コラム

遊園地に行った話

 今年のゴールデンウィークに、身内の小学生と大人と私とで遊園地に行きました。ゴンドラに乗って山を登った先にある、古くて小さな遊園地です。

 園内には、大小さまざまな子どもたちがひしめきあっていました。もちろん大人もいたのですが、乗り物の前に長い列を作っているのは、ほとんどが小さい人たちでした。私は小学生の付き添いだったので、その中に混ざって堂々と並びました。

 船が振り子のように揺れるバイキングという名の遊具に乗った際には、背後の少女が3秒に1回ぐらいの割合で「しんぞうがとまる」と叫び、その声は永久に続くかと思われました。そのうち、前の少年が激しく身悶えを始めました。そして、ついに少年は「ちんちんがばくはつする」という呻き声を上げました。堰を切ったように繰り返される苦しげな声と、背後の絶叫とで、船上は、まるで子ども地獄のようでした。私は地上に降り立つまで、たいへんな努力で笑いをこらえました。

 その後、人込みの中で、気付くと私はひとりになっていました。身内ふたりの姿がどこにも見えません。電話するか……と思った瞬間、思い出しました。バイキングに乗ったとき、自分のリュックサックを身内の大人に預けっぱなしにしていたのです。ポケットには小銭すらありません。私の周りでは、子どもたちが水の流れのように動き続けていました。空は青く、小さい人々の笑い声は絶えることがありませんでした。視界の全てに人がいて、空中でぐるぐる回ったり、高速で移動したりしていました。どれぐらい突っ立っていたのかは分かりません。その後、笑いながら走ってきた身内の小学生によって私は発見されました。

 それから私たちは、巨大な駒の形をした、回転する遊具に乗りました。小学生が「外側がいい」と言うので私は内側に座ったのですが、その結果、とてつもない遠心力によって、あやうく小学生を押し潰すところでした。手すりを握りしめる私の掌は燃えるようでした。自分の体重との戦いの末、やっとスピードが落ち始め、機械は止まり、やれやれと息をつきました。そのため、機械がゆっくりと逆回転を始めた瞬間、私たちは真剣な目で見つめ合いました。
 全体的に夢のように楽しい一日でした。

 前回、山の上の遊園地に行ったのは、ずっと昔、20年ぐらい前だったと思います。身内の小学生は、そのときまだ存在していません。そして、当時一緒に行った大人は、今この世にいません。そのときのことは、今もはっきりと覚えています。冬の平日、静かな遊園地で、私が行くまで止まっていた機械が、私ひとりのために動かされました。空中を一周するたび、大人の顔が見えました。いつ見ても、ものすごく笑っていました。どうしてそんなに笑っているのだろう。私は不思議に思っていましたが、その答えは、じきに分かりました。乗り物に乗ってぐるぐる回っている間じゅう、私はずっと笑いっぱなしだったみたいです。

 次に山の遊園地に行くのは、何年後になるのでしょう。身内の小学生はもう大人になっているでしょうか。今度は私がこの世にいなくなっているのでしょうか。もしそうなら、遊園地に来て、小学生が私のことを思い出したら面白いなと思います。
 山の上の遊園地は、私にとってそういう場所なのかもしれません。20年後も30年後も、その先もずっと、存在していてほしいです。
 皆さんにも、そんな場所はありますか? 

学生サポートルームカウンセラー