この問題、あなたならどうする?

大型小売店さえあれば、地元の商店街はなくなってもいいのだろうか。

かつては全国に沢山あった商店街が衰退しています。商店街を生活品の購入場所と考えれば、大型小売店があれば問題なさそうです。その一方では、商店街が寂れてしまうことで地元に元気がなくなるのも事実です。この問題は、どうすれば解決できるでしょう。

問題背景
かつては全国のどこにでも商店街がありました。小さなお店が狭い通りや路地をはさむように集まり、そこで地域の人々が日々の買い物や交流をしていました。1990年代になってから郊外に大型店が建ち並ぶようになり、人々は地元の商店の代わりにそちらの方で買い物をするようになります。その結果、商店街のお店は次々と閉まっていき、いわゆるシャッター街が広がってしまったのです。これは私たちが消費者として買いたいものを購入した結果であって、何も問題がないように思えます。

他方では、衰退した商店街を活性化する取組も全国で広がっています。そこでは商店街の空き店舗を活用して若者の起業を支援したり、時代に合った飲食店を誘致したり、定期的なイベントを実施したりしています。そのような商店街では地元内外から多様な人たちが集まり、まちとしての賑わいを取り戻し、地域のコミュニティの空間となっています。

買い物の場所としてみた場合、郊外の大型店地元の商店街は対立する関係にあります。この傾向は人口が激減している中でますます大きくなっていきます。私たちは政策としてこの問題にどう対応していくべきなのでしょうか?

[この問題]④商店街写真01
思考のヒント
地域で暮らす私たちには、「市民」と「消費者」という二つの側面があります。市民とは地域で他者と共に社会を営み発展させていく公共的存在です。これに対して消費者は、日々の暮らしのために必要な商品やサービスを購入する経済的存在です。これを今回の問題に当てはめてみれば、郊外の大型店に重きをおくのは消費者、地元の商店街を重視するのは市民としての感覚が強い人だといえます。

人間は誰もが矛盾を抱える存在であり、たとえ地元の商店街を大事にしたいと思っていても、日々の買い物は大型店ですませているという人は多いです。消費者の立場としては、品揃えが豊富で多様なお店が集まっている大型店の方に魅力があるからです。そのマイナス面がコミュニティの空間であった商店街の衰退です。

かつては地元の商店街と大型店が共存できるように、国は大型店の立地に際しては商店街と地元消費が競合しないかをチェックした上で承認していました。それが1990年代から郊外への大型店立地が容易に認められるようになり、地元の商店街の衰退が一気に進んでしまいました。ここからわかるのは、商店街を素朴に盛り上げたいというだけでなく、きちんとした政策課題として考えることが大切だという点です。

現在では、買い物をする大型店も地元のコミュニティの場である商店街も、それぞれの役割が大切な時代になっています。商店街の活性化のためには、実践的な取組と同時に、それを支える政策体系を考える必要があります。

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政策科学部での学び
政策科学部では、地域経済、コミュニティ、行財政などについて学ぶ各科目が提供されています。それらの科目において、「地域経済の歴史と現在」「コミュニティの役割」「公的規制の仕組み」などの大切な知識を学ぶことができます。また地域経済の理論としては、ミクロ経済学の知識が有用です。それらの知識を総合して、私たちがこの問題を総合的に考えることが求められます。

科目名:地域経済学、経済政策、都市計画、コミュニティ政策論、行政学

執筆者紹介

森 裕之 教授
MORI Hiroyuki

専⾨分野:財政学、都市経済学
学系:社会マネジメント系

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