
小さいころから憧れていた外務省総合職に内定。「当たり前の日常」を外交を通じて守ることができる外交官になりたいと思っています。
田中 春 さん
国際関係学専攻 4回生
国家公務員採用総合職試験に合格し、卒業後は外務省で外交官としてのキャリアをスタートさせる田中さん。外務省を目指したきっかけや、大学で取り組んできたことについてお話を伺いました。
国際関係学部を志望した理由を教えてください。
田中1つ目は、国際関係に関する学問を広く深く学びたいと思ったからです。戦争や紛争が起こる理由は、政治や経済、法律、宗教など複数の要因が複雑に絡んでいるため、それらを分野横断的に学習し、今何が起きているのか、根本的な原因は何かという事を知りたいと思ったからです。
2つ目は、「国際公務プログラム」に興味があったからです。これは、国関の20人弱の少人数クラスで国家公務員や国連職員などを目指す学生が集まるプログラムです。「プロフェッショナル・ワークショップ」という、国際公務分野の現場経験が豊富な方や第一線で活躍されているゲスト講師のお話が聞ける講義もあり、良い刺激を得られるのではないかと考えました。
大学では4年間を大切に過ごすことを意識し、「やらないで後悔よりもやって後悔」をモットーに掲げていました。大学の授業では積極的に質疑応答や自分の意見を発言しようといつも思っていましたし、少しでも外務省に関連するイベント等の機会があれば積極的に参加しようと思っていました。
外務省を目指すようになったきっかけを教えてください。
田中最初のきっかけは小学生の時に通っていた寺子屋にあります。そこでは算数のドリルを1ページ解くと、お菓子が1個貰えました。私はそれがオランダのお菓子であると知り、日本の「外の世界」に興味を持ちました。またその先生が元外交官の方で、初めてそこで「外交官」という職業を知りました。
中学校の総合の時間に「外交官」について職業調べを行った際、「国のために最前線で交渉を行う仕事」と知り、かっこいいなと憧れを抱きました。同時に「シリア難民」のニュースを見て、自分と同じくらいの子供たちが命の危険にさらされ、毎日の食事も十分にとれないということを知り、何とかしたいと思いながらも無力な自分に嫌気がさしていました。
高校生の時に一か月間、イギリスのサマーキャンプに参加しました。それまで15年間佐賀県の田舎町で育ち、日本から出たことがない自分にとって、人生の分岐点ともいえる経験でした。ヨーロッパ諸国や中東、南アメリカなど言語も背景も異なる同世代くらいの学生と同じことで笑ったり、涙したりする中で、そうした壁を乗り越えて友達になれるということを知りました。そして戦争や紛争のない世界を作りたいと思い、国際関係が学べる大学を選びたいと思うようになりました。
田中大学入学後は自身の知識の浅さと国際社会の複雑さを実感するばかりでした。楽観的理想主義であるだけでは物事は解決せず、何度もやるせない気持ちになりましたが、ロシアのウクライナ侵攻や日本の周辺環境が厳しくなっていく世界情勢の中で、国家公務員として国益のために尽力したいと思うようになりました。
また外務省で働かれた方や現役で働いていらっしゃる方との出会いがあり、日本の外交政策を考えて他の国と交渉をしたり、国際会議の場で国際法の遵守を主張する日本の立場を示したり、国際協力や文化交流を行いながら国と国の良好な関係を築かれてきたり、といった外務省での実際のご経験をお聞きする中で、「まさに自分が一生かけてやりたい仕事はこれだ」と確信するようになりました。
具体的に合格するまでどのような準備をされましたか?
田中2回生の時に関心のある国際法の判例をパワーポイントにまとめ、持ち回りで発表する「国際法判例研究会」という自主ゼミに参加しました。国際法の西村智朗先生にもご出席していただき、指導いただく中で、国際法の授業で学んだ判例以外の新しい判例を知ったり、議論の中で新しい論点を得ることができたりと凄く勉強になりました。
3回生からは、足立研幾先生の国際政治ゼミを選択しました。足立ゼミでは国際政治理論を学習し、それを活かして過去の政策とその時に取り得た他の手段と比較し、なぜその政策を取る選択をしたか分析をしました。また、国際政治と同時に国際法の視点も深く研究したいと思い、国際法の西村ゼミにもオブザーバーとして参加させて頂きました。西村ゼミでは国際司法裁判所(ICJ)の模擬裁判を行い、国際的な問題について原告・被告の立場で主張したり、裁判官として判決文を書いたりしました。1週間に分析の報告と判決文の作成を両方しなければならない時期もあり、物凄く忙しい日々でしたが、最も充実した時間でした。
3回生の春から公務員試験の予備校に通い始めました。1日に2~3つの講義を受け、過去問演習を重点的に行いました。一日の受講数を目標にするのではなく、演習を通じて知識の定着や目標点数を意識しながら取り組みました。公務員試験は科目数も多く、膨大な範囲があるためモチベーションの維持が不可欠です。そのために「ゼミの飲み会は一次会で帰る」というマイルールを決め、時折友人と過ごす時間を作りながらも、翌日に持ち越さないように楽しんでいました。
官庁訪問の直前期には、関西で官僚を目指す「京僚会」や東大で外務省を目指している方の勉強会に参加させていただき、面接対策等を行っていました。自分よりも優秀な方が凄く沢山いることに焦りや不安を覚えましたが、お互いにアドバイスを言い合ったり、不安な気持ちを共有したりする仲間がいてくれたことが心強かったです。
これまでの学生生活で印象に残っているものを教えてください。
田中印象に残っているのは、立命館大学オナーズ・プログラムと薮中グローバル寺子屋での活動です。
オナーズ・プログラムは各国の首相や外務大臣になりきり、国益をかなえるための模擬外交交渉を行います。その中で2022年のアメリカの国務省(アメリカの外務省)役を担い、ウクライナに侵攻したロシアに対してどのような制裁を課すべきか国際会議を開いたことが印象に残っています。ロシアと親しい国やロシア経済に依存している国との足並みが揃わず、成果文書を出すことができませんでしたが、様々な国をまとめるというマルチ外交の難しさと同時に面白さを実感することができました。
薮中グローバル寺子屋は、元外務事務次官で立命館大学の元客員教授でもある薮中三十二先生が塾長の勉強会です。勉強会では、日本がこれから向き合っていかなければならない課題について自分の考えを持ち、ロジックを用いて相手に主張することが求められます。塾生は議論好きな方が多く、白熱した議論をする中で自分の意見を発信する力や相手の立場になってロジックを理解する姿勢が身に付きました。
外務省で実現したいこと、挑戦したいことはありますか?
田中私は外務省で「当たり前の日常」を、外交を通じて守りたいと考えています。カンボジアで子供たちに英語を教えるボランティアを行い、教育を受ける場所や環境があることは当たり前ではないということを実感しました。学校に行き、友達に会い、美味しいご飯を食べている、この「当たり前の生活」を子供や孫、その先の世代まで続けていきたいです。そのために今後の日本の安全保障政策を考え、国際秩序の安定を求めながら、日本と他国の良好な関係を築く架け橋のような存在になりたいと思っています。
また核兵器に対する問題意識を抱いているため、核兵器の脅威が高まっている今だからこそ、核兵器が二度と使われることがないように国際的な枠組みや法的措置を設け、外交交渉の現場で歯止めが欠けられるような外交官になりたいと思っています。
国際関係学部の良さはどのようなところだと思いますか?
田中1つ目は、自分のやりたい事に挑戦する学生が非常に多い所です。留学やワーキングホリデーに行く人、海外でインターンやヒッチハイクをする人、戦地でボランティアをする人など多岐に渡ります。そうした学部に身を置くことによって、私は周りからたくさんの刺激を得ました。
2つ目は、努力する人を応援したり、一緒に頑張ってくれたりする環境があることです。私の友人は公務員試験の勉強の際に平日休日問わず、図書館の開館から閉館時間まで一緒に勉強してくれたり、不安な気持ちを励ましてくれたりしました。また教授に公務員試験の論文の添削をして頂き、大学の職員の方にもOBOGの方を紹介して頂きました。このような様々な人の支えがあったからこそ、内定を頂く事が出来たと思っており、本当にありがたく思っています。
外務省を目指す学部の後輩、国際関係学部を目指す高校生へのメッセージをお願いします。
田中まず、外務省を目指す後輩に伝えたいことは「やり続ければ、叶う」ということです。対策をしていく中で不安な気持ちになり、諦めてしまいそうになる事があるかもしれません。私自身もそのような気持ちになりましたが、諦めたら一生後悔すると思い、がむしゃらにやり続けました。やり続けなければ、今の結果はなかったと思うので、自分を信じて頑張ってください!
そのために有効な手段として、自分の周りの人に外務省を目指すことを宣言することをお勧めします。周りに宣言することが自分を戒め、奮い立たせる言葉になると同時に、人脈を広げられるからです。私はこれをやることで同じ外務省を目指す友人や先輩、OBOGの方に話を聞く機会を頂くことができました。
そして国際関係学部を目指す学生に伝えたいことは、国関の学生は、向上心があり、目標に向かって努力する人が多いので、自分が選んだ選択を良いものにするための環境が整っていると思います。私はこの学部だったからこそ学べたことや出会えた人が沢山あると思っており、国関を選んで良かったなと思っています。
2024年10月更新
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