインセミナーでの国際交流は生存学研究所が重要視するダイバーシティとインクルージョンを進める上でとても先進的な取り組みであると言えます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
理工学部英語教育は、英語科のサイトEnglish Expeditions(略称EE)で管理・運営されています。EE から学生向け・教員向けアジェンダ(行動計画)が科目別・レベル別に毎週配信されます。他にも、オンライン成績管理システム、エッセイ課題の提出・採点・フィードバックシステム、ポスター/PowerPoint・プレゼンテーション準備・ピア評価システム、メールシステム等々、EE には多くの機能が備わっています。
コロナ禍において、課題の配信、消化と提出、採点、フィードバックがスムーズに行えるよう、「OLASS」(OnLine ASSignments)という課題提出システムを新たに開発しました。学生はアジェンダで事前に授業に関する情報を得た上で、Zoomセッションに参加し、授業を受けます。そして、課題の意図や到達目標、やり方の説明を聞きます。リアルタイムで参加できない学生もいるため、アジェンダから簡単に録画にアクセスできるようにしています。OLASS課題は授業開始時間からアクセス可能になり、提出期限はそこから4日後に設定されています。学生は、課題の画面に直接解答を打ち込み、途中何度も保存を繰り返しながら少しずつ仕上げます。教員は、3日以内に採点結果とフィードバックを学生に配信します。授業参加率、録画の視聴率ともに申し分なく、学生の提出物も良質で、成果を強く実感できています。科目によっては、予習・復習状況および授業理解の確認のため、オンラインでMini-quiz(小テスト)も実施しています。学生は各自の端末から3択の問題に解答します。3分間で前週の学習範囲から5問、当該週の学習範囲から5問、計10問解答するなど、ごく短時間の小テストです。
OLASS課題の内容は科目により様々です。例えば、「英語6 Discussion Skills」では、将来、研究グループやプロジェクト・チームなどで必要となる、ディスカッションのスキルを身につけるための学習をしていますが、併せて、全受講者にポスター・プレゼンテーションを課しています。学生はOLASS課題をこなす中で、ポスター準備・提出システムを使い、順を追ってポスターを完成させます。そして、学期末にZoom のブレイクアウトルームを利用しプレゼンテーションをします。秋学期の「英語8 Presentation Skills」でも同様の学習をしています。コロナ禍の今、各所でリモートワークが推進される中、オンライン会議やオンライン・プレゼンテーションの機会が増えています。就活でも多くの企業がオンライン面接に切り替えています。学生はこういった変化に順応する必要があります。授業でのZoomプレゼンテーションは学生にとって良い経験となったと考えています。
英語の授業に関してはEEにアクセスすることですべてが解決可能です。このような場を整えることで、コロナ禍にあっても学生に安心して学べる環境を提供できています。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
理工学部および生命科学部を対象とする「地学実験」は、 中学理科の教員免許取得に必須の科目です。授業のオンライン化に際して、受講生の持つデジタルデバイスの活用を通じて新たな学習体験を提供に取り組みました。
具体的例のひとつとして、スマートフォンアプリを活用し GPS 測位や太陽方位の観測を実施しました。いずれもアプリとしては手頃に結果だけが得られるものですが、身近なデバイスとアプリを通じて GPS 測位の誤差や、磁針の指す方位(=磁北)が真北とどう異なるかを授業内で解説しました。
さらに、データを基に操作可能な図を出力する JavaScript ライブラリを利用して、日本各地で取得された地震波形の公開データを可視化するサイトを制作し、そこから地震の震源位置や時刻を推定することを授業の課題としました。受講生がブラウザ上で地震波形を自由に拡大縮小することで、波形全体を概観したり、必要な細部の情報を精度良く読み取ったりすることが可能となりました。
ほかにも、ブラウザ上で画像を操作する技術(Canvas)を用いて、コリオリ力(転向力)がどう作用するかを可視化するコンテンツを制作しました。受講生がブラウザに表示された要素を図中の適切な位置にドラッグ&ドロップで配置していくことで、回転系内の見かけの運動をコマ送りにした際に得られる一連の映像を再現することができます。
これらの体験は従来の指導とは異なり、デジタルデバイスによって実現したもので、従来のアナログな実験装置を用いた説明用動画と組み合わせることで、学生の理解度向上に大きく寄与しました。 また、どの事例でも操作のために受講生が余計な技術を習得する必要がなく、理解の対象に集中できる点も重要です。これらが単にアナログ教材からの移植でなく、デジタルツールによる新しい体験であることは、今の社会的課題とされるデジタル・トランスフォーメーションのあるべき姿であると考えられ、他の実験科目においても参考となるアプローチだと言えます。
防災科学技術研究所のHi-net地震計公開データをダウンロードさせて頂きました。波形描画にはplotly.jsを、GPS測位にはGoogle mapを利用させて頂きました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
建築都市デザイン学科では、毎年30名程度の学生が卒業設計を選択しています。例年の卒業設計講評会では、設計図面や2次元パースをA1サイズ(841×589mm)6枚以上にレイアウトしたプレゼンボードに加え、模型作品(小さくとも1m角程度)を展示して対面で審査を行っています。審査は教員30名程度で行い、多くの下回生も来場する催しですが、コロナ禍において、対面実施では密が避けられない点、他府県から大勢の教員を招待できない点、下回生が自由に来場できない点などを考慮し、講評会のオンライン化を検討しました。しかし、卒業設計の講評会は本来大規模な展示を要するため、スライドショーの画面共有のようなオンライン化は不可能なため、専用のプレゼンテーション用WEBページ(以下、HP)を構築し、Zoomと併用することで、オンライン形式卒業設計講評会を開催しました。専用HPを構築することで、例年と遜色のない議論の場をオンライン上に設けることができ、遠方から複数の審査員を招聘し、見学者を受け入れることができました。
当初、専任教員と提出者本人との縮小した対面審査を行うことも検討されましたが、それでは単に後退するのみであり、例年と遜色ない教育効果は期待できないと考え、コロナ禍を新しい教育方法への挑戦の機会としてとらえ、この時期ならではの卒業設計講評会を学生とともに作り上げたことは、学生たちの記憶にも成功体験として残る意義ある教育成果であったと考えます。また、専用HPには卒業設計選択者の全作品を掲載し、英文表記にも対応させることで、世界中に本学科の取り組みを発信できるようにしました。
入構制限で、学生たちは不利な環境下での制作となりましたが、例年に比べて作品のクオリティが落ちることはなく、これは学生がモチベーションをキープできたことのあらわれであり、本取り組みを通じて学科の教育姿勢が学生へと伝わった証であると言えます。
授業、講演会などのオンライン化が進む一方、当学科の卒業設計講評会のようにオンライン化が難しいケースもありますが、高度にオンライン化を推進すれば十分な成果を挙げることができ、成果がオンライン上にアーカイブとして残る、学外への広報的効果などの副次的なメリットも大きいことを実感した好事例となりました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
BiosignalArtは、COVID-19の影響で日常生活が制限され、運動不足に陥っている人々が、家にいながら楽しく運動不足を解消できるようになることを願って開発されたWebアプリです。運動やトレーニングの動作・ポイントを分析し、その成果を点数・音楽として表現するWebアプリで、正しいトレーニングの指示も出してくれるため、利用者は自宅で手軽に運動を行いつつ、フォームの改善などが実現できます。
現在のバージョンで対応しているトレーニングはスクワットとショルダープレスのみですが、今後は運動・音楽の両方のバリエーションを増やしていき、さらには、ダンスなどの多彩な身体表現も取り入れながら、楽しく継続可能なコンテンツの拡充やアプリ全体のバージョンアップを予定しています。
本アプリは文部科学省と科学技術振興機構が実施する「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」における共同開発で、本大学は運動解析技術開発(Technology)、順天堂大学は運動監修(Sports)、東京芸術大学は音楽監修(Art)というそれぞれの強みを活かすことで、運動を点数や音楽表現に変換することのできるシステムとして開発されたものです。コロナ禍のため、3大学の開発者による打ち合わせはすべてオンラインでの実施を余儀なくされましたが、約1か月という短期間で開発を完了させ、無料アプリとしての提供を実現しました。アプリのコード開発などに関しては、本学院生や学部生が多大な貢献をしました。
緊急事態宣言による外出制限を受け、運動不足に陥りがちな人々に対して、大学の知でもって貢献したいとの想いから他大学の有志を巻き込んで開発されたアプリであり、R2030で掲げる社会共生価値の理念に合致する取り組みといえます。加えて、約1か月という短期間でスピード感を持ってアプリ開発を進め、5月には無料アプリとして提供を開始しており、時機を逸することなく必要とする人のもとに届けた点において、想いをかたちにする意志や実行力の重要性を示すものであり、共有する意義は大きいと言えます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
立命館大学文学部キャンパスアジア・プログラム(CAP)は、日中韓国際共同プログラムとして2年間2周の現地留学を軸に運営されています。新型コロナ感染症拡大が憂慮された2020年春、新年度のプログラム実施にあたって日中韓3大学で調整を行い、春学期冒頭より中韓CAP生の受入、本学CAP生の派遣双方で、オンライン留学を迅速に制度構築、実施しました。その基本方針は①現地での学びを止めない、②言語学習の伸長を損なわない範囲を勘案しながら、言語的障壁による忌避感を低減する措置を行う(本学CAP生対象)、③中韓CAP生の本学での修学を可能な範囲で保障する、④コロナ禍における留学の在り方を模索する、です。この方針のもと、先端的な国際教育プログラムを提供する取り組みを行いました。
本取り組みは、コロナ禍のごく初期から現地留学に代わるオンライン留学をプログラム全般において制度構築、実施し、学びをとめなかった点で本学の国際教育に大きく貢献したといえます。
学内共有の意義があるのは次の3点です。まず①オンライン留学実施のための入念な準備をおこない、不慣れなオンライン留学での混乱を引き起こさないよう努めたことです。3月時点でオンライン授業運営マニュアル(教員用)と学生用の使用マニュアル(日中韓3言語)を作成し、教員にはFDを、学生にはオンライン履修ガイダンスを実施し、新入生に対してはとくに配慮しました。つぎに②中韓協定校と協議を重ね、オンライン上での日中韓学生の交流の場を開設したことです。渡航中止によるモチベーション低下を防ぐ点で必要な取り組みでした。そして何よりも大きいのは③中韓協定校から提供されるオンライン授業に本学の単位を授与することとした点です。春学期には中韓のオンライン授業は単位認定の対象外でしたが、秋学期には本学CAP教員が担当者に加わり、共同開講としたことで、現地留学せずとも本学での単位授与が可能になりました。この変更は学生の学びのモチベーションを高め、オンライン上で中韓CAP生との共同学習と交流の機会を与えた点でも大いに評価できます。さらに冬期集中講義を通常学期に移動し、中韓協定校のCAP人文学講義(中国語・韓国語による講義)を授業時間内に取り入れてブレンディッド講義とし、本学での単位授与をさらに拡充しました。今後の国境を越えた学びの可能性を提示した事例といえます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
コロナ禍当初、manaba+R((履修・学生生活関連情報ポータル))のサーバーダウンが続出していた時期にYouTubeに個人チャンネルを開設し、講義「新しい日本史像」の動画をアップし、事態の解決を図りました。動画作成時には高いICT技術を有するTA(授業等をサポートする大学院学生)と協力し、教室や学外の貸スタジオで撮影を行い、テロップや背景音楽等の編集に工夫を凝らし、対面形式の授業と同等、あるいはそれ以上に臨場感のある授業動画を学生に提供しました。また、講義の要点をまとめた解説動画を作成・公開し、授業内容の理解が十分ではない学生への対応を行い、さらには授業の双方向性を保証するために、学生の感想にコメントを付したミニコミ誌を作成し、受講生全体に配布する取り組みを行いました。
具体的には次の3点です。
1点目は動画資料作成に技術的に優れたTAの協力を得ている点です。現時点では、動画資料の作成を苦手とする教員も多く、授業の動画化を支援してくれるTAは非常に心強い存在です。さらに、WEB授業におけるTAやES(授業での先生や学生のサポートをする学部生)活用の一つのあり方を示しているとも言えます。
2点目は、授業内容の理解が十分ではない学生への対応方法として、授業動画以外の動画を提供している点です。オンデマンド型授業の利点の一つは、学生は自由な時間に学習を進められることですが、24時間いつでも質問や相談の連絡がくるようになり、教員はその対応に追われる事態が散見されました。授業の要点をまとめ、一人での学習を確実なものにするための資料をあらかじめ提供する方法は、結果として教員の負荷軽減につながると言えます。
3点目は、オンデマンド型授業での双方向性を保証している点です。manaba+Rを用いて、教員が個別の学生に対してコメントを返す場合は、教員と当該学生間のみの関係ですが、本取り組みにあるように教員のコメントを、受講生全体にフィードバックすることで、教員-学生間のみならず、学生間の双方向性を生み出していると言えます。
これらはいずれも、WEB授業だけでなく教室での対面形式においても、質の高い授業を提供する際に参考となる事例であり、動画資料を配信するというオンデマンド型授業における、新しい授業づくりおよび授業運営のあり方として広く周知したい取り組みです。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
経営管理研究科は、2020年度春学期を控え、対面授業が困難であるとの独自判断から、いち早く授業方法の切り替えを決定し、院生の学修・学習ができるよう、切れ目無く授業支援する仕組みを構築しました。OIC独立研究科事務室の適宜適切なサポートにより、授業担当教員分のZOOM契約、使用方法の簡易マニュアルの作成、授業担当教員への案内、新入院生ガイダンスでの説明、2回生以上への案内を行い、開講開始日よりZOOMによるオンライン(ライブ)授業が実施できました。
また、5月にはFD(教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組み)を開催し、2名の専任教員からオンライン授業の実践報告をしてもらった上で、授業の進め方、留意点、院生の受け止めなどについての貴重な経験交流を行いました。本研究科は1回3時間、180分授業ですので、ディスプレイを見続けることによる目の疲れへの対応、授業への集中力を保つための休憩時間の頻度・回数など、教員と院生が協力しながら授業に臨みました。
特に、普段平日夜や土日に大阪梅田キャンパスで受講する社会人院生が、ZOOMで受講する環境を自宅で整えるには家族の理解と協力が必要でした。平日夜については帰宅に要する時間を考慮して、19時開始22時終了へと授業時間を臨時的に変更するなどの工夫もしました。試行錯誤はありましたが、グループワークもZOOM機能を活用して行い、グループの割り振りや時間配分などもかなりスムーズに運営出来るようになりました。
開講開始当初からのこうした実践は、院生の高い学修・学習意欲に正面から向き合い、応えるために行った先進的な取組みであり、優れた貢献であると自負しています。専任教員のみならず客員教授や非常勤講師は、突然のZOOMでの授業実施にもかかわらず、積極的に対応してくれました。院生たちは、未経験の授業方法に、素早く適応するには特段の努力と工夫をしてくれました。同時に、事務職員、事務組織の積極的対応と協働があって実現できたことであると考えています。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
2020年度のコロナ禍の中、本学のオンライン授業実施にあたって極めて早い段階(前年度末の2020年3月24日)で、オンライン授業の設計と運用に関するマニュアル(ライブ配信型と動画配信型の二方向において)を69頁に及ぶPDFで作成しました。これにより、映像学部全教員は、学部新年度授業実施前の段階でオンライン授業を準備することに大きな助けとなりました。授業準備を行う教員だけでなく学生目線を大切にし、その分かりやすさ、使い勝手の良さ、汎用性の高さから教学部にも共有され、両教員が所属する映像学部のみならず、4月2日には81頁に及ぶ更新版が教学部専用サイト(教学部による「教務支援ページ「Web授業」実施のサポート」)において公開され、各会議体でも本マニュアルを使用することが推奨されるなど、コロナ禍におけるオンライン授業実施に大きく貢献したと言えます。
また、今後、教育DXが立命館大学で展開していく際の有効な土台作りになったことにも注目いただきたいと思います。本マニュアルでのガイドを身につけた教員は、映像学部を中心に、2021年度のBCPレベル「3」に伴い再度のオンライン授業実施にあたっても、混乱を起こすことなく、円滑に移行をすすめることが出来ています。こうした経験値を蓄積することで、教育DXの展開へとつなげる土壌づくりにも寄与したといえるでしょう。この点については、本学園がすすめる教育DX(RiDX)の今後についての学部努力の共有がポテンシャルをもつことを示しているとも言えますし、グッドプラクティスとして学園内で共有されるべき好事例と言えます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
この取り組みは、高大連携による留学前講義プログラムとなっていますが、コロナ禍による留学渡航中止に見舞われながらも、高校側からの強い要請によって継続され、受講者から高い評価を得ているリモートと対面のハイブリッド講義プログラムです。本来は、高槻高校が運用していたアントレプレナーシップ(企業家(起業家)精神)の育成をテーマとした短期留学プログラムに、本学所属の研究者による事前講義を付加する取り組みで、2018年度に企画が始まり、2019年度に第1期が催行されました。コロナ禍により第1期受講者が渡航中止になるという大きな挫折に遭った後も内容の充実ぶりと受講者からの好評を受けて、第2期が留学渡航を前提とはせずに2020年度に催行されています。
2020年度の4回の講義は、9月25日(金)の第1回と10月30日(金)の第2回がリモート授業で、11月27日(金)の第3回と12月18日(金)の第4回が対面授業で行われました。
初回で、起業のみを目的とするのではなく複雑な世界を生き抜くための精神の構えとしてアントレプレナーシップを取り上げ、第2回で自分を知ることや発想の転換の重要性など日頃の生活にも活かせる内容を通じて探求心を喚起し、第3回でレゴシリアスプレイによって深い自己開示や他者理解を体験させ、第4回で身近な起業家の講演からより多くを学ぶ構成となっています。
前半がコロナ禍に対応した緊急的な遠隔授業開発の結果、後半が若干の落ち着きを取り戻した状況下で対面必須の内容をコンパクトに盛り込んだ結果であり、強いられたイノベーションではありましたが、厚い創意工夫と、林准教授が苦心して作り上げられた成果と言えます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
秋学期の基礎演習10クラスにおいて、1回生のクラスづくりや学習支援を積極的にサポートしようと、担当者全員が協力して対面授業とオンライン配信を組み合わせたハイブリッド授業を行いました。
10名全員が情報機器の取り扱いに詳しいわけではなく、また、対面で出席する学生とネット上の学生の両方に対してディスカッション等を含む双方向授業を行うという、慣れない授業運営を行うのは、かなりの困難を伴いましたが、各クラスの状況や成功例と失敗例を共有しつつ、また情報機器の扱いに関しては事務室やTAの学生の助けも借りながら、ハイブリッド授業を完遂することができました。
授業アンケート結果によると、学習意欲の促進や学びの役立ち度ほか、いずれの項目においても高い評価を受けました。また、教室に集う学生たちと、パソコンの向こう側のZoom参加学生たちとの積極的な交流に、教員も励まされました。
学修環境の維持という観点からも、コロナ禍でのオンライン対応は今後も必要不可欠であり、今後もその質向上を図っていく必要がありますが、一方で情報機器の取り扱いなどの個々の教員のスキルは様々であり、とくにそれらが苦手な教員にとってはハイブリッドといった授業形態は苦痛を伴うことも事実です。それを、情報共有しながら担当者10名が取り組みを共有し、チームとして乗り切ったこと、その内容に学生からも高い評価を受けたことは大変意義のある取り組みであったと言えます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
総合心理学部のカリキュラムである心理学統計法・データ解析法では、2020年度すべての授業をオンデマンド形式で実施しました。その授業で作成した講義動画および資料を「心理学統計法・データ解析法講義アーカイブ」としてmanaba+R(履修・学生生活関連情報ポータル)にて学部・研究科内の全学生に対し永続的に公開することとなりました。内容としては、心理学統計法に関する理論的な内容とともに、Excel等の操作方法など実践的な内容を多く含んでいます。講義動画は10〜20分程度の短時間のものを中心とし、動画の視聴しやすさを重視しています。動画の総数は2020年度終了時点で85本程度であり、2021年度に新規追加予定のものを含めると100本を超える予定です。
コロナ禍において、動画コンテンツは学習のうえで重要なツールとなることが社会全体で共有されましたが、作成された動画が公開される試みはあまり進んでいません。心理学統計法・データ解析法で学習する内容は、当該授業のみならずレポート作成・論文執筆など学部・研究科内での教学全体に関わる一般的な内容であると言えます。このため、講義アーカイブの公開は学生の学びを促進するための重要な基盤となり得ます。今後、さまざまな学部で講義アーカイブが公開されることになれば、全学的に学生の学びを促進することができ、そのアーカイブは大学全体の重要な無形資産となり得ます。このことからもこの取り組みは大きな意味を持つと言えるでしょう。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
フォトボイスとは、Photo(写真)とVoice(声)を組み合わせた参加型の問題発見、解決に向けた提案を考える方法です。地域の問題に直面する人々が、写真撮影や話し合いを通して、問題の本質を考え、解決法を模索し提案したり、変革に向け働きかけていくので、「参加型」の調査方法、住民「参加型」の社会変革の方法と言われています。(フォトボイスプロジェクト,2021)。
例年同様、フォトボイスを用いた課題を次のように設定しました。「自粛要請の中の自分、その声を、①言葉や絵、あるいは自分で撮った写真と、②10秒以内のナレーションをつけて表現してください。学年ごとにつなげて動画にし、そのURLを1回生等に伝えます。テーマは、自粛下の立命館大学総合心理学部生の声とし、いずれかのトピックを選んでください。1.今の正直な思い 2.総心のプライドとは3.社会に伝えたいこと4.今、私にできること」。
公開は選択でき、諾否が成績に影響しないことを前提に、2回生26名、3回生20名、4回生17名のフォトボイス動画が完成しました。再生回数はそれぞれ244、140、114で、4~6個のコメントがつきました。参考 フォトボイス・プロジェクト (http://photovoice.jp/ 20210416取得)
新入生からのコメントは次の通りです。
「こうやって記録しておくことで、コロナの状況がよくなったときも、今の気持ちを忘れないですね。ありがとうございました。」「皆さん、お疲れさまでした!ポジティブ考えるようになりました!」「先輩方の生の声が聞けて心がほっこりしました。前向きになれました。」「素敵なフォトボイスありがとうございます!写真や言葉で伝わるものがあるのは予想していたけれども、声のトーンなどからも伝わることがあるのがわかりました。私も家で過ごすのが苦手ではないけれどもお出かけも好きなタイプなので色々な意見があって安心しました。」「みなさん、フォトボイスを作ってくださりありがとうございます!!大変な状況だけれども、現在の状況に否定的ではなく明るい未来を想像して過ごしてる姿に感動しまし た!早く先輩方に会えるのを楽しみにしています!!」
これらのコメントからコロナ禍においてはこの課題が学年をこえた貴重なコミュニケーションとなり、新入生の癒しとなったことと思います。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
総合心理学部では、多くの学生の卒業論文や修士論文において、インタビュー法等を用いた質的研究が行われています。一方で、従来の心理学研究法は、実験法や質問紙法による統計的研究が主流で、総合心理学部のカリキュラムにおいても質的研究法の学習機会が相対的に不足しているとの指摘もあり、質的研究への学生のニーズに対して、その対応のあり方が問われていました。
コロナ禍において細かな指導ができなくなることが危惧されていましたが、立命館大学が他大学に対して優位性をもつ豊富な質的研究のスタッフによる動画配信(ランチセミナー形式による質的研究法講座)を実施しました。
セミナーは10のミニ講義で構成され、卒論執筆に有用な内容を網羅的に取り上げました。実施期間は、秋セメスターの特定の週に集中的に設定し、毎日2コマずつ(1つはライブ)配信され、年内いっぱいオンデマンドで視聴可能としました。ライブ配信時では、インタラクティブな質疑応答が行われるとともに、オンデマンドではメール等によって参加者の疑問に答えることで、個々の学生が抱える課題の解決を目指しました。
この企画は、当初学部生向けの企画として出発しましたが、博士課程前期課程、博士課程後期課程を含む、あらゆる学生・院生が、ライブ配信やオンデマンドでの企画に参加できるように調整をしました。参加者は、今回の学習を通して、質的研究法に関する理解を深めることができ、貴重な学びの場となったのではないかと考えられます。博士課程前期・後期課程の社会人(他大学教員含む)院生の一部からは、本学(部)が学生のニーズに根ざした企画を柔軟に考え、教員達がチームとなって迅速に実現させたことについて、高い評価をいただいています。
次年度以降は当該年度のベーシックな内容を中心とする構成に加えて、より実践的で主体的なワーク等も導入したアドバンストな取り組みも検討しています。
質的研究法を専門とする本学教員らを動員して、一連の講義をオンライン(+オンデマンド)で提供できたことは、学修の質向上とともに教員間の相互協力を促進し、こうした取組みをSNS発信することにより、立命館大学総合心理学部のもつ優れた研究力/教育力/即応力を広く発信できたと言えます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
総合心理学部・人間科学研究科では、学園ビジョンR2030の政策目標「テクノロジーを活かした教育・研究の進化」の具体化を目指し、動画コンテンツの授業活用のノウハウ開発を目的に、VOD教材の検討部会を設置し、映像編集・配信システム「Mediasite」の授業への導入と活用について検討を進めてきました。
新型コロナウイルス感染症の流行拡大に伴う2020年度春学期オンライン授業対応では、全学に先行して2020年4月から「Mediasite」を導入し、このシステムの活用方法を中心としたオンライン授業に関するFD(教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組み)を休講措置解除の直前に開催し、教員全体でMediasiteの基本的な操作方法やVOD検討部会の委員による授業への活用方法が共有され、総合心理学部・人間科学研究科では迅速かつスムーズにオンデマンド授業に移行し、学生・院生に適切な学びの環境を提供(維持)することができました。
この取り組みはR2030の具体化を見据えて教員と職員が連携しつつ、全学に先行して学部全体で入念に検討してきたものです。
新型コロナ禍でのオンライン対応を「教員個人」に委ねるのではなく、「学部・研究科の教員全体」の課題として位置づけ、導入期であるにも関わらず、柔軟に対応し、学生の学びを維持できたという成功体験は全学にも好事例として周知できる意義ある取り組みと言えます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
教職大学院の学びにおいて、学校現場での長期実習(10単位)の位置づけは非常に重要です。しかし、コロナ禍において、全国の小学校、中学校、高等学校が大混乱に陥ったことで、学部の教育実習を含めて、教員養成における実習の実施も困難な状況となりました。
教職研究科でも、2020年4月当初は実習を中断していましたが、教職専門研修運営委員会の実務家教員7名が連携して、院生たちの学びを止めないようにするため、中断している時期における院生への適切な課題の提示と指導、実習計画の見直しと実習再開にむけた教育委員会や実習校との丁寧な調整に取り組みました。さらに、再開後の院生指導などに迅速に対応し、院生への影響を最小限に止めつつ、実習を実施することができました。
教員養成など、現場での実習に重きがおかれる教学領域においては、大学だけの判断で対応できる事柄ばかりでなく、常に、教育委員会や実習校の状況を踏まえつつ対応していなかければなりません。しかも、都道府県、政令指定都市ごとに判断が異なる中で、院生に対して統一の方針で実習を行うことは容易ではありませんでした。こういった状況を、組織的に、しかも迅速に対応した実践は、他の領域の実習系科目の運営にも参考となると考えられます。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
田中准教授は、授業が休講中の2020年4月に、Zoomを用いた授業を実施するにあたり、院生への周知、接続練習、Wi-Fi環境などについての院生の実態把握などに迅速に取り組みました。また、Zoomを初めて使用する教員への支援をはじめ、立命館の附属中学校・高等学校において、Zoomを活用したオンライン授業に長けている教員を招聘し、オンライン研修なども企画・実施しました。これらの取り組みによって、5月の連休明けからのオンライン授業への転換を円滑に進めることができ、また、教職研究科の教学特性を、オンライン授業においても最大限に発揮できる方法を、研究科の全教員が理解、共有することができました。
全学では、教学部を中心にオンライン授業実施にむけた様々な支援がされていましたが、それらを研究科の教学特性とうまくリンクさせることが肝要でした。オンライン授業に長けた現職教員による研修などを行うことで、研究科教員がオンライン授業の可能性、方法、留意点などを事前に十分に理解することを可能としました。
※職位・役職は2020年度当時のものです。
教職研究科は、独立行政法人教職員支援機構立命館大学センターの任も担っており、現職教員に対する研修の場を提供することが期待されており、近隣自治体に勤務する現職教員への研修の場を提供することは、本学の社会貢献としても重要であると考えています。コロナ禍によって、当初予定していた形で研修プログラムを実施することができなくなりましたが、現職教員向けの研修講座を中止する大学・教職大学院も多かった中で、小松准教授は年間の計画を大幅に修正しながら、オンラインを活用した研修講座の実施を主導しました。対面・集合型の教員研修講座が多い中で、教育委員会等の関係者からの意見聴取を踏まえ、オンライン型の教員研修を企画・運営し、結果としても、参加者から高い満足度を得たことは、特筆すべき試みであったと考えられます。
現場で活躍されている教職員に対して、公立・私立の区別なく「学び続ける場」をいかに提供できるのかは、大学の社会貢献としても重要な課題であると考えています。その中で、オンラインを活用した現職研修のあり方を検討し、実施した試みは、今後、教職研究科が実施する教員研修講座に新しい地平を拓いたと言えます。
児童・生徒の学びの保証についての議論は多くなされていますが、児童・生徒への学びを提供している現職教員の学びを保証することも重要な課題であり、小松准教授の活躍によって、コロナ禍においても現職教員に対する学びの場を提供できたことは、本学の社会貢献としても重要な取り組みであったと考えます。