コラム

はじめて出会う冬の世界・・・

 年が明け、新たな年になりました。みなさんはこの冬をいかがお過ごしでしょうか。私は幼少期、毎年冬の寒い時期のことを思い出します。それは朝目が覚めて、窓の外をみると真っ白な雪景色だった時のことです。絵本などで見ていたふわふわの雪を想像し、今すぐにでも外に出て雪を確かめたいというわくわくする気持ちになっていた自分を思い出します。でも、早起きをして家族が誰もまだ目覚めていない中、家の前が一面雪で覆われていた世界に、小さい頃の私は、ちょっぴり恐くもあったなぁと思い出したりします。
 “はじめて出会う冬の世界”ということを考えた時に、真っ先に『ムーミン谷の冬』という本を思い出したので、今日はこの本を紹介したいと思います。この本は、ある年ムーミンひとりだけが冬眠から目覚めてしまう・・・というところから物語りが始まります。起きているものは誰もいない、ムーミンパパやママを起こしてもだれも起きないのです。“世界じゅうが、どこかへ行っちゃった”とムーミンは急に怖くなってとても寂しくなってしまいます。ムーミンたちは毎年11月から4月頃まで冬眠をします。そう、ムーミンたちは未だ冬というものがどんなものかを知らないのです。幼少期、家族が誰も起きない家の中で、雪景色を前にしたときに不安になった気持ちと、ムーミンが急に恐くなって寂しくなった気持ちは、重なりあう部分がありました。冬の寒さと、雪という全てを覆いつくしてしまう感じになんだか圧倒されてしまう、そんなイメージがあります。
 再び眠りにつけなくなったムーミンは、勇気を振り絞って外に出るのですが、冬というものが大嫌いになって、出会う生きものたちのことも“僕の気持ちはちっとも通じない“と拒絶してしまいます。ですが、水あび古屋で出会ったおしゃまさんに「雪ってつめたいと思うでしょ。だけど、雪小屋をこしらえてすむと、ずいぶんあったかいのよ。雪って白いと思うでしょ。ところが、ときにはピンク色に見えるし、また青い色になるときもあるわ。どんなものよりやわらかいかと思うと、石よりもかたくなるしさ、なにもかもたしかじゃないのね。」と、少し見方を変えるだけで世界が違って見えてくるんだよということを教えてもらいます。そこからムーミンは冬の生きものたちと出会い、助けたり助けられたりしながら、いつもとは違う冬の世界を体験していくのです。
 ムーミンは知らなかった世界や試練を経験し、ついに”一年中を知っている最初のムーミントロールだぞ、ぼくは。”とまで言えるような自信をつけていき、強くなっていきます。ですが、それまでにムーミンも気持ちがしょげてしまって、たまに愚痴などもいってしまうのです。そんな時、またおしゃまさんから、「どんなことでも、自分で見つけださなきゃいけないものよ。そうして、自分ひとりで、それをのりこえるんだわ。」という言葉をかけてもらい、ムーミンはムーミン谷の冬について学んでいくのです。おしゃまさんの言葉は時に痛烈に心に響きます。時に厳しいことも言いますが、ムーミンが風邪をひきそうになったときには「あたたかいジュースよ。あたたかいものをのむのを、忘れないでね。」と労ってくれる優しい女の子なのです。
 ムーミンの周りにいる生きものたちは皆、寒さを生き抜くための知恵と温かさを持っています。ムーミンがこれまで知らなかった冬の存在を、おしゃまさんをはじめとする生きものたちが教えてくれました。私はこの物語を読むと最初のちょっぴり恐かった、“はじめての冬の世界”がじわじわと温かく、そして冬の寒さを和らげてくれる感じがします。あたたかいジュースの存在も気になりいつか飲んでみたいなぁなんて思ってしまいます。どなたか飲んだことがあるという方は、こっそり感想を教えてほしいなぁ・・・。そんなことを考えながらこの本を紹介させて頂きました。
 じきに春がきます。ムーミンたちも待ち望んでいた春です。みなさまもそれまで温かな飲み物を飲みながら、ゆっくりお過ごしくださいね。

学生サポートルーム カウンセラー