心をととのえる学び:IMコース1年生が三松禅寺で坐禅体験
― 卒業生の僧侶とともに、日本文化の本質に触れる ―
7月17日(木)、IM(Immersion course)コースの1年生が、留学準備プログラムの一環として奈良・三松禅寺を訪れ、坐禅体験を行いました。今回の学びを特別なものにしたのは、この禅寺の副住職が本校の卒業生であり、かつて同じIMコースで学んだ先輩、皆川隆真(みながわ りゅうしん)師であったことです。
禅の場から、五感をひらく
訪れた三松禅寺は、奈良市にある歴史ある曹洞宗の寺院で、大本山永平寺の直轄道場として、国内外に禅の教えを発信している場です。風格ある本堂に足を踏み入れた生徒たちは、皆川副住職の指導のもと、静かに坐禅の姿勢を整えました。
目を閉じると、雨音が静かに天井を叩く音、遠くから聞こえる町の生活音、僧侶の足音、軋む木の音……。普段は気にもしないこれらの音が、むしろ心を落ち着かせ、自分の内面に意識を向ける助けとなりました。何も「しない」ことによって、逆に五感がひらかれ、今この瞬間に意識が向かっていく——そんな不思議な感覚が、生徒たちの中に生まれていました。
“世界へ出る前に、自分の足元を知る”
住職・皆川師は、IMコースを2015年度に卒業後、海外留学を経て、禅の道へと進みました。グローバルな視点を持つと同時に、日本文化の本質を深く見つめ、伝える役割を担う現在、彼はまさに「世界と日本をつなぐ語り手」の一人です。
今回の体験では、そんな先輩が語る禅の精神に、生徒たちも耳を傾けました。「留学とは、他者と出会う旅であると同時に、自分自身と向き合う旅でもある」という言葉は、まさにこの坐禅体験の意義を象徴していました。
異文化の中で自分を語るためには、自国の文化を深く理解し、それを言葉にできる力が求められます。日本文化に息づく「間」や「静けさ」、「内省」といった価値観を体験的に学ぶことは、国際社会での自己表現の軸を育てることでもあるのです。
静けさの中に生まれた問いと気づき
今回の坐禅体験では、多くの生徒が「心がととのっていく感覚」を味わったようです。
「目を閉じると、雨音が静かに天井を叩く音、遠くから聞こえる町の生活音、住職の足音、軋む木の音……。普段は気にもしないこれらの音が、逆に心を落ち着かせてくれた」「呼吸を整え、今この瞬間に意識を向けていく中で、自分の内側が少しずつ整っていくのを感じた」といった感想が寄せられました。
情報が絶え間なく流れる現代社会において、「静けさ」の中に身を置き、自分自身の感覚と向き合う時間は、生徒たちにとって新鮮でかけがえのない体験だったようです。
“ただ座る”というシンプルな行為の中に、これほど深い学びがあることに、多くの生徒が驚きと気づきを得ていました。
心をととのえ、未来に向かう
三松禅寺での坐禅体験は、留学という外に開かれた学びを控えた生徒たちにとって、「内なる旅」の出発点とも言えるものになりました。そして、その学びを導いてくれたのが、かつて同じ制服を着ていた先輩だったことは、生徒一人ひとりの記憶に深く刻まれたはずです。
国境を越えるその日までに、まず自分の足元にある文化と静けさに気づくこと。それが、真の国際人としての第一歩なのだと、生徒たちは静かな本堂で実感したに違いありません。