国際関係学部の魅力は学ぶことや挑戦することに対して一生懸命な人を、決して嘲笑しないこと。学生同士の興味や進路の方向性が異なっていたとしても、互いに尊重できる環境でした。

岡田 二朗 さん
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)ヨルダン事務所
プロジェクト開発・報告担当官(2012年度卒業)

2013年3月に国際関係学部を卒業後、アメリカン大学で国際平和紛争解決学の修士を取得。国際NGOで南スーダン共和国に駐在し平和構築分野の事業に従事。その後、東西アフリカ(ベナン、ウガンダ)で国際協力・人道支援の現場へ。またアフガニスタンとガザの緊急人道支援の遠隔業務を経験し、2022年11月からは国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)ヨルダン事務所で、プロジェクト開発・報告担当官として勤務。(2024年11月時点)

UNRWAではどのようなお仕事をされていますか。

岡田紛争により故郷を追われたパレスチナ難民に支援を届ける国連機関、UNRWAで働いています。UNRWAは中東の5地域(ヨルダン、シリア、レバノン、ガザ地区、ヨルダン川西岸地区)を中心に支援を展開しています。私は主にヨルダンでの新規プロジェクト立案・形成、各国政府を含むドナーとの調整・交渉や、実施するプロジェクトの進捗・成果報告など、難民支援を目的とした各種事業の立ち上げから完了までのサイクルに関わるお仕事をしています。

ヨルダンでは約240万人のパレスチナ難民が登録されており、国内10ヶ所のパレスチナ難民キャンプの内外に生活の場はあります。避難先であるヨルダンでの生活を続けるパレスチナ難民のため、私たちは教育、医療、福祉、社会サービス、保護、緊急支援、難民キャンプのインフラ整備・環境改善など多岐にわたる支援を提供しています。ヨルダン国内だけでも約7,000人の職員が、UNRWAの運営する161校の学校や、25ヶ所ある保健センターを含む各方面で難民を支援しています。

私が業務で関わる分野も1つだけではなく、学校のインフラ改修、若者の職業訓練、子どもの心理支援、シリアからヨルダンに避難してきた難民世帯の緊急支援や法律面での支援など、多岐にわたるうえ、ひとつひとつが専門性の高い事業です。1つの新規事業を形成していくうえで、自分だけで完結できることはほぼなく、様々な人たちと方向性を定め、一緒に進んでいく必要があります。保健や教育の専門性を持つ同僚や、難民キャンプやコミュニティでの業務を取りまとめる同僚、財務や人事などオペレーションの心臓となる同僚、またドナー側とも指針や優先事項を確認しながら、決まった予算と時間内できちんと成果を出していける事業となるよう、その道筋をつくるための共通理解や合意を形成していくことが私の役割です。このため常に全体に広く目配せしながら、確実なコミュニケーションを重ねていくことが求められます。

また、2023年の10月からは緊急要員として、ヨルダン事務所の業務と並行で、UNRWA本部でガザ地区の人道危機対応を行うチームにも参加しています。

立命館大学の4年間で力を入れたことや、思い出に残っていることを教えてください

岡田2回生後期から1年間、交換留学生としてアイルランドのダブリンシティ大学で学びました。私には初めての国外に住む経験で、アイルランドやEU諸国からの学生に混ざって授業で(必死で)手を上げ議論に入っていくのはとっても大変でしたが、刺激的で多くを学びました。北アイルランドに何度も足を運び行ったフィールドリサーチは、1990年代まで続いた武力紛争によって深く分断された社会とそこに生きる人々の、和解や共生について学ぶ大切な契機になりました。

また、学内プログラムではありませんが、4回生時に南スーダンで国際NGOの現場視察に行けたこと、同じ組織のブリュッセル本部でその後3ヶ月のインターンシップができたことは、自分のキャリアを大きく方向づけたと思います。南スーダンではある地域のコミュニティ間紛争に対応する現場部隊に同行させてもらい、一見すると穏やかな村にも見えるその地域の日常の部分と、時として非常に暴力的な形で表出する紛争の複雑さを、現地で人道支援を行うプロ集団のなかで、またそこに暮らす南スーダンの人々から直接教わる機会となりました。また、この経験は後に南スーダンに駐在入りするきっかけともなりました。これらの機会に繋いでくださった国際関係学部の君島東彦先生には、大変感謝しています。

大学での学びが仕事で役に立っていると感じられる場面はありますか。

岡田上記の留学や現場視察などの経験はもちろんなのですが、そこで経験したことや気になったことを授業やゼミに持って帰ってきて、そのことについて報告・ディスカッションやレポート課題などを通じて、先生や仲間の助けも借りつつ探究できたのは大切な学びでした。現場と教室を行ったり来たりできるような学びが立命館の4年間にはあったと思います。

そんな自分の見つけてくる「研究課題」も、自分自身がいまいち理解や整理ができていない状態だと、先生やクラスメイトに発表として伝えることもできません。第三者に伝わる形で噛み砕き、適切な文脈に沿って整理していくには、専門書をしっかり読んでみたり、オフィスアワーに先生に相談したりすることが大切で、そうすることで初めて見えてくることも多くありました。

これは今の仕事にも活きていることのひとつで、人道支援の現場にあるニーズも、データや枠組みに沿って整理しなければ、ドナーや国際社会には伝わりません。これらを整理したうえで組み立てた各プロジェクトが、ニーズにどのように対応し展開していくのか、ここまでをきちんとドナーや国際社会に伝わる形にしていき、共通理解のうえで支援を届けていくのが今の自分の仕事だと思います。

卒業されて感じる国際関係学部の魅力は何だと思われますか。

岡田学ぶことや挑戦することに対して一生懸命な人を、決して嘲笑しないところでしょうか。先生方はもちろん自分の周りにいてくれた同級生や先輩方もみな、興味や進路の方向性が異なっていたとしても、互いに尊重できる環境でした。当時の自分は南スーダンの紛争と平和といった、京都の日常からは一見遠く離れたことに一生懸命なことが多かったのですが、「そんな遠いところのことより…」なんて言わずに真剣に一緒に考えてくれたり、進路についてもとても自然に後押ししてもらえる環境で学べて本当によかったです。

国際関係学部の後輩へメッセージをお願いします。

岡田知りたいこと、できるようになりたいこと、そうやって心が動くことを大切にしてあげてください。あなたはなぜそれがやりたいのか、と少々ドラマチックなきっかけや理由を期待して聞いてくる人もいますが、そこでうまく答えられなかったからといってやめてしまわないで大丈夫だと思います。自分なりの大切なきっかけや理由で、まずは飛び込んで、そこで目の前のことを真摯に一生懸命頑張る。これを積み重ねていくのもいいのではと思います。そのためにもまずは自分の関心や何かを好きな気持ちを大切にしてあげてください。

2025年1月更新

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