コラム

戦争と心の対話

 ここ1か月、ウクライナの戦争に心を痛めている方も多いかもしれません。毎日のニュースでは、目を覆いたくなる悲惨な現状が流れてきます。長引くコロナ禍に加えて、このようなニュースを目の当たりにするというのは、何か漠然とした無力さに打ちのめされるような、気持ちがしんどくなるようなこともあるかもしれませんね。

 この無力さから抜け出すには、募金などの具体的な支援で何かできることを実行に移してみるというのも手かもしれませんし、今の自分に何ができるのかについてちょっと考えてみるということも一つの手かもしれません。

 なぜ戦争が起こるのだろう、なぜ対話することが難しいのだろう、これは人類の大きな課題だと改めて感じさせられました。でも対話をすることの難しさということで言えば、国家間に限らず、身近な人間関係などにおいてもそうかもしれませんし、そして、私はカウンセラーをしているせいもあってか、私たちの自身の心の中においても、ときに本当に難しいことだと感じます。
 そして、何を言いたいのかというと・・・心理学的には、私たちの内側の世界が外側の世界に反映されると考えますが、私たち一人一人が、心の中のいろんな自分と語り合って、繋がりあっていけるようになれば、外の世界でも戦争なんて起こらないんじゃないかと。こう書いてみると、ごく当たり前のことのようでもあるのですが。

 例えば、私たちはみんな、心の中にある種の攻撃的な部分を持っているところがあるかもしれません。人に向けられれば、「あの人が嫌い」「あいつを許さない」「仕返ししてやる」といったものになるかもしれませんし、自分に向けられれば、「こんな自分なんて受け入れられない」「自分なんてダメだ」「いないほうがいい」というものになるかもしれません。そしてたいてい、このような部分は、自分の身を周囲から守るためにあって、傷つきやすい自分を守るために存在しています。
 このような自分は、できれば目を背けたいものかもしれませんが、そうすると、暴走したり爆発したりしてしまって、心の中が分断されてしまうかもしれません。そしてそれは、周りの世界や人との関係との分断につながることかもしれません。

 そこで、こんな風に自分の心の部分と対話をしてみるとするとどうなるでしょう。まず、そう思っている自分の部分に目を向けてみます。それをまるで一人の人のように思って、「なぜそう思うのかな?」「ほんとうは何を望んでいるのかな?」「どうしてそう思う必要があるのかな?」「どうしたらもう少し穏やかにいられそうかな?」などと、怒ったりしている自分の部分に声をかけてみる、対話をしてみます。

 そうすると、「ほんとうは~を望んでいるのにな」「こう思わないと、そこにいるのがつらいんだよな」とか、また別の気持ちがでてくるかもしれません。本当は守ってほしかった傷つきやすい自分のスペースが、心の中に少しできるかもしれません。すると、心の中のバランスが変化していきます。そして、それが目の前にいる人との関係や周りの世界の変化につながっていくかもしれません。

 ぜひ、みなさんも、いろんな自分の心の部分とつながって、語りかけてみてください。それが、身近な家族や友人たちと理解しあうこと、社会と折り合いをつけながらいろんな人とうまく共存していくことにつながっていくかもしれません。そしてそのようなことが、ひいては、世界で戦争をなくすことや平和を実現するということにもつながっていくかもしれないと、夢想したりしています。

 例に挙げたような攻撃的な自分とまではいかなかったとしても、なんか思うように動いてくれない自分や、進んでくれない自分がいる、やり場のない気持ちや、扱いに困った自分がいる、そんな自分一人では付き合うことの難しい心の部分を感じている方、きっとおられると思います。

 サポートルームでは、そんな自分を嫌ったり喧嘩したりせずに、ちょっとその自分が何を思っているか一回話し合ってみようよ、そんなことの手助けをしています。どうぞ訪ねてみてください。
学生サポートルーム カウンセラー