コラム

久しぶりの運動会でのこと

 私の住んでいる地域では、この季節になると毎年、町別対抗の運動会が催されます。その地域に住んでいる人全員が参加できるもので、あらゆる年代の人が楽しめるようなプログラムになっています。

 学校の運動会であれば、リレーで一番になるとか、赤組白組の勝敗をかけて戦うとか、本気モードの競争が想定されるわけですが、地域の運動会なんて楽しめればいいじゃないと考える人も多いと思います。ところが、意外に「本気」になる大人が続出するのです。本気で競っているのは、大人(と小さい子ども)だけと言ってもいいくらい、リレーはもちろんのこと、玉入れだって事前に戦略を打ち合わせたりして真剣そのものです。

 今年は私も久しぶりに参加したのですが、いつの間にかうちの町が三連覇をかけて戦っているということになっていました。連覇して特に何があるわけでもないのですが、優勝という名誉!?のためにわりと本気で競争せざるをえない状況でした。私もエントリーされた競技で、町内の皆さんの健闘ぶりに応えなくてはと、数年ぶりに全速力で(ほんの少し)走ってみました。「全力で走るって、いったい何をどのように・・?」と頭の中で??がたくさん飛び交うなか、とにかく一生懸命走ってみると、結果はどうあれ、なんだかとても清々しく、愉快ではないですか。久しぶりに味わった感覚でした。そして、これは大人にとっては本気の競争ごっこなのだろうと思い当たりました。

 ふり返ってみると、子どもの頃に学校の運動会をこれほど心置きなく楽しめていたかというと、私の場合そうでもありませんでした。一番でなくていいのは百も承知でも、全力を出して競走すること自体をどこか恐れていたし、そういう恐れに圧倒されていた気がします。大人にしてみれば「たかが」徒競走でも、子どもにとっては「たかが」と言い切れない、自分全部が賭かってしまう競争のように感じられていたのでしょう。

 これまで小学校の運動会で「世界に一つだけの花」が流れているのを聞くと、なぜ今ここで「ナンバーワンにならなくてもいい~♪」と唱えなくてはならないのか・・と不思議に思っていました。でも、これは「負けてもどうってことないよ、」「だから力いっぱい走ってごらん」という、競争に尻込みする子どもたちの背中を押してくれる応援歌なのかもしれませんね。

 ほんものの、ここ一番の勝負で、一流のアスリートのごとく「楽しみたい」「自分との闘いに勝つ」などと言うにはまだまだ修行が足りないとしたら、せめて遊びの競争で恐れずに全力を出す感覚を愉しむのも悪くないなあと感じた一日でした。

学生サポートルームカウンセラー