ニュース

SGH 東京研修を実施しました

2014.07.20

Super Global High School (SGH)
SGH東京研修報告


2014年度 SGH東京研修を実施し、JICAやJANICでのワークショップなどを行いました


 2014/7/16(水)~2014/7/18(金)の3日間にわたり、高2と高1の希望者からの選抜者15人が東京を訪れ、JICA独立行政法人国際協力機構地球広場、NPO法人国際協力NGOセンター(JANIC)、朝日新聞東京本社などを訪問し、貧困問題の解決に関わる講義・ワークショップ、青年海外協力隊体験談、異文化理解ワークショップ、マスメディアの実際を知るフィールドワーク等の研修を行いました。これは、SGHの取り組みとして、本校SGH課題研究テーマのもと、国際情勢の中での日本の状況を知るとともに、日本にいる私たちの課題を考えることを目指して、行ったものです。


1日目

JANICにおいて、講師の先生による貧困問題の解決に関わる講義・ワークショップを実施。青年海外協力隊でフィリピンに派遣され、現地の方々に新体操を教えておられた体験談を話していただきました。その後、講義ではベトナムにフォーカスして、その文化的特徴を含めて理解をしたのち、ある少年の死をめぐる事例から、その貧困の原因が一つではなく、様々な要素が複雑に絡み合っていることを知り、その問題の解決策をグループごとに検討し、解決プロジェクトとして提言を作成し発表するというワークショップが行われました。  

生徒たちはこれらを通して、私たちにできることは何かと考えることや、そのためにまずは知ることそして想像してみること、さらには世界で起きていることに関心を持つこと、そのうえで自分が知ったことを誰かに伝えることなど、今後求められる力について考え、またそれらを意見交換し共有することができました。解決プロジェクトについても生徒たちは積極的な意見交換を行い、具体的な提言を作成することができました。支援の方法として、具体的な物質等の提供にとどまらず、諸問題を根本的に解決する方法とは何かということについて考えて提案することができ、また、細やかな目配りの利いた解決プログラムを提示することができ、充実した研修となりました。


 2日目

 JICAにおいて一日中充実した研修を実施しました。前日に引き続き、青年海外協力隊に参加した講師の先生の体験をお聴きしました。セネガル共和国に派遣され、現地のカウンセリングセンターでカウンセリングや感染症予防の解説、HIVの無料検査実施のサポート等の活動をされ、帰国後子供兵の社会復帰を支援したいと、さらにウガンダにも行かれた体験談をお話いただきました。体験を通して感じたことをお話いただきましたが、その中でも「現地の人に何かをしてあげるという感覚ではだめ。一緒にやるという感覚が大切」だということ、「学問は万人の幸せの為にある」ので様々なことを学んでほしいということを力説され、それらは生徒たちの心を打ったものとなりました。地球ひろばで、日本の世界への援助の形態や具体的な内容をさらに学習したのち、ランチとしてエスニック料理を食した後、新たな講師の先生によるワークショップを実施しました。セネガル関連の話題として「障害をもった現地の人からお金をほしいと求められたらあなたはどうする?」という実際に出会った事例をもとに、生徒たちが考え、グループで議論し、意見を発表しながらお互いの意識を共有しました。ワークショップを通して、私たちが当たり前だと考えていることがそうではないということ、つまり異文化理解の重要さを学び、また、貧困などの社会的弱者の立場にある人々は、社会から取り残されているという疎外感や社会からの偏見に苦しんでいることを認識することができました。イスラム文化圏では持てる者が持たざる者に分け与えるザカート(喜捨)の精神が浸透しており、日本社会と比較することで見えてくることも多くあったようでした。

 その後、予定にはなかった講師の先生による、青年海外協力隊員としてメキシコに行かれた体験談を聞かせていただきました。現地での仕事や協力者もいない、スペイン語も話せない、文化の違いに戸惑う等の壁にぶち当たったが、それらを一つずつ誠実に地道に解決していくことで現地の人たちのために役立っているという実感を得ることができたということでした。本日の2名の講師の方が奇しくも同じことを言われていたのが印象的でした。「国際貢献の仕事がしたいと思ったのは、高校時代に海外留学して現地を実際に体験した際の衝撃があったから」ということでした。高校生のうちに海外に触れることが、その後の人生を大きく変えるターニングポイントとなったという点について、生徒たちには実際に体験することの重要さを実感したようでした。幸福観についても、不便は不幸ではなく、また、他の人が何を持っているかは重要ではなく自分が持っている物の価値がどこにあるのか考えることが大切であるということも、今後の人生の貴重なアドバイスとなったに違いありません。

予定の時間を大幅にオーバーしたのにも関わらず、生徒たちは真剣に耳を傾け、国際貢献の意義についてさらに深く考えることができたようでした。2日間で3名の方から体験談を聴かせていただくという貴重な機会を得ることができ、JANICおよびJICAの方々には本当にお世話になりました。学校として、今後とも両団体との連携を深めていきたいと思います。

 研修中の夜には意見交流のミーティングを実施し、活動の振り返りと課題の共有の機会をもちました。今回の研修では1日目のJANIC研修が入門編で、JICA研修が応用・発展編という位置づけとなり、生徒の意識・行動もそれと同様に理解・認識が進んだようでした。進んだからこそ、貧困や平和問題に関して複雑な要素が絡み合って簡単に解決できるものではないという壁にぶち当たり苦悩する姿も見受けられました。また、異文化理解についても、机上の理論ではなく私たちの日常生活に照らし合わせて考えることを突き付けられていて、自分自身の考え・行動自体が問われていること、そのために自分の意見・立場を形成すること、公正公平とはなにかや善悪の価値判断の難しさ、を痛感したようでした。これらを理解できたからこそ尚更、グローバルリーダーとして国際的に活躍していこう、人の役にたてる人間となろうという決意と意欲がより強固なものとなったようでした。生徒たちの今後の活動が本当に楽しみとなる確信を得た今回の研修でした。

 

 3日目

帰京までの半日を使って、朝日新聞東京本社を訪問しました。世界中のニュースが集まる新聞社の心臓部、報道・編成局。超高速の輪転機がフル回転する印刷工場等、実際に新聞社に入って新聞づくりの現場を体験する機会を得ることができ、将来の進路選択も視野に入れながら生徒も真剣に見入っていました。

 

 3日間の研修を通して、生徒たちは国際情勢の中での日本の状況を知るとともに、日本にいる私たちが抱えている課題を考えることができました。様々なことを考えることは非常に大切で、しかしその先に何等かのアクションを起こすことの重要性、つまりどう変わるかはわからない時もあるが、現状を変えるために自分でまず一歩を踏み出すということの重要性を理解することができました。これらを踏まえ、生徒たちは今後のSGH諸企画はもちろんのこと、日々の授業への取り組みにおいてもより主体的に学んでいく姿勢と意欲を身につけることができたと思います。