コラム

大学の授業の思い出

「大学の授業の思い出」

大学生の頃、一般教養の生物学の授業で聞いた話が今も記憶に残っています。それは、鳥の抱卵についての話でした。先生によると、産卵した鳥は胸の辺りが腫れて熱を持ち、羽毛が抜け落ちるそうです。鳥は腫れた胸を冷やそうとして、冷たい卵に熱心に押し当て、結果的に卵が温まるということでした。

それよりも前、高校生ぐらいのとき、一羽の鳥が空き缶を温めている写真を見たことがあります。いつか缶から雛が孵ると信じて、一生懸命温めているんだな……と、哀れを誘われたものでした。でも、先生の話から考えると、その鳥は缶を温めていたのではなくて、缶で自分を冷やしていたのかもしれません。

 先生の専門は、原始的な猿の研究でした。ジャングルに長期間寝泊りしながら、個体を識別し、行動観察をするそうです。そんな先生が、鳥の話の中で、「我が子への愛情とか、そういった人間の感情をそのまま投影して、動物の行動を分かったつもりになるのはよくない」と言ったのは印象に残りました。

同じようなことは身の回りでも、よくあるような気がします。
動物の話ばかりで恐縮ですが、小型犬に服を着せている飼い主を、ブログ等で時々見かけます。おしゃれということなのでしょうか、飼い主の楽しみのために、犬もたいへんだなあと思ったりしていました。でも、チワワなんかの小さい犬、特に短毛種は、気温が低い日に外出させる時には、服を着せる必要があるんだそうです。飼い犬に服を着せるという人間の行動には、犬の低体温を防ぐという動機があったのかもしれないというわけです。

他人が表に出している行動が、どんな動機によっているのか、微妙に勘違いしていたり、想像もつかない理由があったりして、日々驚かされます。
野生動物相手の場合、行動を繰り返し観察し、もしかしたらこうじゃないかという仮説を立てて、検証していくという接近法を人間は持っています。
相手も人間の場合、できることはもっとあります。なんといっても言葉を使えますから(使えない場合もありますが)。私たちはお互いに、質問をすることによって、相手のことを直接、本人から教えてもらえます。

もちろん、聞いたら答えてもらえるとは限りません。「あなたはなぜそんな服を着ているのですか? 自分ではかっこいいと思っているのですか?」と尋ねたら、たいてい怒られるでしょう。嘘をつかれることもあります。 答えようのない質問、本人にも分からない質問だってありますよね。サポートルームのカウンセリングでも、きっと、いろんな思い込みや謎が交錯しているのだと思います。ふとした会話から、目の前の学生さんが、それまでとは違った風に見えたりしつつ、カウンセリングは徐々に進んでいきます。「えっ、そうなの!」と驚くカウンセラーを、学生さんもまた観察しているかもしれませんね。

学生サポートルームカウンセラー