コラム

元号の変わり目~新しい時代の始まりにもの思う~

「令和」の時代が始まりました。

時代をまたいだだけでなく、その長さにおいても歴史的となった今年のゴールデンウィーク10連休。学生の皆さんは10連休とはいかなかったとは思いますが、どのような体験でしたでしょうか。TVをつければ、年末年始のカウントダウンに似た光景が映し出され、どこからともなく鐘の音が聞こえてきそうな深夜。しかしどこか新年を迎える雰囲気とは違う、昭和から平成に移り変わった時代の香りとも違う、なんとも形容しがたい初めての感覚を味わいました。平成生まれの皆さんの目には、この時代の変わり目はどのように映ったでしょう。
私にとっては休み前に仲間と誓い合った平成最後の大掃除が主なタスクでした。また、気軽な気持ちで始めた睡眠アプリに思いのほかハマったGWでした。新しいアプリや、便利なアプリは学生の皆さんの方が詳しいですね。実際学生さんから教えてもらうことも多いですし、学生さんから教えてもらったという同僚から教えてもらったりもします。今回お話しする睡眠アプリを知ったのもそのパターンでした。「朝、比較的すっきり起床ができるよ」という同僚からの勧めにより、私も早速ダウンロードをしてみました。

ご存知の方も多いと思いますが、枕元にスマホを置いておくことで、寝返りや振動をもとに睡眠の変化、サイクルを計測するというもの。ノンレム睡眠(浅い眠り)のところで目覚ましが機能し、起きやすくなるらしいのです。「寝ている時に枕元にスマホを置いて、電磁波とか大丈夫なんですか?」とか、「本当にちゃんと測れているんですか?」とか、「入眠までの時間をどうやって測っているんですか?」とか、担当者を質問攻めにしたくなる気持ちを抑え、使いだしてみると、なんだかんだ結構面白い。連休に入ったので早起きする必要がないことから、当初の目的は吹き飛び、寝言録音機能なるものに興味津々となりました。誰もが過去に、家族や友人から「昨日寝言で○○って言ってた」と勝手に大爆笑されたことは一度や二度ではないはず。聞いている方は誰かに言いたくなるくらい面白いのですが、当の本人は何も覚えてないものです。なので、「こんな手軽に自分の寝言をこっそり自分で聞ける時代が来たなんて!」と、感慨深い思いに浸っていました。一人遊びが加速するといえるのかもしれないけれど…。
そんな私は、寝言と夢との関連に興味がひかれているのでした。というのも、私自身は夢を記録する習慣があるのですが、このところ、記録しようと思いつつ、起きた瞬間に忘れていることが続いているのです。この「覚えていたくない、覚えていられない」という行為の無意識的な背景はいろいろあるのですが、ここではそれはさておき。寝言が夢を思い出すことに一役買ってくれそうだという思いと、また更に言えば、寝言と夢の関連から何か新しい発見があるのではないかという淡い期待があったのです。
さて、寝言録音機能とはどのようなものかというと、1回につき、短いものは8秒程で、長いものは40秒程の音が録音されています。多い時で、一晩で18回もの寝言(らしき音)が記録されています。最近はもっぱらこれらの録音にじっと耳を澄ますことが、起床後の密かな楽しみとなっているのです。

しかし、蓋を開けてみると、この機能で録音されている音は「ザザザザ、ガタガタ、ジジジ、バサバサ」という物音ばかり。時折、いびきと寝息の見事なハーモニーが奏でられています。これらの物音に耳を澄ませて聞き入り、寝ている自分自身に何が起こっているのかと想像を膨らますのもまた面白いのです。寝ることが楽しみになってきたアプリ使用開始4日目、ついに見事な寝言が録音されていました。

「うっ、うっ。○○としました!むす、むすされる…。あれですか…」

なんとも興味をそそる言葉。最近のスマホは音を拾う性能がかなり良いようで、相方の寝言をしっかり録音してくれていたのでした。寝ていても仕事をしている様子の、さらにその仕事が無視されているらしい相方への同情心が芽生えつつ、ここでまた疑問が湧いてしまいます。「私の睡眠だけではなく、相方の睡眠も計測しているのではないですか?」と。結局のところ、この1週間でちゃんと録音されていた寝言はこれ1つだけでした。
睡眠サイクルとは、レム睡眠とノンレム睡眠がきれいな波型になっているものと思い込んでいたのですが、浅い睡眠しか持ててない日もあったり、90分サイクルといえる日はほとんどなかったりしていました。これはつまり計測がきちんとできていないだけのことなのか、はたまた私の睡眠はかなり乱れているということが科学の進歩により初めて明らかになったということなのか、新学期で心と身体がざわついているだけなのか…。新しい時代の幕開けは、睡眠記録の謎に思いを馳せるところから始まりました。久しぶりに未知なるものに目を向ける体験をした高揚感といい表すこともできるのかもしれません。こうして文字に書いてみて改めて思いますが、「自分の寝言を聞くことができるって、やっぱり凄いことではないですか?!」。ただ、その日はいつ来るのかわかりません。寝言によって夢への手がかりがつかめる日は、寝言と夢に関する論文が書ける日は、一体いつ来るのだろうかと遠くを見ながら考えていたら、あっという間に連休は終わってしまいました。探求の日々はしばらく続くと思われます。

結局のところ何が言いたいかというと、いろいろな方法で客観的に自分を知ることができるのだなという驚きと、今まで見えなかったものに目が開かれることの喜び。そして、「夢に関心がある方、ぜひカウンセリングルームでお話ししてみませんか?」というお誘いでした。

                 学生サポートルームカウンセラー