コラム

苦手

   2018年度の秋期試験期間も終わり、いかがお過ごしですか?
今回は「苦手なもの」について自分の経験を交えながら書いていこうと思います。
 「苦手なもの」と聞いて、何を思い浮かべますか?私は真っ先に「椎茸」が浮かびます。何が苦手かというと、とにかくあの匂いと食感、そして味です。椎茸が好きな人からすると、「出汁にしみ込んだあの匂いと味がおいしいのに」とよく言われますが、「ちょっと何言ってるかよく分かんない」と常々思っています。家や給食、店で椎茸の入った料理が出たときは、「椎茸の匂いや味で終わりたくない」と真っ先に椎茸を口に詰め込んで、ほぼ噛まずに飲み込むことで対処(?)してきました。それまで食す機会もそこそこあった椎茸ですが、大学進学を機に一人暮らしをするようになるとほぼ口にすることがなくなりました。こうして椎茸は私の中で苦手なもののトップに君臨し続けていますが、これは椎茸にまつわる私自身が作り出したネガティヴなイメージや感情によって、苦手意識がますます大きくなった結果だということも分かっています。
 ちなみに、小学4年生の姪も小さい頃から椎茸が苦手でした。どんな料理にしても、小さく切って混ぜ込んでも姪の椎茸センサーは抜群で、私の姉を困らせていました。そんな姪と去年の夏、実家に帰省した時期が重なり1年ぶりに会いました。夏に実家に帰省した際は、姉夫婦と一緒にBBQをすることが多いのですが、その時にも椎茸は私の気持ちも知らず、網の上で踊るように焼かれていました。なぜ椎茸を用意したのかと恨めしそうに思っていましたが、私と姪以外の家族や親戚は椎茸を割と好むので致し方ないと割り切り、椎茸の存在を見て見ぬフリしようと思っていました。と、その瞬間、かさが大きく開いた椎茸に姪が箸を伸ばし、私の知っている姪とはまるで別人かのようにおいしそうに食べているのです。勝手に椎茸苦手同盟を結んでいたつもりだった私は、「え?何で?」と思わず口にしていました。姪いわく、一昨年の秋に当時3歳になる別の姉の姪がさも当然のように椎茸を食べているのを見て、「年下なのに食べてる」「私の方がお姉ちゃんだもん」と思って食べてみたら、それまでの味も匂いも食感も違い、かつ姉をはじめ周りの人に大いに評価されたことを機に、食べられるようになったというのです。
 姪の体験には、負けたくない、悔しい、恥ずかしいといった気持ちの他に、「自分も食べられるはず」という姪自身の有能感という肯定的な感情も含まれていたのでしょう。また、その肯定的な感情を受け止め、評価してくれる周りの人の存在も大きかったのでしょう。
 アレルギーや病気でなければ、「苦手なもの」はあくまで自分が作り出し、半ば無駄に苦手だと思い続けることで本来自分が持っている肯定的な力をも抑えこんでしまっているということを、30歳近く年の離れた姪から教わった昨夏の出来事でした。
                 学生サポートルームカウンセラー